タカモリ・トモコ全集



タカモリ われながら、力作なんです。
ほぼ日 お、おお‥‥。
タカモリ ウツボちゃーん。
ほぼ日 すごい‥‥。
タカモリ ウツボちゃん、ウツボちゃん(笑)。
ほぼ日 ウツボなのに‥‥かわいいです。
タカモリ ふふふ(笑)。
ほぼ日 しかもこの子、
抱っこされるのにぴったりのかたちじゃ
ないですか。
タカモリ そうなの!
この子のアゴを、肩に乗っけてもいいし。
ほぼ日 肩のりウツボ‥‥。
タカモリ ふふふふふ(笑)。
ほぼ日 あの水族館の仲間たちのなかから、
まさか
ウツボくんをセレクトするとは‥‥。
タカモリ もう、今年の夏は
ほとんど、この人と過ごしてました(笑)。
ほぼ日 え、そんなにタイヘンだったんですか?
タカモリ はい、いろいろ、すっごく。
ほぼ日 具体的にいうと‥‥?
タカモリ たとえば、おなかのまるいラインが
気に入ったかたちに、
ぜんぜんならなかったりとかして。
ほぼ日 はー‥‥。
タカモリ 編んではほどき、編んではほどき‥‥で、
2回泣きました。
ほぼ日 えっ! 
タカモリ 2回、泣きました。
ほぼ日 ‥‥わかりました。

それでは、そのあたりも含めまして
今回の10月会場について
全体的なお話を聞かせいただいてもいいですか?
タカモリ はい。
ほぼ日 前回のどうぶつえんに続いて、
今回は、水族館に行ったわけですけれども。
タカモリ はい、はじめは
「どうぶつえんの延長」みたいな気分で
「海の生きものをつくるんだ」って思って
ワクワクしていったんです。
ほぼ日 ええ。
タカモリ アザラシさんだとか、アシカさんだとか、
タコくん、イカくん‥‥巻貝さんとか。

そんな子たちを、つくるんだろうなって。
ほぼ日 つまり、行くまえは「どうぶつ寄り」で
考えていたんですね。
タカモリ でも、じっさいに水族館に行ったら、
アザラシさんやアシカさんは、見当たらなくて。
ほぼ日 タコくんやイカくんも、いませんでしたね。
タカモリ そのかわり、きれいな色のおさかなさんが
たくさん泳いでいたんです。
ほぼ日 いました、いました。

全体的に
「色がきれいだったな」という印象が
残っています。
タカモリ とくに、いそぎんちゃくさんなんか、
色とりどりで、とっても素敵で。
ほぼ日 宝石みたいな色をしてましたよねー!
タカモリ そこで、ちょっと方向性を変えて‥‥
「水族館で感じたことや
 印象に残った色彩なんかを
 あみぐるみに活かしたほうがいいな」って
思ったんです。
ほぼ日 なるほど、なるほど。
タカモリ たとえば、この子のワンピースとか。
ほぼ日 わっ! いそぎんちゃくさんたちが!
タカモリ ふふふふふ(笑)。
ほぼ日 きれいですね‥‥髪かざりはヒトデ風だし。
タカモリ はい、ヒトデです。
ほぼ日 へぇー‥‥こっちのカメさんの「こうら」も
すごく美しい、というか
微妙な色のグラデーションをしていますね。
タカモリ はい。
ほぼ日 海水に陽の光が溶けてる感じっぽくもあり、
熱帯魚の模様っぽくもあって。

なるほど、そのへんに
水族館で得たイメージを投影したんですね。
タカモリ そういえば、カメは、はじめてなんですよ。
ほぼ日 えっ!? それは、すごく意外です。

でも、このカメさん、
まるで、ピクサーの映画に出てくるような
何とも言えない存在感があります。

‥‥やっぱり「こうら」のせいかな?
タカモリ たぶん、水族館に行かないでカメを作ったら
こうはならなかったと思う。
ほぼ日 それは、どうしてですか?
タカモリ カメさんって、
いろんなキャラクターになってるし、
もっと、ディテールを簡単にしちゃっても
きっと、カメには見えると思うです。
ほぼ日 つまり、もっと擬人化しちゃっても。
タカモリ でも、水族館で、実際に泳いでるカメさんを
見ちゃったら
「こういう前脚」にしたくなっちゃうんです。
ほぼ日 「こういう」というのは、「本物に忠実」な。
タカモリ そうです。

カメって、前脚がかわいかったんです。
そして「こうら」が、しっかりしてる。
ほぼ日 そうでしたね。
タカモリ そんなカメじゃないと、だめだなって。
ほぼ日 へぇ‥‥。
タカモリ この前脚でも、1回泣いたんですけど。
ほぼ日 え、ここでもですか!
タカモリ はい、なかなか本物っぽく、ならなくて。
ほぼ日 ‥‥そんななか、ウツボが来るとは。
タカモリ はい、わたしも
ウツボをつくることになるだなんて、
ぜんぜん思ってませんでした(笑)。
ほぼ日 それは、いつまで思ってなかったんですか。
タカモリ もう、最終的に何をつくろうかって
決めなきゃならなかったとき、
何の気なしに
「どうしようかなぁ、
 ちょっとウツボとかつくっちゃったりして」
みたいに、冗談で言ったんです。
ほぼ日 ‥‥ええ。
タカモリ そうしたら、その場にいたお友だちが
すっごいウケたんです。
ほぼ日 ウケた?
タカモリ 「え、ウツボ!?
 いまウツボって言った?」みたいに言うから
「うん」って答えたら、
「いいじゃん、ウツボいいじゃない!」って。
ほぼ日 へぇー‥‥。
タカモリ それで「あ、ウツボってアリなんだ!」って。
ほぼ日 へぇー‥‥!
タカモリ で、いざ、つくりはじめるまえに
もう一回、
撮ってきた写真とか資料を見てみたら、
模様によっては
和服の柄みたいにきれいなウツボくんもいて。
ほぼ日 そこに、ためらいは‥‥なかったんですか。
タカモリ もう、はじめちゃったら、ありません。

それに、編んでいるうちに
どんどん、かわいくなってきたんです。

それで「あ、この子は、大丈夫だ」って。
ほぼ日 そうですね、すごく愛らしいです。
タカモリ そうそう、そうなんです。
愛らしい‥‥愛らしいんです、この子。
ほぼ日 ひょうきんっぽくもあったり。
タカモリ 後頭部が、かわいいんですよ。
ほぼ日 なるほど‥‥今回のヌーボーのラインナップは、
そのようにして。
タカモリ はい。
ほぼ日 ワンピースを着た女の子、
はじめてのカメ、まさかのウツボ‥‥。

つくり終えたいま、どうですか?
タカモリ まだまだ
知らない世界がたくさんあるんだなって。

泣いたりとかして試練も感じましたけど、
できあがってみたら、たのしかった。
ほぼ日 それは、よかったです(笑)。
タカモリ でも‥‥たぶん、もうつくらないと思う。
ウツボくん(笑)。
ほぼ日 じゃあ、タカモリさんの作品のなかでも
かなりの「レアもの」であると。
タカモリ はい。

でも、ほっといたら
ぜったいにつくらないものをつくったら、
こんなに好きになった。

そして、思い切ってチャレンジするのは
途中泣いても、たのしかった。
ほぼ日 ええ、ええ。
タカモリ それが今回、水族館で学んだことですね。
  テーマは「海の仲間たち」。
タカモリさんが
「つくっていて、本当にたのしかった!」という、
3体のヌーボー。
クラシックには
ペンギンの博士やアザラシの夫婦、
カエルさんなど7作品が、登場してきます。
詳細は、明日から発表していきますね。

お申し込みの開始は、10月21日(金)から。
どうぞ、おたのしみに。

取材協力:葛西臨海水族園


2011-10-18-TUE




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