タカモリ・トモコさんは、
「ほぼ日」での展示会の準備をするたびに、
毎回すこしずつ異なったきもちで
あみぐるみ制作に取り組むのだそうです。
その「きもち」の部分を、
きちんとうかがっておこうと思いました。

今回の展示会のテーマはなんなのか、
どんな思いを込めて数体の新作を編み進めたのか。
会場のオープンに先がけて、
作家のこころの様々な変化を
タカモリさんみずからの言葉でお伝えしてまいります。



── タカモリさん、こんにちは。
タカモリ こんにちは、武井さん。
── まず読者のみなさまには、
なぜ今回、ぼく(武井)がこうして
タカモリさんにお話をうかがっているのか、
その理由をご説明しないといけませんね。
ぼくは「ほぼ日」で
「フィンランドのおじさんになる方法。」という
コンテンツを担当していまして、
その取材で、ことしの3月に
フィンランドに行きました。
その取材に行くちょっと前に
タカモリさんとお話する機会があって。
タカモリ はい、そのとき、
フィンランドに行かれるなら、
フィンランド産の毛糸を
買ってきていただこうと
いうお話になりました。
── それで、取材のさいに、
ヘルシンキの毛糸店に寄って、
フィンランド産の毛糸を買ってきたわけです。
その毛糸で編まれたのが、
今回2009年5月会場の作品になりました。
タカモリ ヌーヴォーの4体を
フィンランドの毛糸で編みました。
── いまタカモリさんのそばにいる
そちらの作品がそうですね。
タカモリ はい。
── タカモリさんご自身は
フィンランドに行かれたことは──。
タカモリ まだ、ありません。
なので、この展示会のテーマを、
「まだ見ぬ国・フィンランド」
としました。
── フィンランドという国には、
どんなイメージがありますか?
タカモリ アキ・カウリスマキっていう、
フィンランドの映画監督が大好きなんです。
『コントラクト・キラー』っていう作品とか、
ほんとにおもしろくて。
なので、その監督の描く、
なんていうんでしょう、暗く沈んでいるんですけど、
でも人々はとぼけてて、ちょっとまぬけっていう(笑)、
そういうイメージがありました。
── たしかに「愛すべきまぬけな人々」が
多い国かもしれません(笑)。
タカモリ でも最近になって、
「フィンランドのおじさんになる方法。」
を読んだり、
映画の『かもめ食堂』を観たりして、
いろいろ知るようになって、
カウリスマキ監督の描く世界だけが
フィンランドじゃないんだなーって
思うようになったんです。
── 『かもめ食堂』、そうですね、
実際に行ってみて感じたんですが、
『かもめ食堂』で描かれているフィンランドは
とてもリアルに
あの国を描いていると思います。
なんだか生意気な言い方ですけれど。

それで、
そんなフィンランドでぼくが買ってきたのが、
こういう毛糸でした。
タカモリさんにお渡しする前に
撮影しておいたんです。
タカモリ 武井さんはこの毛糸を、
どんなお店でみつけたんですか?
── まず大きいデパートの毛糸売り場に行ってみたら
フィンランド産の毛糸は、なかったんですよ。
イギリス製の毛糸がほとんどでした。
デパートの人に尋ねたところ、
「大きな毛糸の専門店にありますよ」と。
それで、ヘルシンキの
デザイン地区というところにある
大きな毛糸屋さんにいってみたら、ありました。
壁面に様々な色のフィンランド産の毛糸が、
グラデーションで並んでいて。
そこから選んだのが、この6色です。
タカモリ ちょっと細めの方ですね。
── はい。
「pirkka-lanka(ピルッカ・ランカ)」
と書いてありますが、それは
「ピルカンマー地方でつくられた
 ウール100%のピルッカ糸」
といような意味だそうです。
タカモリ ピルッカ糸。
── それともう1種類。
「こういうのもあるわよ」と
お店の人が見せてくれたのがこちらでした。
まだ撚っていないような、
つむいだばかりのような毛糸です。
タカモリ こちらの毛糸はとてもやわらかくてふわふわで、
ひっぱると、スッと切れちゃうくらいなんです。
だから編むときに、
ちょっとだけたいへんでした。
── あ、そうでしたか。
タカモリ でも、すぐに慣れましたし、
編むとしっかり落ち着く糸なんですよ。
── 編みごこち、みたいなものは?
タカモリ すごくよかったです。
するすると、すごくスムーズに。
色がとてもよかったので、苦労なく編めました。
── そう、色!
どの色も、たくさん種類があるんですよ。
ブルーにもいろんなブルーがあるし、
グリーンにもいろんなグリーンがある。
そこから選ぶのが難しかったです。
こちらで選んだ色で‥‥大丈夫でしたか?
タカモリ よかったです、とっても。
── タカモリさんはいつも、
自分で歩いて毛糸を探して、
「この色!」という出会いがあって、
そこから創作意欲をわきたたせてますよね。
でも今回、
色に関しては限定されたことになるわけです。
それは、やりにくくなかったでしょうか?
タカモリ ‥‥ほんとのことを言うと、
そこでひと仕事あるだろうな、と思ってました。
自分じゃない人が選んだ色を
編むことになるので。
── ですよねえ。
タカモリ でも、いざ届いてみたら、
自分で選んだような毛糸だったんです。
だからスムーズに
たのしく編めたんだと思います。
どういうことを基準に、
色を選んでくださったんですか?
── ええと‥‥
あの国にいて、
いちばんすんなり溶け込む色を選びました。
タカモリ すんなり。
── はい。それで、悩んだときは
「フィンランドっぽいのはどっちでしょう?」
っていうふうに、
同行してもらった森下ヒルトゥネン圭子さんや
お店のかたに、
たずねてみたりもしました。
森下さんはフィンランドに在住のかたで、
「フィンランドのおじさんになる方法。」では、
いっしょにコンテンツを
お届けしているメンバーです。
タカモリ はい。
── そうやってアドバイスをもらいながら、
タカモリさんが好きそうで、
選ぶぼくも買いたくなったり
着たくなったりする色で、
しかもフィンランドらしいものを。
ええと、具体的にはまず、
国旗が青と白なのでそれは入れようと。
それも、青は海と空、
白は、雲と氷。
そして、もう1色、
森のイメージのあるグリーンを
選んでいきました。
タカモリ 私の知るかぎりでは、
日本にあんまりない色で。
しかも私が自分で選んでも
ぜんぜん不思議じゃないような色でした。
── よかったです、ホッとしました(笑)。
ええと、では、
作品のことをうかがいたいのですが。
タカモリ はい。
── 2009年5月会場は
何体の展示になるのでしょう?
タカモリ ヌーヴォー4体に、クラシックが9点、
ぜんぶで13作品の展示になります。
── フィンランドの毛糸でつくられたのは、
ヌーヴォーの4体ですね。
タカモリ ええ。
ヌーヴォーについては‥‥
旅のお土産話をうかがっていると、
マリメッコっていうことばが
いっぱい出てきましたよね。
── はい、マリメッコのすばらしさについては、
たしかにたくさん話しました(笑)。
ほんとうにすばらしいんです。
タカモリ それを聞いて、
やっぱりフィンランドと言えば
マリメッコなんだなって思ったので、
ヌーヴォーについてはぜんぶ
マリメッコの布を合わせることにしたんです。
── あ、ほんとですね、言われてみれば。
やっぱり合いますか、フィンランドの毛糸に。
タカモリ もう、どれも相性がぴったりで。
── そうですよねえ。
クラシックについてはいかがでしょう。
タカモリ 私の作品の中から、
フィンランドっぽいイメージのものを
選んでみました。
── TBシリーズ、テディベアは今回も?
タカモリ はい、1点。
── あ、ありますね、かわいいなあ(笑)。
はやくみなさんにお見せしたいですね。

ということで、
2009年5月会場は、
「まだ見ぬ国・フィンランド」
というテーマで開催いたします。
タカモリさん、ありがとうございました。
タカモリ ありがとうございました。
協力/森下ヒルトゥネン圭子さん


2009-05-26-TUE


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN