タカモリ・トモコさんは、
「ほぼ日」での展示会の準備をするたびに、
毎回すこしずつ異なったきもちで
あみぐるみ制作に取り組むのだそうです。
その「きもち」の部分を、
きちんとうかがっておこうと思いました。

今回の展示会のテーマはなんなのか、
どんな思いを込めて数体の新作を編み進めたのか。
会場のオープンに先がけて、
作家のこころの様々な変化を
タカモリさんみずからの言葉でお伝えしてまいります。



── 2月会場をはじめるにあたって、
最初、タカモリさんが
思い描いていたテーマは、たしか‥‥
タカモリ イヌかな、ネコかな? って、
自分ではそんなつもりでいました。
昨年の「クマ特集」や
「うさぎ特集」に続くものとして。
── それはもちろん
よろこばれるものになるでしょうし、
私たちも、ぜひ見てみたいという気持ちも
あったのですが、
「クラシック」の作品のなかに
「パンダの親子」を見つけて、
それでテーマをこちらから提案させていただくことに
なりました。
‥‥あれには、驚きました。
タカモリ そんなに驚かれるとは思いませんでした(笑)。
── いや、もう、ビックリしたんですよ。
親パンダの手が、子どもパンダのあたまを
さわっている‥‥つながっているあみぐるみなんですが、
そのつながりかたに、すごく驚いたんです。
「これは、おとうさんが子どもにゲンコツしているの?」
「ちがうよ、なでているんだよ!」
「こうしてだっこさせると、すごくかわいいですよー」
なんて、そのパンダの親子を中心に
とても話題が広がって。
その、「2体がひとつになっている」感じが
とてもすてきだと思い、
「次はぜひ、“なにかを持っている”とか
 “だれかといっしょにいる”
 というようなテーマはどうでしょうか」
と、提案させていただいたんです。
タカモリ はい。
── そして、できあがった作品を拝見して、
「これは『いっしょに』というキーワードが
 いちばんぴったりきますね」
ということに、なりました。
タカモリ 今回、最初のテーマで思ったのは、
「どんな動物をつくってもいいんだ」
ということでした。
ところが、そうやって自由に発想したら、
結局クマをつくっているんですよ(笑)。
自由につくったら、たまたまそうなったんですが。
── 最初につくったのは
ヌーヴォーの、クマの親子ですか?
タカモリ はい。最初につくったのは、
おとうさんのクマ「ミーシャパパ」です。
でも、まず、頭のなかにあったのは、
「力強いものをつくりたい」ということでした。
それで、3本の糸を1本として使って、
どっしりとした、黒いクマをつくりはじめました。
そうしたら、つくっているうちに、
なつかしい感じがしてきて。
なんだろう、と考えて、
これは子どものころ読んだ
ロシアの絵本に出てくるクマに
すごく近い! って気づいたんです。
── その本を読んだのはタカモリさんが
小学生くらいのときのことですか?
タカモリ もっと前、たぶん幼稚園に
置いてあった絵本だと思います。
親子のクマのお話で、
おとうさん、おかあさん、子どもの
3人の家族を描いた絵本でした。
そのことを思い出して、
「あ、いまつくっているこれを、
 おとうさんのクマにして、
 おかあさんと子どものクマもつくろう」
と、つくっていったんです。
── 3体が家族だというのは、
「いっしょに」というテーマにも
つながっていますね。
タカモリ そうですね。
そしてそれぞれのクマにも
なにかを持たせることにしました。
子どもに森のキノコ、
おかあさんは、カゴ、
おとうさんは、ステッキです。
── ちなみに、そのロシアの絵本は
どんなお話だったのでしょう?
タカモリ お話らしいお話ではなかったように思います。
子どもにことばを教えるための
絵本だったのかもしれませんね。
── ということは、その絵本の物語性が
今回の作品に影響を与えているわけではないのですね。
タカモリ そうですね、物語としての影響というより、
どちらかというとクマというイメージを
その絵本から受け取っているんだと思います。
あの、これも幼稚園のころなんですけど、
「ボリショイサーカス」を見にいったんですね。
── はい、ロシア国立のサーカス団ですね。
タカモリ そこで「バイクに乗るクマ」を見たんですよ。
わたしはまだ自転車にも乗れないのに(笑)、
クマがバイクに乗っている!
そのことに驚きながら、
どんどんイメージが広がって、
「もしかしたらわたしの知らないところで
 クマは人間のように生活しているのかも」
なんて考えるようになったんです。
で、それとちょうど同じころに、
森の中で人間のように生活している
クマの家族の絵本を読んだ。
そのふたつが結びついて
いまも、こうして
印象に残っているんだと思います。
── つまり今回のヌーヴォーは、
ちいさなころに抱いた「クマ」の
印象そのものなんですね。
ヌーヴォーの3体、
おっしゃるようにロシアな雰囲気でした。
タカモリ どしっとして、なつかしい感じで。
これまでのヌーヴォーとは
またちがうものになったと思います。
── クラシックの作品も、
「いっしょに」というテーマに合わせて選びました。
誰かと「いっしょに」だったり、
何かを手に持っている「いっしょに」だったり。
タカモリ はい。これまでにつくったものの中から
6作品、選びました。
── あとは「TBシリーズ」、テディベアですね。
タカモリ はい、糸井さんとの約束通り、
テディベアをつくりました。
これについては「いっしょに」というテーマから離れて、
シンプルなテディベアを3体。
── 3体! すべてが新作なんですね。
タカモリ はい。つくりだしたら、
たのしくなっちゃって(笑)。
糸井さんがおっしゃってた、
「タカモリさんは仏像を彫るように
 テディベアをつくり続けるといいよね」
ということばは、
こういうことだったのかなぁ、って。
「これは今のわたしがやっておかなくちゃ
 いけないことなんだなぁ」って、
つくりながら、そんなふうに思いました。
── ありがとうございました。
ということで今回の2月会場は、
「いっしょに」というテーマで9体、
新作のテディベアが3体で、
計12作品の展示になります。
どんな「いっしょに」が展示されるのか、
ぜひ、みなさまにもたのしみに
していただけたらと思います。
ありがとうございました!
タカモリ ありがとうございました。


2009-02-09-MON


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN