いい音は空気を洗う。
加藤晴之さんの紙筒スピーカー物語。

このページを読んでくださった加藤晴之さんから、
こんなメールを頂きました。
嬉しいので掲載していいか伺ったら
いいですよ、とおっしゃってくださったので
どうぞ皆さんも読んでみてください。


スピーカー制作者、加藤晴之さんです

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こんばんは。
さっき、ほぼ日を拝読し、感動中です。

私のスピーカーを勇気をもって購入してくださり、
夫婦喧嘩までして聴いてくださったり、
もう一台買おう、なんていってくださったり、
旦那とふたりで「うおーっ」と唸ってくださったり、
次から次からCDを聴いてくださったり、
こころから感謝しています。
作ってよかったなぁ、と、
今しみじみと感じ入っています。
ありがとうございました。

カタログハウスさんに注文しても
11月以降でないと手元に届かないなんて、
申し訳ないし、ざんねんですが、
フリーハンドさんが頑張ってくださっているので、
楽しみにお待ちください、としかいえないです。
工場の現場は、今、多分、大騒ぎだと思うんです。
ほとんどが手作りなので、
工場の方々も大変だろうと思います。

でも、不思議ですが、
こうして大勢の方々のご協力のおかげで、
出来上がったスピーカーです。

今までも、そうでした。
糸井さんと出会うことができ、
カタログハウスさんとご縁ができ、
フリーハンドさんとめぐりあえ、
組み立ててくれる工場と出会え、
製品ができ、
今度はまたほぼ日の皆さんとのご縁ができ・・・、
私一人ではできない製品でした。

大勢の方々のご協力で、世に産まれた商品です。
そして、
買っていただいた方々が
生の感想を送っていただき、
さらに商品を育ててくださる。

いいなぁ、すごいなぁ、

今、ほんと、幸せを感じています。

みなさん、ありがとう。

加藤晴之

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このページの全部のテーマが
このメールで語られている感じがしますよ!
フリーハンドさんというのは、
これからの連載にも出てくる、
今回のスピーカーを
実際形にされたメーカーさんの名前です。

今日は、
加藤さんとdarlingが
「音」について対談する
っていうセミナーのお知らせが、
ページの最後にありますので、お楽しみにっ。
しかも、紙筒スピーカーの試聴会も
同時にやっちゃいますよ!
スピーカーがまだお手元に届いていない方は
さらに楽しみ度を深めてくださいね。
申し込んでない方も、
ぜひ今後の音選びの参考にされてください。

(専門用語は赤色になっています。
 最後に語句説明がありますので
 分かりづらい方はそちらをご覧くださいませ)

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♯3 世の中にないから、自分で創る

・加藤さんのいい音の基準

学生の頃、平面バッフル(*)で目から鱗だったから
平面バッフルをもう一回やってみようと。
昔の自分の体験をもう一回今やってみたわけです。
そうするとことごとく当たりなんですよ。
なんだ、これじゃんって。
今でも家で僕がメインで聴くのは
平面バッフルのフルレンジ(*)一発、
真空管でっていう。

・・・それが加藤さんの「いい音」の基準なんですね。

そうですね。
それはもう明らかにひくーい音とかたかーい音は
出てないんですよ。
今の世の中の衰勢っていうのは
DVDオーディオに変わってCDになって
純粋なオーディオシーンで言っても
すごくたくさんの情報をつめこめるようになる
コンテンツが揃っていくわけですよね。

ところが別に低音が出ていなくっても
高音が出ていなくっても
音楽の純粋に聴きたい要素っていうのが、
もっと狭い帯域の中に、実はたっぷりあると思った。
昔の蓄音機なんていうのは
下は80ヘルツとかで上はたぶん
8000ヘルツくらいの音で
みんな聴いてたと思うんです。
だけどそれで、人は涙する、感動できる。

今はみんな聞き捨てるように
音が右から左へ流れていくでしょう。
これは絶対どっかおかしいと思ったんです。
きっと何か
人が感動する要素っていうのは
出る音の幅とは違うところにあるんじゃないか
って思ったんです。

そこで、僕なりに考えた一つの要素は
今のスピーカーっていうのは大抵「箱」ですよね。
下の大きめのスピーカーから低音が出て
上からは高音が出ると。そういうことになってる。
ところが低音のスピーカーは高音まで再生できない。
下のユニットは高音を出そうとすると
すごく耳障りな音になってしまうんです。
だからどこかでバトンタッチをするわけです。
周波数帯域っていうんですけども、
そのバトンタッチをするときに
どんな技術を使っても必ずそこには、
ある種の回路が必要になってくるんですよ。

そのある種の電子回路なんですけども、
それが入るということは、必ず音が劣化するんです。
どんな場合でも必要悪なんです、これは。
だったら、そんな「悪」はない方がいいじゃん、と。
それをなくすためには
フルレンジ一個で音を整えなきゃならない。
でもよく考えたら、
昔のオーディオはLPでそんな低い音まで聞けないし、
フルレンジ一個でも全然オッケーだったんです。

今だったらハウスだとかラップだとかにしても
めちゃくちゃ低い音が入ってますよね。
普通のフルレンジ一個だと
それを全部再生できないですから、
じゃあどうしようってことになるわけですよね。

今回作ってみたのは、
どこまであんな小さいスピーカーから
あの低音が出せるかっていうのと、
フルレンジで音楽のファンダメントな部分が
ちゃんと残せるかっていうこと。
そこに注目して音を作ってきたわけなんですね。

だから、今は1000万円するスピーカーであっても
必ずその低域と高域をつなぐ電子回路っていうのは
入っていて、コンデンサーとかコイルとか
色んな要素で組み上げられてるんですね。
完全なデジタルっていうのもあるんですけど、
どんな回路を持ち込んだとしても
元音を変えてしまうんです。

ところがフルレンジっていうのは
アンプからの音がダイレクトに入ってしまいますから、
音の鮮度が違うんですよ。
とすると、回路が必要ないですから
その分コストが下がる。
声の帯域を受け持つスピーカーと、
バスドラムだとかベースとかの
低音を受け持つスピーカーと
シンシキシンシキシンシキ(マラカスの口まね)
っていう高い方のスピーカーを受け持つことも考えて、
3つつけてみたりとか4つつけてみたりとか
すればするほど、要素が増えるわけですね。
そうすると今度はその3つなり4つなりのハーモニーを
整えなきゃならないわけですね。

今それをやらなくなったのは、
それだけの耳を持っている技術者が
少なくなっているっていうことなんです。
そうすると特性をデータでとって、
フラットだったらいいよね、みたいな方に
どうしても走ってしまうんですよね。
今のスピーカーの現状っていうのは
そんな感じでなかなかうまくいかないんです。

・・・それで自分で作るしかないと思われた。

ええ。ないから。
世の中にないから、もう自分で創ろうと思ったんです。

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■語句説明

平面バッフル
スピーカーを取り付ける板が平面になっているもの。
真っ平らな板や段ボールの一枚板の真ん中に
スピーカーユニットがついているものを
想像してみてください。

フルレンジ
一つのスピーカーユニットで
すべての音域をカバーするスピーカー。
コンポについているスピーカーのように、
スピーカーユニットが低音用、高音用と
分かれているものはフルレンジとは呼びません。

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もとはと言えば、
音楽って気持ちよくなったり、元気になったり、
感動したりするためにあるもので
音を詳しく聴くためのものではないですよね。
加藤さんの紙筒スピーカーは、
そのことを肌で感じるきっかけになると思います。

ここでお知らせです!
ないんだったら自分で創る、と
ものづくりに真摯な態度の加藤さんと
そういう人やモノをたくさんの人に伝えたいと思う
darlingとの対談が行われます!


カタログハウスのB1のお店にも置いてありましたよー
残念ながらお手元に届くのは11月以降になりますが。

◆「音の不思議を語ろう対談」
加藤晴之×糸井重里
日時:10月1日(月)18:30〜20:30
場所:カタログハウス地下2階「セミナーホール」
入場料:1000円(先着100名様)

さらになんと、同時開催で、
この紙筒スピーカーの試聴会も行います!

◆「加藤晴之さんの紙筒スピーカー試聴会」

日時:9月29日(土)・10月1日(月)11:00〜17:00
場所:カタログハウス本社1階
入場料:無料(予約不要)
お好きなCDを持ってきていただければ
実際にお聴きいただけます。
本当にいい音を聴くチャーンスっ!

対談、試聴会に関してのさらに詳しい情報は
こちらのページをご覧ください。
(参加の申し込みもこちらからできます)
http://www.cataloghouse.co.jp/study/study.html

ほな。首なごうして待ってまっせ。



「加藤晴之さんの紙筒スピーカー」に関する
お問い合わせは、
0120-701-567(カタログハウス商品ご説明課)
お申し込みは、
0120-164-164(カタログハウス受注センター)
までお願いいたします。

2001-09-16-SUN


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