糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの

今日のダーリン

・「ほぼ日」の乗組員たちの名刺には、肩書きというものがない。どうしても肩書きの必要になる場所に向かうときには、たぶん「裏名刺」というようなものをつくるであろう。そういうものは、ふだんの仕事のなかでは不要だ。社内でも部長だの課長だのいう呼び方はない。みんなが「どうも、あったほうがいい」と言い出したら、そのとき、あらためて考えるようにする。唯一、役職名で呼ばれることがあるのは、実は「イトイさん」こと、ぼく自身である。仕事上のつきあいの人が「社長」とか言うものだから、それがおもしろいのか、社内でもよく「しょちょー」と呼ばれたりしている。ただ「社長」というより、ひらがなの「しゃちょー」ね。ぼくは、それをよろこんでいるわけでもないが、格別に嫌がっているということもない。「先生」と呼ばれるのは苦手だけれど、「せんせー」ならいいや、みたいなことと似てるのかな。どっちにしても、ぼくは、実を言うとですね、じぶんが「しゃちょー」であることを自覚しているのだ。意外? そうでもない?

もちろん、「ほぼ日」をはじめるまで、あるいは、「ほぼ日」をはじめてからしばらくの間は、「しゃちょー」だと思わないように、そして、思われないようにふるまっていた。しかし、ちょっとずつ、それは変わっていったのだった。これ、無意識に近い感じで進んでいったことなので、ふとしたときに、「あ、おれは社長になってる」と、その都度、気づいてきたのでありますよ。たとえば「人間ドック」をきちんと受けようと思うとき、たとえば、タバコをやめようと決めるとき、たとえば、クルマの運転を慎重にしようとしたとき、それはすべて、「しゃちょー」の責任として、じぶんの命やら健康やらを粗末に扱っちゃいけないから、という考えがあったわけです。急にそうなったのではなくても、少しずつ、「おいら職人、風の吹くまま気の向くままよ」みたいなことを考えないように修練してきたのでした。そういうの、あんがいできるようになるものなんですよ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。「あなたひとりの身ではない」は、みんなに言えることさ。

土曜日、日曜日と祝日の「ほぼ日」は9時に更新しています。 昨日の「今日のダーリン」を読み逃した方はこちら。

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