シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第31回
では、プロジェクト管理は
うまくいってますか?


前回のプロジェクトの進め方の話の中で、
仕事は与えられると言うより、
自分でやりますといって引き受ける
ことで分担されていくことが重要なポイントだと
書きました。

自分がやるといった以上
責任を果たすことが重要だというのが
前回挙げた理由なのですが、
改めて別の角度から見てみると、
ほかにも面白い発見がありました。

それは、

「内心無理だと思ったスケジュールの
 プロジェクトは必ず遅れる」

ということです。
そして、一旦遅れてしまったプロジェクトは
ずるずると延びていってしまうということです。

僕の働いていた会社では基本的には
前回書いたようなスケジュールの組み方をするのですが、
たまに上からの指令で

「いついつまでにこういう機能を入れろ」

というような話が舞い込んでくることもあって、
スケジュールがあらかじめ定められた中で
開発を進めていくことも稀にありました。

しかし、こういった場合、終わってみると
初めに言っていた期間は一体何だったんだ
というぐらい時間が掛かってしまうのです。

ソフトウェアの開発は、仕事量の見積りが難しいため、
他人が仕事量を見積もると、
見当違いのスケジュールになってしまい、
実際に開発する側は、
はなから諦めた状態になってしまいます。

遅れる理由、出来ない理由を考えるのは簡単で、
それを挙げれば切りがありません。
しかし、真の理由は
できないと思っているから間に合わないのです。

スケジュールを押し付けられると、
スケジュールに無理があるということが、
それは恰好の言い訳になるのです。

そこで前回挙げたようなプロジェクト管理の方法が
出てきます。
言い訳となる見当違いの見積りを避けるために、
作業量を一番正確に見積もることのできる
実際の作業を担当するエンジニア自身に見積もらせれば
いいというわけです。

エンジニアの仕事を何年もやっているうちに、
目の前にある仕事の難易度や、
それに隠された落とし穴を予想し、
それに対して、自分の仕事のスピードから考えると、
どれぐらいでその仕事が完了するかというのは、
各自の勘で分かるようになっているものです。

自らその作業にかかる時間を見積もることで、
個人個人の生産性のばらつきも自然に考慮されますし、
また、間に合わない理由を
人に押し付けることができませんから、
遅れそうになっても、何とか終わらせようと
努力をするものです。

そして、「何とかしよう」と思っている状態と、
「間に合うわけないよな」と思っている状態では、
生産性に大きな開きがでるのは言うまでもないと思います。

しかし、このように各自が自分の作業を
責任を持ってやる場合でも、
チーム全体の士気が低いと、みんな、控えめ、
長めの見積りをしてしまい、
全体としては今ひとつプロジェクトの進み具合が鈍い
という状態に陥ってしまいます。

この問題を解決するのが、チームリーダーの仕事です。
チームメンバーの士気を上げ、全体としての生産性を
高く保つのです。

僕の経験で一番成功したプロジェクトのリーダーは、
プロジェクト管理といっても、
ほんの紙切れ1枚でやっていました。
そこには、誰が今、何をやっていて、
いつ終わると言ったかが書いてあるだけです。

それでもそのプロジェクトが一番うまくいったのですから、
士気がいかに大切かということが
伝わるのではないかと思います。
プロジェクト管理ソフトとにらめっこするのが、
リーダーの一番の仕事ではないですね。

上田ガク

2004-02-03-TUE


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