シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第26回
シリコンバレーの住み心地はいかがですか?


ここのところ、仕事の仕方についての記事が
続いていたのですが、それはちょっと一休みして、
しばらくシリコンバレーでの生活について
書いてみようかと思います。

シリコンバレーと呼ばれる一帯は
サンフランシスコの郊外にあり、
そこでの生活は都市型というより、
郊外型の生活です。
いわゆるアメリカと聞いて連想する
クルマ社会だと思って構いません。

近くのスーパーマーケットに
お買い物にいくのもクルマ、
友達のうちに遊びに行くのもクルマ、
とにかく家から出るには
クルマがなければ
何もできないようなところです。

もちろん、会社に通勤するのもクルマです。
そのため、どこの会社の場合でも、
会社の建物のまわりを広大な駐車場が
取り囲んでいます。

会社の駐車場には、誰がどこに止めるという
決まりはないので、毎日早い者勝ちです。
そのため、朝出勤が遅いと、
建物の近くの駐車スペースはすべて埋まっていて、
建物から離れた遠くの方に
止めなければならなかったりします。

通勤時間は平均すると、
30分ぐらいが普通のようです。
僕はアパート暮らしで、
特に住む場所にこだわりがないので、
なるべく会社に近いところに住んでいます。
そのため、片道の通勤時間は約10分と短いのですが、
シリコンバレーは不動産の値段が高いので、
日本と同じように、家を買った人は
ちょっと離れたところからの通勤になります。

また、最初に書いたとおり、
シリコンバレー一帯は都会ではなく、
都会的な楽しみが
まったくといっていいほどありません。
飲みにいくバーもなければ、
遊びにいく場所もない。
そんなわけで、若い独身の人ほど、
そういうことのできる
サンフランシスコに住んでいることが多いのです。

サンフランシスコは都市型の生活が満喫できる反面、
シリコンバレーの中心からは離れているので、
通勤時間は片道1時間近くになってしまいます。

日本的に考えれば、会社が町の真ん中にあり、
その町の周りに人々が住んでいるという形が普通なのですが、
サンフランシスコとシリコンバレーの関係というのは、
それが逆転している面もあり、面白い現象です。

このように、シリコンバレーでは、
サンフランシスコに住み、
都市型のライフスタイルを維持しながら働くことも、
職住接近を実現することのいずれも可能です。

シリコンバレーのようなものを作ろうという動きが
様々な地域で試みられていますが、
それがなかなかうまくいかない理由の一つには、
その地域が、働く人にとって
生活をするのに十分魅力的な場所でないということも
挙げられるのではないでしょうか。

サンフランシスコに住むか、
シリコンバレーに住むのかという選択は
できるのですが、
その通勤手段については、事実上クルマ以外は
あまり現実的ではありません。

シリコンバレー一帯の公共交通機関は極めて貧弱で、
サンフランシスコからシリコンバレー一帯を結ぶ、
カルトレインという鉄道はあるものの、
ほぼ1時間に2本しか走っていません。
しかも、このカルトレインは電車ではないんです。
アメリカ風のごっつい機関車が
客車を引いて走るという昔ながらのスタイルです。
その上、今年は改良工事のため、
カルトレインは週末は運休で、
1本も走っていません。

これだけでも不便なのに、その前後、つまり、
駅から会社までは何の交通手段もなく、
同様に家から駅まで行くのも一苦労です。
鉄道の駅を中心に町が形成されているわけではないので、
クルマ以外で生活しようと思うとなかなか大変です。

さて、このクルマ通勤、一見、
満員電車に乗らなくてよく、
魅力的に聞こえるかもしれませんが、
実際にはそんなに良くないもののように思えてきます。
そこで、次回は
クルマ通勤をテーマに書いてみたいと思います。
(後日記:ちょっと予定を変更しました。
 クルマ通勤の話はまたいつか書きますね)

上田ガク

2003-12-23-TUE


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