シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第12回
ベンチャー企業で働くってどんな感じ?



シリコンバレーのベンチャー企業が
一躍有名になったのは、
それらのベンチャー企業が株式を公開して、
ストックオプションで、一夜にして
億万長者が誕生したというニュースが
繰り返し伝えられたからに違いありません。

しかし、そう簡単に誰でも
億万長者になれるほど、
シリコンバレーも甘くはありません。

スタートアップの大部分は、鳴かず飛ばずですし、
運良く株式公開に漕ぎ着ける企業を
見つけ出したとしても、
その株価がその後も
どんどん上昇していかなければダメです。
最後に駄目押しをするならば、
億万長者になろうと思ったら、
会社の経営者になるか、
よっぽど会社が小さい時に入っていなければなりません。
そして万が一お金を手にしても、
その半分近くは税金で持っていかれてしまいます。

お金儲けだけを目的にシリコンバレーに
やってくるのなら、その期待は裏切られる可能性は大きく、
ガッカリすることでしょう。

 「なぜリターンがないのにリスクを取るのか?」

思ったほどお金持ちになれる可能性がないのに、
安定した生活を投げ捨てて、ベンチャー企業で働く人が
シリコンバレーには多いんだろうと
思うかもしれませんが、
ここに1つ大きな勘違いがあります。

ベンチャー企業で働くということに、
それほどのリスクはないんです。

僕の持っていた日本でのベンチャー企業の
イメージといえば、
成功した時のリターンと引き換えに、
安い給料と休日返上で長時間労働しなければならない
というものでした。

しかし、こちらにはベンチャー企業とはいっても、
社員数人のものから千人近い社員を抱えるものまであり、
50人を越えるぐらいの規模になってくれば、
給料は大企業に比べても遜色ありませんし、
労働環境に至っては、社員が少ない分、
一人一人の融通が効いて、
逆に大企業に比べて良い場合がほとんどです。

一口にベンチャー企業で働くといっても、
リスクの小さいものもかなりあります。

そういった個人商店的なレベルを脱した
ベンチャーでも、会社は設立からほんの数年で
あることには変わりありません。。

ベンチャー企業で働くことのメリットは、
会社が新しく古い体質を引きずっていないこと、
自由な雰囲気で、自分たちの企業カルチャーを
作り出すことに参加できること、
そして、
自分たちの手で世の中に変化を与えることが
できると実感できること
と言えると思います。

そして何より、会社の成長してゆく過程を
体験できるということが一番のメリットです。
会社が成功しなくても、その会社の過ちを
振り返れば、次に働く場所でその経験が自分に
とっての大きな資産になります。
そしてこれはベンチャーで働けば
必ず手に入る資産です。

金銭的なメリットもありますが、
それは副次的なもので、
運を含めすべてがうまくいった
時にはじめて与えられるボーナスのようなものです。

僕の働く職場でも、同僚が
株式公開の話をすることは滅多にありません。
会社が成功して、その恩恵に
自分たちも浴することができれば嬉しいけれど、
それは当てにはしていないというのが
僕の感じたところです。

創業者や会社の経営者が会社の成功とともに
莫大な報酬を得ることは事実ですが、
それはほんの一握りの人の話。
大部分の人はそこまでのリターンはなくとも、
ベンチャー企業で働くことを楽しんでいる
というのが今のシリコンバレーです。

上田ガク

2003-10-28-TUE


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