シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第10回
エンジニアは昇進に興味がない?



シリコンバレーのエンジニアは、
あまり昇進のことを気に掛けていません。
もしかしたら、表に出さなくて、
心の中では野心メラメラなのかもしれませんが、
何年も一緒に仕事をしてきても
そんな一面を垣間見ることはないので、
きっと本当に気に掛けてないんでしょう。

それもそのはず、
昇進というものが滅多にないからです。
こちらの会社はとてもフラットな組織なので、
会社には昇進する対象となるポジションが
ほとんどないのです。

今の会社に至ってはエンジニアは、
全員ソフトウェアエンジニアという肩書きで、
大学を卒業したばかりの新入社員も、
業界歴10年を超えるエンジニアも
みんなただのソフトウェア・エンジニアです。

普通の会社でもせいぜい、エンジニアと
シニア・エンジニアの2つに分かれているぐらいです。

そして、年齢が上がってきたからといって、
自動的に現場を離れ、管理職になっていくという
ことはありません。特に希望をしなければ、
働きつづける限り、エンジニアなのでした。

駆け出しのエンジニアでも、年季の入った
エンジニアでも、肩書きは同じエンジニアです。
そのため、エンジニアの評価は、その実力だけで
決まってきます。

何度か意見を戦わせていくうちに、
どちらの方が能力があるのかは、
おのずと分かってくるので、
優秀なエンジニアは、プロジェクトの中の
キーパーソン的な役割を果たすようになり、
より責任があり、影響力の大きい仕事を
担うようになってきます。
会社は、エンジニアの活躍の度合いによって、
評価します。

もちろん、会社がエンジニアに与える評価が
常に公平だという保証はありません。
しかし、会社には細かい肩書きはないので、
どちらの方が会社から金銭的に評価されているのか
というのは同僚には分かりません。

実際の仕事を見れば、仲間うちで誰が会社に
貢献しているのかということはわかりますし、
基本的にはそういう人が
高く評価されているからです。

そのため、なんであいつの方が評価されているんだ
というような不満の声があがることはまずありません。

実力が評価される一方、エンジニアである限りは
自分の技術力を常に高く保っておく必要があります。
技術の進歩は速く、そして、その技術は
誰かが教えてくれる訳でもなく、
本を読んだり資格をとればいいようなものでも
ありません。

技術についていくために勉強するというより、
技術の進歩を追うことが好きな人でなければ、
とてもじゃないけれども、
この仕事をずっと続けていくのは
無理だろうなと感じます。
その証拠に、僕の周りにいるエンジニアは、
仕事時間以外にも個人的にソフトウェアを
作ったりしている人がたくさんいます。

僕も、ちょっと前に個人的に興味を持って、
作っていたものがありました。
そして、それが今はそれに似たものを
仕事で担当したりもしています。
こちらの会社は新しいことをやることに
あまり躊躇せず、面白そうだから
とりあえずやってみようといって
社員にやらせてしまうことが多いのです。

こんなことを仕事で出来るなんて
考えもしませんでした。
お給料を頂いて、
そして自分の趣味のようなものを
作らせてもらえる。
その上、それを会社の看板をつけて
多くの人に使ってもらえるようになると思うと
本当にたまりません。

しかし裏を返せば、好きじゃなかったら、
いつまで経っても楽にならない仕事とも言えます。
新しいものに興奮する情熱がなくなったら、
もうエンジニアはやっていけないのだろうなと
思いました。

上田ガク

2003-10-21-TUE


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