続・はじめての落語。 立川志の輔ひとり会
志の輔×糸井重里対談! イベントについてはこちら!
第4回 デジタルも、アナログも。
志の輔 いま説明されたインターネットのことなんかをね、
私の世代なんかは、すぐには理解できなくて、
「うーん」と首をかしげているのが
ふつうだと思うですよ。
「うーん」と首をかしげている
私を姿をお客さんが見て、
「そうそう、オレもいま、首かしげてんだ」
っていうのがふつうの多い反応だと思うんですよ。
糸井 うんうん。
志の輔 「なんなんですかね、
 あのインターネットっていうのは」
っていう状態だと思うんですよ。
ところが、糸井さんは同じ世代なのに、
もうそれを完全に突き抜けて、
新しい技術を日常にしてる人たちと
つながってるじゃないですか。
糸井 はあ。


志の輔 そこがね、すごい。私なんて、
やっとメールは使えるようになったけど、
海外からメールが来ると
いまだに驚きますからね。
このまえ兵藤ゆきから
メールが来たときには驚いた。
「こいつニューヨークじゃなかったっけ?」
って思ったら、
「ニューヨークにお越しの節は
 ぜひご連絡ください」って書いてある。
「ニューヨークかい、これ!」って思って。
いまだにそんな感じなんですよ(笑)。
糸井 ああ(笑)。
志の輔 でもこの「ほぼ日」は
もう世界中からアクセスがあるわけでしょう?
糸井 そうですねえ。
いちおう、国連に加盟しているような国からは
だいたいぜんぶアクセスがありますね。
やっぱり、日本人がいますから。
志の輔 それに驚かないあたりがすごい。
糸井 いや、驚いたんですよ。かつて。
志の輔 あ、そうなんですか。
糸井 驚いたから、おもしろかったんですよ。
つまり、「なにそれ!」っていうところから
ぜんぶはじまってますから。
「それ教えて!」って言うと、
ぼくにもわかるように
みんなが教えてくれるじゃないですか。
ぼくも正直だから、
わかんないものは「わかんない」って言って。
だから、ぼくは、
パソコンそのものの知識は
「ほぼ日」をはじめた7年前と
ほとんど同じだと思います。
自分ひとりでできることも変わらない。
でも、「インターネットってなぁに?」
っていうことについては、たぶん、
ちょっとした学者よりもわかってますね。
それは、単純に、
ずっと選手をやってるからなんですよ。
志の輔 ああーーー。
糸井 あとね、なにもかもが、
インターネット用になったり、
デジタルなものに切り替わったり
するわけじゃないんです。
たとえば、こないだぼくは
矢野顕子に催促されてた歌詞が
やっと書けたもんだから、
うれしくてすぐにメールで送ったんです。
でもね、いままでぼくは彼女と
歌詞については
ファックスでやり取りしてたんです。
ちょっとした絵なんかも添えて。
で、その絵の感じや、
手書きの文字なんかも含めて、
彼女は曲をつくる刺激に
している部分があるから、
たぶん、しばらくしたら、
ぼくはメールで送った歌詞を
手書きで書き直して
ファックスで送ることになるんですよ。
志の輔 うんうん。
糸井 そこの部分っていうのが
学者の人やデジタル系の人には
わからないんですよ。
インターネットのなかには
そういうようなことぜんぶが入ってるんです。
だから隙があって、
技術のことがよくわかっていない
ぼくらにも生きていけるチャンスがあるんです。
志の輔 ああ、そうかそうかそうか。
ぜんぶが新しいところに
いくわけじゃないんですね。
糸井 うん。
けっきょくは人の心の問題ですから、ぜんぶ。
心はね、やっぱり、長年いろんなことを
やってきた人の方が知ってますから。
志の輔 ああ。
糸井 やっぱり両方ないとだめだと思うんです。


志の輔 うん。そうですねえ。
やっぱりしょせん演者ですからね。
さっきうかがった技術の話を
いちおう理解したつもりでも、
やっぱりぜんぶはわかってない。
ラジオに出てるときにね、
こう、国際電話で
誰かと話すとするじゃないですか。
「今日はロンドンにいる
 なになにさんです」って。
で、いま電話をつなぎましたっていうと、急に
「あ! なんとかさんですかぁ!」って、
自分の声が‥‥。
糸井 でかい(笑)!
志の輔 大きくなっちゃうんですねぇ(笑)。
そんなこと、無意味ですよ。
ちゃんとラインでつながってるんですから
って言われても、国際電話って言われると
声が大きくなる自分のバカさ加減。
バカさ加減というか愚かさというか(笑)。
糸井 はいはい(笑)。
オレもそうだと思う。
志の輔 この年代の人間として、
まあ、これはしょうがない。
抜けなくてもしょうがない。
それをクールに、
いや、世界中のどこにつながってても、
今技術でつながってるんだから、
「あ、どうもこんにちは」
「あ、いまそっち何時ですか?」って
落ち着いてられる加減のほうが居心地が悪い。
仕組みを理解して「あっ、そうなのか」って
収まっちゃう自分よりも、
「南極の観測隊に電話つないでるんなら、
 南極に向けて声出せよ!」っていうのが
 ほんとうの自分の気持ちなんですよね。
糸井 そうですよ。
ぼくだって、いまでも
電話でお辞儀したりしますからねえ。
「どうもどうも失礼します!」って(笑)。
直んないものは、直んないから。
志の輔 はいはい(笑)。
だからね、さっきの話を聞きながら、
とてもおもしろかったんです。
「じゃつぎはどうなんの? どうなんの?」と、
素直におもしろがれない自分が。
アナログからそう簡単に
デジタルに行けない自分をいま、
こうやって話を聞きながら、
「そういう人なんだ、俺は」と思いながら(笑)。
自分で自分をある意味すごく再確認できた。
糸井 それでいいんだと思うんです。
ぼくのなかにも、そういうところは
すごくたくさんあります。
あの、たとえば、
時計がデジタルになったときに
「ぜんぶの時計が
 デジタルになるんじゃないか?」
ってみんな思ってましたよね。
だけど、そんなことなかったですよね。
そういうことだと思うんですよ。ほんとに。
これはね、不思議ですけど、
そこに僕らの楽しみがあるんですよ。
志の輔 そうですねえ。

(続きます!)

(続きます!)

2005-11-29-TUE
 
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