先週の福岡県から
最長距離の移動を果たし
たどりついたのは、
あの方のいらっしゃる街でした。
北海道(南) 生まれ育ってはいないけど。
みうら
今回は大きい県を
引くことにしますよ。
(県くじを引く)
ほぼ日
大きい県、それはやはり、
北海道ですね。
みうらさんが引かれたのは、
下半分の南北海道です。
この企画の最初に
「北海道は2回に分ける」
ことを決めましたので、
南北に分けてみました。
みうら
ここは、語ることが満載かも。
ほぼ日
そうなんですか。
みうら

1記念館で30分は
いけちゃうもん。

ほぼ日 1‥‥記念館?
みうら
ぼくがいまから言いたいのは
当然、函館のことです。
函館と聞いたら、自動的に
「はるばる来たぜ」
ということになるでしょ?
そうです、北島三郎さんです。
このことは、もういろんなところで
しゃべってきましたから、
話もうまくなっていると思いますし、
話が大きくなっている可能性もあります。
そこはこれから実際に現地に行く方々に
修正して見てほしいと思います。
ほぼ日
函館は、北海道の
付け根あたりにある町ですね。
みうら

函館は夜景で有名ですよね。
函館山にロープウェイで登り、見下ろすと
ひょうたんのような地形に
夕方の6時半あたりから
明かりがともりはじめます。
でね、ここでひとつ言いたいのは、
それまでの時間帯に、
つまり、昼間に函館山に登っても
夜景は見られない、ということなんです。
そのことが、あまり知られていない。
夜景という意味が
ピンときてない人がいるんですよ。
それはいかがか、と思います。

ほぼ日 気をつけないといけませんね。
みうら

山の展望台には、手すりが設置されています。
いわゆる、デートスポットっつぅやつですよ。
みんな夜景を見ますから
手すりから身を乗り出すような格好になります。
知ってます?
人は、前傾姿勢になったとき、
ついつい腕が上がるものなんですよ。
不思議じゃないですか。
なんなんでしょう、あれは。
「死なばもろとも」という言葉がありますが、
人は「ここは限界だ」という地点に立ったとき
ふたりで落ちようという結束感が
ものすごく高まるんです。

ほぼ日 ‥‥?
みうら 例えば、崖だってね、
崖っぷちギリギリのところへは、
たいがいひとりで行くものです。
ひとりで行って「うわー!」とか言って
みんなのところへ戻るでしょう。
そこを、ふたりで行ってごらんなさいよ。
必ず、肩組みますよ。
肩を組んだが最後、
「バーン!」と行ってしまいます。
なぜだかわかりませんが、
人は、危険が迫ると
「巻き添えにしたい」
という気が起こります。
ほぼ日 たしかに、崖っぷちに
複数で行くと危険度が増す気が‥‥
みうら

まぁ、函館の手すり前では
手すりによって、当然落ちませんから、
大丈夫です。
しかし「死なばもろとも効果」で
並んだカップルの腕が次々と
かかっていくさまを、
我々はつぶさに観察できます。

ほぼ日 次々と。
みうら

メガネのツルは両耳にかかりますが
片一方だけがブラーンとかかっている、
そんな状態があるでしょ?

ほぼ日 酔ったとき、転んだときなど、
そうなりがちですね。
みうら

ちょうど、その「片メガネ」のようにして、
並んだカップルの肩に
腕が見事にかかっていきます。
それに、ちょっと黄昏になって、
いいムード出るでしょ?
自分たちが正面を向いているせいで
「人に見られてない」という作用が働き、
ここで、キスが出るんですよ。
ほんとうは函館の夜景ぜんぶから
見られてんのにもかかわらず、
そこは「ない」ことになるんですよね?
こんなにオープンなのに、
逆に見られてないと思って、
チューが出る始末ですよ。

ほぼ日 なるほど。
みうら

ですから、パートナーがいない場合は
ほんとうに夜景が好きじゃないと
やってられないです。
「オレは各地の夜景を見てきたぜ、
 熱海の夜景も見てきたぜ、
 マカオも見てきたぜ!」
くらいの覚悟じゃないと、きついんですよ。
いや、きつかった。

ほぼ日 おひとりで、登られたんですか。
みうら 下りたくなります、ほんとに。
そういう人にお薦めなのが、
北島三郎記念館です。
ほぼ日 はい。
みうら

北島三郎記念館に入ると、ひとり、
コンダクターさんが付いてくださいます。
そこが、新しいじゃないですか。
ぼくは今年も石垣島の
具志堅用高記念館に行きましたが、
そこの会館の人すらいない状態でした。
でも、北島三郎記念館は
ひとりで行ってもひとり付く、
団体で行ってもひとり付きます。
入口の、袴をはかれた北島三郎さんの銅像の前で
コンダクターの方に
北島さんの歴史を聞くわけです。
その話はわりと長いです。

ほぼ日 はい。
みうら

北島さんが東京に出られたときの船の甲板、
北島さんが東京で住んでおられた下宿のセット、
北島さんが苦労時代に大家さんの娘さんに
カレーライスをふるまわれた話、
北島さんの、びっくりするほどたくさんの
シングルレコードがパーッと並ぶ部屋、
それらを経ると、突如として、
東京・歌舞伎町にあるコマ劇場の
ロビーが出現します。
びっくりしますよ?
ロビーを再現するって
なかなかないことでしょ?
再現されたロビーのふかふかしたドアを開けると
七福神が乗ってるような、竜のついた巨大船が
バーンと目の前に飛び込んで来ます。
オロオロしてあたりを見回していると
「ダーンダダンダン
 ダーンダダンダン
 まーつりだ、まぁつりだ」
という音が聞こえてきます。
そして、船の舳先から
グゥーン! と、北島さんのロボットが出てくる。
びっくりしますよ?
ロボットがよくできていますから。
そして、音楽に合わせて、龍の鼻から
スモークがブワーッ! と出ます。
ほんとうにびっくりしますよ?
そうして、クラクラッとなって、
入口に戻ります。
それが、函館です。

ほぼ日 ‥‥すごいですね。
みうら

南北海道には、
小樽も入りますよね?
小樽は、お寿司のおいしいところです。
しかま寿司というお寿司屋さんがありまして、
それは、関根勤さんのマネージャーの
しかまさんの家なんです。

ほぼ日 ??
みうら

えっと、お寿司については、それだけです。
そうそう、小樽では、
人が意外と行かないような、穴場があります。
それは、天狗山です。
スキーで人気がある山なので、
スキーの記念館があります。
スキーの記念館に入り、進んで行くと
突然、天狗館になるんですよ。
びっくりするほど早く衣替えする館です。
そんなに大きい館ではないんですが、
右から左から、縦横無尽に、
びっちりと展示されている天狗の面の鼻が
ビューッと伸びています。
それは、日本全国の天狗マニアが
寄贈したのかどうかはわかりませんが、
いろんなタイプの天狗の鼻が
にゅうにゅう出ています。
考えてみてください、みなさん、
そんなところを歩いたことはありますか?
そんな、にゅうにゅう街道みたいなところを。

ほぼ日 ないです。
みうら

そこでね、ぼくも、天狗というと
ちょっと参入したいところがあるわけです。
これです。



ぼくが作った
オリジナルのキャラクター、テングーです。
やはりこれを、小樽の天狗記念館に
置いてもらいたいという願いがありまして
そこの館長さんに
「東京から来たんですけど」
と言ってみました。
ここはしっかり言わなくてはいけません。
どこから来たかは、
遠いほうがいいですからね。
そして、ありがたいことに、館の展示に
テングーを入れていただくことになりました。
いま、小樽の天狗館の
にゅうにゅう街道を通り、
左に行ったショーケースの中に
先頭きって、テングーは入っています。

ほぼ日 テングーは天狗の仲間入りで
展示されているわけですね。
みうら ほんとはね、旅に何かを残すなんてこと、
恐れ多いことなんです。
しかし、こんな小さな島国なのに、
郷土愛というものが分割されていることに
ぼくはずっと疑問を抱いてきました。
「生まれ育ってはいないが、好きです」
という気持ち、いいじゃないの! と
思っているんですよ。
そういう場所には、
1グッズ奉納していこうと、
ぼくは思っています。
今回のお話をノーカットでごらんになりたい方は
下の動画でおたのしみください。

郷土愛が分割されていることをお嘆きの
みうらじゅんさんの生んだ
ゆるキャラの名前は
「郷土LOVEちゃん」といいます。
生まれ育ってはいないけど、郷土愛。
このココロを忘れずに
次の県へ参ります。
また来週お会いいたしましょう。
2007-10-21-SUN
みうらじゅんさん&安斎肇さんが
結成した「勝手に観光協会」作の
すばらしい北海道ご当地ソング
「北のそんなこと節」を
どうぞお聞きください。