どうなる幸せな家庭、
どうする幸せな家庭?!

不徹底大討論会議事録。

第6回 その生臭さに、俺は傷つくと思う。


観客 もしもだんなが浮気をしたらどうなりますか?
観客
(既婚)
うちのケースで言うと、
精神的な浮気だったら、そりゃ、
今の時点でもどちらにもあると思うけど。
慶一 ・・・(ものすごい小声で)
・・・浮気にはハッキリ2種類あるんだ・・・。
・・・肉体的だったら、それは・・・。
糸井 (笑)慶一くん、小声でひとりで
ぶつぶつ、何を言ってるんだよ!
観客 (笑)糸井さんだけに聞こえる声で。
リリー そこだけ大人どうしの話になってる(笑)。

でも、精神的な浮気って、
たぶん浮気じゃないと思いますよ。
もし俺にかみさんがいて、
「わたし、もうその人のことしか考えられないの」
って言ってて、セックスしたの?って聞いて
「まだキスもしてない」と言ったとしたら、
セーフ!って思うもん。
糸井 (笑)
リリー そこで「あたし、しましたよ」って言われて、
自分たちもセックスしなくなってるのに
そんなことを言われたとしたら、
もう、傷つく度合いがまるで違うと思う。

なんて言うか・・・
人間の生臭さに傷つく。

その人がどうだっていう前に、
「みんな死ねばいいのに」って思う瞬間ですね。
糸井 リリーさん、それ、
文字にするといい文章になるなぁ。
「その生臭さに傷つく」って、いいなぁ。
リリー もし精神的な浮気っていうのが
あるとすれば、「中で出すこと」だよね。
その人の中で出すぐらい好きだ、っていう。
糸井 (笑)・・・いい文章だねぇ。
観客 (笑)どこが!
ところで、リリーさんのまわりで
いい家庭ってどういうのがありすか?
リリー 見たことないねぇ・・・。
一同 (笑)
糸井 いま聞いてると、
みんなの間でうらやまれてるのって、
どうも、なんかある種の諦観みたいだね。

「諦観を飲みこんだところ」に憧れてない?
喧嘩しあう商店の夫婦っていうのも、
あきらめているところがかっこいいというか。
不完全だけど壊れてないみたいな・・・。
「諦め」の要素を入れないと、納得できないでしょ。

「鳳啓介・京唄子」って聞くと、
ありゃあもう、別れてるんだけど、逆に
「いいなぁ」なんて人は納得するじゃないですか。
諦観がこもらないと、幸せがないんじゃないの?

家庭だけじゃなくて
みんなの人生観がそうかもしれないけど。
だってみんな、
「人生とんとん拍子です」って人を見ると、
なーんかあるぞ、と思いがちでしょ。
逆に「いろいろあった」っていうのを聞くと、
そうだなぁ、と思ってしまうわけだし・・・。
慶一 たださぁ、さっきの
白い家、犬、ホームパーティーの人の
幸せのイメージのノーマルさは・・・
・・・憧れるなぁ・・・。
糸井 あははは(笑)。
リリー 今のって、10回ぐらい
寒いシーンを見た人
の言うセリフだよ・・・。
糸井 そうそう。雪山が見えている男。
リリー 吉川ひなのが結婚する時に
「結婚なんていう、
 こんなかわいい制度があるとしたら、
 しなきゃウソだ」
って言ったのは、いいですよね。
糸井 いいセリフ。
リリー まぁ、かわいいだけじゃだめかしら、
になるんだけど。
糸井 ケーキ、食べてみたら違ったっていう。
慶一 うん。そうだ。
リリー (笑)慶一さん・・・。

女の人って、勢いと運命にのまれることを、
どこかで望んでいるんじゃないでしょうかねぇ。
糸井 「のまれるよろこび」ね。
リリー 運命っていうのは、切りひらくものじゃなくて、
クリント・イーストウッドが言っているように、
「時として運命が感情を持って暴走してくる」
っていう・・・。
糸井 (笑)いい文章!
確かに、向こうから白い馬に乗ったやつが
パカラっ、パカラって来て、
かっさらわれたら、もう静かになっちゃうよね。
・・・慶一くん、馬買えば?
慶一 馬乗ると、タマがいたいんだよ・・・。
乗ったんだけど、1週間痛かった。
糸井 (笑)
観客 凝って口説こうとする人ほど、
別れやすいってともだちと話したんだけど。
糸井 今までのことを考えると、
たしかに、「あ、そうか!」っていって
一緒になったケースって、すぐにダメになるなぁ。
「思い違いだった」っていう時がすぐに来るね。
ひなのみたいに。
慶一 ・・・あのさぁ、
俺みたいに、自分のことを好きすぎるとさぁ、
やっぱり、だめだな。
糸井 (笑)
リリー でも、「自分を好きすぎる慶一さん」を
好きな人があらわれるんじゃないですか?
慶一 そうなんだけど、
でも、その人は
「自分を好きな俺」を好きなわけで、
だんだんと、ねじまがっていくんですよ。
糸井 「自分好き」をまねしたくなるのかなぁ。
慶一くんに好かれたくて、考えをマネしたら、
自分を好きになっちゃったとか。
慶一 (笑)それ、あるかもね。
糸井 乱暴な亭主が好きだ、って言ってるうちに
自分が乱暴になっていくケースはあるよね。
リリー (笑)あぁ、それはありますねぇ。

ぼくは、
夫婦でもともだちどうしでも、
ぜったいいつまでもピースだぜってことは
続かないと思うんですよ。
あらゆる関係には、
絶対にどこかできちんと主従関係があって、
場面場面で逆転してもいいけれども、
その中での関係に過ぎないと思うから。
糸井 そうだよね。
どちらかが主導権を持ってる。
慶一 平等だとまずいよね。
糸井 約束をしすぎちゃう。
リリー なにごとも、決めるのはよくない。
糸井 慶一くんは自分がケーキだから、
ケーキ好きのお母さんタイプがいいのかな?
リリー ケーキっつうことで言うと、
むこうがケーキを先に9個出してくれたら、
こっちも一生懸命になって
あとの1個を作れるじゃないですか。
糸井 女で、慶一くんみたいに
心情的なケーキを出すやつなんて、
いないんじゃないですか?
リリー ・・・いやぁ、俺、もう、
後攻にまわりたいんですよ・・・。
むこうに「してもらって」から、返したいんです。
今までは先攻型でグズグズになってたから。
糸井 (笑)
リリー 9割、俺のために生きてくれたら、
こっちが残りの1割やるから、
まずは見してくんないと・・・。
慶一 ふふふ。


(つづきます)

2002-05-02-THU

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