はたらくことのおもしろさ。 佐々木俊尚×糸井重里 はたらくことのおもしろさ。 佐々木俊尚×糸井重里
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚さんと
糸井重里が「はたらくこと」をテーマに
トークイベントを行いました。
話はさまざまな方向に転がり、
「(よくしゃべったのは)会場の若い人たちが
とても真剣に聞いていたから、
その熱のせいなんじゃないかとも思えました」と、
糸井は翌日の「今日のダーリン」に書きました。
とくに白熱したのは最後の質疑応答の時間で、
会場の方からたくさんの質問が挙がったんです。
その様子もふくめての全7回、
どうぞご覧ください。

※今回の対談は、佐々木俊尚さん、松浦弥太郎さん、
灯台もと暮らし、箱庭が運営する
コミュニティ「SUSONO(すその)」の企画で
おこなわれました。
「SUSONO」については、こちらからどうぞ
3週間無料のクーポンもあるそうですよ。
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1 結局、サボってない。
佐々木
ずいぶん前、「ほぼ日」にうかがって
対談させていただきましたね
糸井
そうですね、前の事務所だったときに。
佐々木
そのときは、どちらかというと、
訊かれる側だったんですけど、
今日は質問する側になれればと思っています。
糸井
ちゃんと答えられるかな(笑)。
佐々木
主に「はたらく」という話を
うかがいたいんですけど、
糸井さんは「はたらきたい」という本を
出されてますよね。
あれを読んでいたら、
糸井さんが小学生のころ就職するのが嫌で、
夜、布団の中で泣いたという話がありまして。
糸井
泣きました。
いまでもはたらくのは好きじゃないです。
佐々木
いまって、いわゆるブラック企業も多いですし、
実際にラクして暮らせるかというと、
なかなかうまくいかないじゃないですか。
今日は糸井さんからそのあたりに関する話を
聞きたくて来ている人がいっぱいいると思います。
糸井
つまり、すごくうまくいっているように
見えているぼくが、この場で
「こういうふうにできるよ」という話ができれば
一番よろこんでもらえるんですよね(笑)。
佐々木
そうですね(笑)。
でも、糸井さんの真似をすれば
うまくいくというのも、
違うなと思っているんです。
経営者による「こうやって成功しました」
という自己啓発本がいっぱい出ていますけど、
あれってほとんど嘘じゃないかなと。
あとから振り返れば、たしかに成功しているんだけど、
本当にその道筋しかなかったのかはわからないし、
偶然でうまくいったケースも多いんじゃないかなと。
糸井
そう思います。
佐々木
ということを考えたら、
もうちょっと普通に生きてはたらいていても、
うまくいくやり方、というのを
見出せればいいなと思うんです。
糸井
「こうやればいい」という、
大当たりを狙う方法を
聞きたい人がいるかもしれないけど、
ぼくは、そのノウハウは持っていないんです。
佐々木
そうですか。
糸井
ぼく個人のことで言えば、
はたらくのが嫌なのに結局はたらいていた、
という結論にしかならないんです。
結局、サボってないですから。
佐々木
糸井さんのこれまでを振り返ると、
80年代から第一線で
コピーライターとして活躍されて、
そこから40年近く経ちますよね。
糸井
そうですね。
来年が、ぼくが
はたらきはじめて50周年なんです。
佐々木
「はたらきはじめて50周年」。
いいですね、金婚式みたい。
一瞬だけバーッと盛り上がって、
バーッと駆け抜けて‥‥という人生はよく聞きますが、
長い期間持続させることって、
一番大変なんじゃないかと思ってます。
糸井さんは持続させることを意識されてきたんですか?
糸井
持続させることが目的ではなかったんですが、
これまでに何度か、
「糸井はもう終わりだ」と言われてきまして。
佐々木
世間から。
糸井
うん。その都度言われていることって、
ちゃんと聞こえてくるんですよ。
雑誌とかで、
インとアウトを分けるような記事があったら、
アウトのほうにぼくの名前が
入っているケースも何回かありまして。
とにかく「終わらせられる場所」にいつもいるんです。
佐々木
でも、終わらないですよね。
糸井
やだな、と思うわけですよ。
悔しい、というよりは、
やだな、という気持ちが、
自分をがんばらせる動機になりましたね。
佐々木
なるほど。
それはやり返すとか、そういう話ではなく。
糸井
違いますね。
目に物見せてやろうということではなく、
おまえが思っているのとは違うぞ、と
肩を叩いて言いたいような気持ち。
佐々木
プライドみたいなものですか?
糸井
一種のプライドだと思います。
それから、自分に自分が
多少期待しているんじゃないですかね。
つまり、そう言われてるけど、
そうじゃないよなと、
自分に言っている感じがします。
佐々木
昔、糸井さんが
「俺のよさは誰にもわからないよ。
俺だって俺のよさはわかってないのに」
とおっしゃっていたのを思い出しました。
糸井
そういう感じは、いまもあります。
佐々木
それはたとえば、根拠がなくてもいいから、
なんらかの誇りとか自負みたいなものを持つことが
必要という話なんでしょうか。
糸井
自信についてはよく質問されるテーマなので、
何度も考えたことがあります。
でも、自信という形ではぼくは持っていなくて、
問題に対して、その都度、
「できるような気がする」という思いを
持っていたと思うんです。
たとえば、ぼくが佐々木さんと対談をするときに、
「できないんじゃないかな」と思ったら、
来られなくなっちゃいますよね。
佐々木
そうですね。
糸井
こういう場でも、
「緊張してます」という言い方で
はじめる人が多いんだけど、
緊張する意味がないと思うんですよ。
なにも特別なことを
しようとしているわけじゃないので、
失敗してもいいわけだし。
そうすると、できるような気がする。
そんな気持ちでぼくはたぶんいろんな仕事に
向かっているんだと思います。
唯一ぼくが緊張するのは、
ユニフォームを着た野球の選手の前だけです。
気持ちが小学生になっちゃうから(笑)。
佐々木
(笑)
緊張する気持ちって、たぶん、
「失敗するんじゃないか」と思うから
生まれるんですよね。
糸井
あるいは、もっとうまくできるんじゃないかと
絶えず思っているとき。
佐々木
ぼくも緊張しないタイプで、
今日も糸井さんと対談をするというので、
夕方から糸井さんのことを
考えながらぼんやりしてました。
自分の中で持っているものと、
糸井さんが持っているものとが組み合わさって、
そこでなんか火がついたらいいなという期待で
わくわくしていて。
それって、ある程度自分に自信がないと
できないことなんでしょうか。
糸井
それは自信というより、
相手からバカにされても
かまわないと思えることだと思います。
自分と相手を比べようとしてるわけじゃなくて、
2人で一緒に登る山の話をしているわけだから。
だけど、会話をするにしても、
考えたことを順番に置いて行くだけの人とか、
引き出しのものを順番に出すだけという人とは、
どれだけ物知りな人であっても、
何かを一緒に探しに行けないんですよ。
佐々木
キャッチボールになってないから。
糸井
そうなんです。
いっそ何も知らない人とぼくとで、
何も知らないテーマについて、
南太平洋の人魚についてでもいいから、
とにかくしゃべり出せば、
何かがはじまりますよね。
(続きます)
2018-06-26-TUE