ドローンが荷物を運ぶアフリカ。

──
鮫島さんのいらっしゃるエチオピアは、
どんなところ、なんでしょうか。
鮫島
そうですね‥‥エチオピアだけじゃなく
アフリカについては、
話したいことがたくさんあるんです。

もう「どんなネタが、お好みですか?」
というくらい(笑)。
──
アフリカには漠然とした興味があって、
雑誌で、アフリカの特集とかやってると、
買って読んでみたりするんですが、
その都度、
ステレオタイプな知識しかなかったなと、
思ったりしてます。
鮫島
アフリカはね、今、アツいですよ。
──
アツいというのは「ホットである」と。
酒井
朝晩は寒いけど。
──
だそうですね、雨季について言えば(笑)。
鮫島
最近よく、
「アフリカは、最後のフロンティアだ」
なんてフレーズを目にしますけど、
今、彼の地は
ものすごい勢いで成長しているんです。
──
そうなんですか。
鮫島
昨年2016年には、
日本が主催し、アフリカ各国の首脳が一堂に会する
「アフリカ開発会議」、
いわゆる「TICAD」が開催されました。
で、その場での主たるテーマとなったのが、
「ビジネス」だったんです。
──
アフリカで、ビジネス?
鮫島
そう、これまで多くの日本人の中には
「アフリカ=援助対象国」であって、
「ビジネスの対象国ではない」
というイメージがあったと思いますが、
国際的な開発会議の場で、
「援助」でなく「ビジネス」について
対等に話し合うようになっているほど、
アフリカの多くの国々はいま、
経済成長してきているんですよ。

ちょうど、ひと昔前のアジアみたいに。
──
今後、いろいろ楽しみな地域であると。
酒井
うん、うん。
──
そんなお話をうかがったあとに
小学生のような発言ですみませんけども、
アフリカと言えば、
まず「デカい」というイメージがあって。
鮫島
そうですよね。
実際アフリカってめちゃくちゃ広いです。
酒井
岩手も大きいけど‥‥比じゃないか。
鮫島
面積が広いだけ、そのぶん多様なんです。

アフリカって、
日本ではひとくくりにされがちですけど、
人種も民族も言葉も文化も、
人の考え方も、
人の態度や物腰なんかも、
国や地域によってまったく違っていて、
それぞれ個性があるんです。
──
そのなかで、エチオピアは‥‥?
鮫島
そうですね、まず「見た目」でいうと、
エチオピアの人々は
「世界でもっとも美しく気高い人々」だとか、
「アフリカで、いちばん美しい民族」だとか、
そんなふうに言われることがあります。
──
美しいというのは、どういう意味で?
鮫島
もう、そのままの意味です。

顔立ちもスタイルも、
際立って、整っている人が多いんです。
──
へぇ‥‥。
鮫島
アフリカとアラブの間に位置することもあり、
両方の血が、絶妙なブレンドで混じり合って、
美しい人々が生まれるんだそうです。

スーパーモデルのリヤ・ケベデさんをはじめ、
世界的に活躍するモデルや
女優さんを、たくさん輩出していますし。
──
人類発祥の地、と呼ばれているのも‥‥。
鮫島
エチオピアです。

わたしも里奈さんも、トランプ大統領も、
アラブの王様も、
ルーツをたどればエチオピア人よ(笑)。
酒井
えー、知らなかった!(笑)
鮫島
それから、首都のアディスアベバの街では、
みんな携帯電話を持ってるんですが、
人々は、その携帯で、現金を一切介さずに、
誰でも、どこでも、
自由にものを売買したりしてるんです。
酒井
え、どうやって?
鮫島
たとえば、道ばたで
里奈さんがアウトドアスプレーを売っていて、
わたしが買いたいと思うとするよね。

そのとき、いちいち財布を出さずに、
わたしの携帯電話から
里奈さんの携帯に
「ピピッ!」とメッセージを送ったら、
わたしのモバイルマネーが
里奈さんの番号に振り込まれて、
里奈さんは、好きなときに
それを使ったり、
お金として引き出したりできるんです。
──
銀行という決済インフラをすっ飛ばして、
携帯同士で、やりとりしてる。
鮫島
ただ、ほんの10年前までは、
携帯はもちろん、
固定電話もまったく普及していなかったし、
銀行口座を持っている人なんて、
いまでも、ほとんどいないんですけどね。
──
それが、突然、みんなが携帯電話を持って、
モバイルマネーで、
送金をしたりするような時代になってると。
酒井
すごーい!
──
日本の進化とは、
ぜんぜん違う発展を遂げているんですね。
鮫島
そうですね。アフリカの発展は
「Leap-frog」と呼ばれてます。
──
リープ・フロッグ‥‥カエルとび?
鮫島
先進国がたどってきような、
段階的な技術や経済の発展とは異なり、
現地のニーズにあった、
最先端の技術をいきなり取り入れて、
一足跳びに発展していくようすが
カエルのジャンプみたいだという意味です。

これまで、さまざまなインフラが
ほとんど整っていなかったからこその、
独自の進化形態です。
──
はー‥‥。
鮫島
もっと、極端な例もありますよ。

たとえば
アフリカのほとんどの地域で、
日本や先進国にあるような住所は
存在しません。
酒井
え、じゃあ、郵便物は?
鮫島
届かない。私書箱でもない限り。

でも最近は、住所なんかなくったって、
ネットさえつながってれば
GPSを使って、
ドローンが荷物を運んでくれるんです。
道路の整備されていない山奥でも、
空からパタパタ‥‥ってね。
──
え。
酒井
すごーい!
鮫島
それは、エチオピアではなくて、
ルワンダの話ですけどね。

ようするに、日本人がアフリカに対して、
ずっと抱いてきたイメージとは、
かなり、違ってきているということです。
──
ほんとですね。
鮫島
ルワンダという国では、ご存知のとおり、
過去におそろしい大虐殺があって、
一晩で人口の20%近くが
殺されてしまったと言われていて、
そのため、ある一定以上の年齢層の人が、
極端に少ないんですね。
──
一晩でそんなに‥‥ですか。
鮫島
年配者がいないから、
自分たちの手で国をつくっていかなければと、
強く思う若い人たちが多いんです。

まだハタチそこそこの若者が
スマホや3Dプリンタなんかを駆使して、
IT会社を次々と立ちあげています。
──
へぇー‥‥。
鮫島
負けてられないですよ。
──
今みたいなお話は、
もう、まったく知りませんでした。

酒井さんは、ご存じでした?
酒井
いいえ、ぜんぜん、知らなかったです。

アフリカの話じたいも、
今まで、そんな聞いたことなかったし。
鮫島
そういえば、話ししてなかったよね。

里奈さんとは、基本、
日本の居酒屋でえんえん飲みながら、
くだをまいてるだけだから(笑)。

<つづきます>

2017-05-19-FRI