お米からつくるエタノール。

──
鮫島さんは、
酒井さんの活動や製品をごらんになって、
どんな感想を持っていますか?
酒井
え! 緊張する!
鮫島
実はわたし、エチオピアで起業する前は、
化粧品のデザインや
マーケティングをやっていたんです。
──
わ、そうなんですか! 

じゃ、酒井さんのやっているお仕事にも、
お詳しいんですね。
鮫島
そうですね‥‥多少は。
酒井
もう、誰もが憧れるような
世界的な有名ブランドにいたんですよ。
鮫島
そのときの経験から言いますと、
人間の鼻って、どんどん慣れて、
より刺激的の強いものを
求めてしまう傾向にあるので、
自然の香りだけでは、
物足りなくなることも多いんですよ。

でも、里奈さんのつくっている商品は、
自然のものなのに、
いつまでも、
本当にいい香りだなあと思えるんです。
──
とげとげしさ、けばけばしさがなくて、
やさしいから、飽きない気がしますね。
鮫島
この乳液の「桃の香り」ひとつにしても、
他から出ている「桃の香り」の商品とは、
ちょっと、感じが違うと思う。

幸せな気持ちになる香り、だと思います。
酒井
いやーん、うれしい~(笑)。
──
はい、酒井さんの「桃」については、
たしかに「桃」なんですけど、
他では、あまり嗅いだことのない桃だ‥‥
という感想を持ちました。
鮫島
一般的な化粧品に添加されているような、
人工的な甘ったるい香りとは別ものです。
──
酒井さん、そのあたりの「ひみつ」って?
酒井
いや、とくにひみつはないんですけど、
うちでは、
発酵したお米の粕を入れてるので‥‥。
──
粕。
酒井
そうです、粕。
お米のエタノールから出てくるんです。
鮫島
それを、有効活用してるんだ。
酒井
うん。ついでに言うと、
ふつうはゴミに出してしまう廃棄物や、
未利用資源も使ってるし、
エタノールを抽出しているお米自体も、
休耕田で栽培したものなんだよ。
──
つまり、ふつうの化粧品とは、
原材料からして、違ってるんですね。

他には、どんな製品があるんですか。
酒井
まずは、かんじんのエタノールですね。
うちの主軸となる商品です。

今後、ウィスキーみたいな
パッケージ・デザインにしようかなと
思ってるんですけど。
──
へぇ、カッコいいエタノール?
酒井
まあ、見た目もそうですが、
何年にどこで採れたエタノールなのかを、
わかるようにしたいんです。
──
なるほど。「何年もの」みたいに。

ちなみに、不勉強で申し訳ないのですが、
エタノールって、
一般的に何にいちばん使われるんですか。
酒井
よくオフィスの入口に置いてありますが、
シュッと手に吹きかけて消毒したり、
中間材としては、
シャンプー、リンス、化粧水、クリーム‥‥
なんかにも入っていますね。

香水とかファブリーズみたいな製品にも、
エタノールが使われています。
──
この瓶詰めのエタノールは、
一般のお客さんに向けた製品ですよね。

どういう用途を想定されてるんですか。
酒井
エッセンシャルオイルを混ぜて、
自分でアロマをつくる人、だったりとか。
鮫島
あ、そういう楽しみ方もあるんだ。
酒井
昔からある「おばあちゃんの知恵」で、
ドクダミを焼酎に浸して、
虫刺されの薬とか
化粧水をつくる方法がありますけど、
焼酎の代わりに、
エタノールを使っていただいたりとか。
鮫島
焼酎でやるのと、何かちがうの?
酒井
焼酎だと風味が出ちゃうけど、
エタノールなら、それがない。
──
ああ、お酒くささがない、と。

そういえば、僕、夏場に
酒井さんのところの虫除けスプレーを
使っていましたけど、
あれもすごくやさしい使い心地でした。
酒井
お米由来のエタノールだから、
そう思ってもらえるんだと思います。
鮫島
きっと「大量生産の工業製品」だと、
ああはならないよね。
酒井
うちのエタノールを成分分析すると、
大吟醸の香りだとか、
バラとかジャスミンの香りなんかが、
検出されるんです。
──
そういうものは入っていないのに?
酒井
はい。まあ、お米で‥‥つまり、
お酒と同じような工程を踏んでますので、
おかしなことではないんですけど、
一般的なエタノールには、
大吟醸の香り成分は、入ってませんから。
──
なるほど、そうか。
酒井
そこで、ブルーベリーとかローズマリー、
キュウリなんかを漬けて、
化粧品の原料をつくったりもしています。

これなんかがそうなんですけど‥‥
カタチが悪くて、
出荷できない果実や野菜を利用してます。
鮫島
え、すごくいい香りね。
酒井
たぶん、ふつうのエタノールに漬けても、
こういうものはできないと思います。
鮫島
エタノールって、ツーンとくるもんね。
──
ツーンとこないんですか。
嗅いでみてもいいですか‥‥はあ、たしかに。
酒井
ツーンとこないでしょう?
──
またもや基本の質問ですみませんけど、
エタノールって、
ふつうは、何からできているんですか。
酒井
サトウキビだとか、トウモロコシです。

それらを発酵させて、蒸留して、
粗いアルコールにして、
大きな機械を通してきれいにしてます。
──
ふぅ~ん‥‥。
酒井
それはそれで、
工業製品として、素晴らしいものです。

たとえば、うちのエタノールは
手術には、使用できません。
米由来の雑味成分が
混じっていたりしますので。
鮫島
そうか。
酒井
ふつうのエタノールが白砂糖だとしたら、
うちのは‥‥。
鮫島
キビ砂糖みたいな?
酒井
うん、南のほうのナントカ島の、
麦わら帽子のおじいちゃんがつくった
キビ砂糖‥‥みたいな感じかな。
──
手触り感があるんですね。
酒井
だから「雑味」はあるんですけど、
そういうエタノールがあってもいいよね、
と開き直ってます。最近は。

<つづきます>

2017-05-17-WED