石川県の伝統工芸を
広く紹介しようとしている方から、
「漆をつかっておもしろいことを
 している人がいる」とお聞きしました。

さっそく、取材にうかがってみたところ、
なるほど、これは、おもしろい。
大量生産品ではなく、かといって芸術でもなく、
まさに「作品」かもしれません。

それでは、加賀の風変わりな漆職人さんと、
その周辺の方々への取材を
どうぞ、お読みください。
今回、作品大賞へ連絡してくださった
(株)マシロの北野道規さん。
おとなりは中尾和美さん。
まずは、石川県のさまざまな伝統工芸を
紹介してくださいました。
迫力! 九谷焼の「デコ盛」と呼ばれる装飾。
過剰な「盛り」ですが、なぜか、今っぽい。
九谷焼の「ボタン」。もちろん普通に使えます。
ブタの絵が描かれていて、かわいい。
いま、北野さんたちが力を入れている「未来工芸表札」。
「未来工芸印鑑」とセットになっています。
加賀の山中塗と九谷焼を融合させた工芸品。
「ほぼ日」の表札も、つくってくださいました!
どうも、ありがとうございますー。
そして、こちらが、今回の目玉です!
ご覧ください、これ、「カボチャの皮」に漆を塗った、
まさに「天然の姿」のままのお皿なんです。
こっちは、ひょうたんの上下をカットし、
漆を塗って、器にしたもの。味わい深い形ですねー。
ひょうたんをつかった楽器「カリンバ」に
漆を塗ったもの。うーん、すごい存在感!
これは? くるみです。漆塗りの、くるみです。
もちろん、本物のくるみに漆を塗ったもの。
くるみをパカッと開けると
なんともかわいらしい容器に。
そして驚いたことに、紙や布にも、
漆を塗ることができるのだそうです。
しかも、紙や布の素材として、
自由に加工できるとか。
型押しした紙に漆を塗ったもの。
そして「漆の冒険」は、まだまだ続きます!
こちらをご覧ください。
なんと、コンバースに漆を!
「彼は、なんにでも漆を塗っちゃうんですよ」
と北野さん。おもしろい人ですねー。
作者を訪ねてみました。
いろんなものに漆を塗っているのはこの方、
山谷漆工房の山谷尚敏さんです。
工房のなかを見渡すと、
いろいろなものに漆が塗られています。
こちらは、つくりものの皿ではありません。
つわぶきの葉っぱに、漆を塗ったもの。
写真ではなかなか伝わりませんが、
とっても不思議な質感なんです。
葉っぱのお皿をひっくり返したところ。
漆がたっぷりと厚く塗られています。
漆を塗って使っているという自分の帽子。
見た目も、触り心地も、革の帽子みたい。
あややが持ってるこれ、なんだかわかります?
あわびです! あわびに高台をつけて、
漆を塗って、お皿にしたもの。
さぁ、応用編。これは、何に漆を塗ったもの?
正解は、何にも塗ってません!
どういうことかというと、これ、
漆だけを何層にも塗り重ね、厚みを出してから
それをくり抜いて容器にしたんだそうです。
こちらも漆だけを塗り重ねたもの。
「堆漆(ついしつ)」と呼ばれる技法です。
この厚みを出すためには何回も何回も
漆を塗って乾かす必要があります。
ここまでの厚みが出るまでには数年かかるとか。
ヘルメットやスニーカーにも漆が!
ヘルメットの仕上げはちょっと蒔絵っぽい。
キャンバス地に漆を塗ったコンバース。
深くて渋い、いい色合いですねー。
漆に顔料を混ぜることによって
いろいろな色の漆にすることができます。
こちらは、漆を塗ったうえに、
金箔を豪勢に散りばめたもの。
なんと、トイレのドアも漆でした!
なんでもありなのか、漆!
パ、パソコンが‥‥漆‥‥。
しかも、自作だ、このPC‥‥。
いろんな意味で、マニアック‥‥。
あ、もちろん、山谷さんが
メインで手がけているのは
まっとうで王道の漆器なんですよ?
伝統工芸の区分でいうと、
山谷さんは、「山中塗」の作家さんです。
そして、この「杯」にご注目。
上はもちろん漆で仕上げられています。
下の方は何でできているかというと‥‥。
下の持ち手の部分は、九谷焼の陶器です。
九谷焼も、加賀を代表する伝統工芸のひとつ。
「作者に会っていきますか?」と
北野さんに案内され‥‥。
九谷焼作家の方にお会いしてきました。
「いまいちばん繊細な絵をつけます」とは
北野さんのコメント。
この方が九谷焼の絵付けをしている池島直人さん。
お父さんが焼いた陶器に絵を付けているそうです。
いくつか作品を紹介します。うわあ、細かい!
一本一本の線は、もちろん手描きです。
線を引いたり塗ったりするだけでなく、
「盛る」のも絵付けのひとつ。繊細。
小さな陶器になんとも豊かな色彩が。
緑、黄色、紫といった色合いが、
伝統的な九谷焼のカラーなんだそうです。
ひとつひとつ、思わず手にとりたくなる。
お父さんの作品をはじめ、
たくさんの陶器を見せていただきました。
どうもありがとうございます。
漆の山谷さん、陶器の池島さん、そして北野さんは、
加賀の伝統工芸を広めるため、
いろんなことを企画されています。
北野さん、山谷さん、池島さん、
このたびはどうもありがとうございました!

最後に、取材中、いろんなところで見かけた
「作品」たちをまとめてどうぞ!


取材協力:未来工芸プロジェクト