糸井さん、ブランドってどう作るんでしょう? "SAISON CHIENOWA"(セゾンチエノワ)チームのみなさん、糸井重里に話を聞きにくる。

ほぼ日刊イトイ新聞

糸井さん、ブランドってどう作るんでしょう? "SAISON CHIENOWA"(セゾンチエノワ)チームのみなさん、糸井重里に話を聞きにくる。

ほぼ日刊イトイ新聞
チエノワチーム 廣田さん 相河さんからほぼ日 糸井重里へ
「ほぼ日」に載るものとしては、
すこし珍しいインタビューを掲載します。
他メディアのかたが
糸井重里に取材に来たときのお話です。
来てくださったのは、クレディセゾンの
新メディア、”セゾンチエノワ”のみなさん。
「おいしい生活。」「不思議、大好き。」など、
かつて西武百貨店の広告を担当していた糸井に、
当時の「セゾン文化」について、
聞きに来られたのでした。
みなさんからの大きな問いは
「これからセゾンは、どんなブランディングを
していくべきだと思いますか?」。
対する糸井の答えは「そこなのかな?」。
懐しい話を交えつつの、未来に向かうお話。
どうぞ、おたのしみください。 

*“セゾンチエノワ”に掲載された内容を、
ほぼ日編集バージョンで、おとどけします。

第6話 人に投資する時代かも? 2016-08-29

第6話 人に投資する時代かも? 2016-08-29

糸井
いま、工場の設備投資に匹敵するくらい、
人間に投資する必要がある時代に
なってるんと思うんです。
「この人はいいな」という人が
じゃんじゃん入ってきてくれるようになったら、
その会社は、稼げるに決まってるんですよ。
チエノワ廣田
ああ、そうですよね。
糸井
だけどやっぱり、そんな会社ってほとんどなくて、
ぱっと思いつくのは、ピクサーとか?
ピクサーは、アニメを作る人たちがみんな
「いつか行けたら」と思っているわけですから。

そして、クレディセゾンも、
すでに良い人が入ってくる会社だとは思います。

ただ、ピクサーの「エクセレント!」な感じには
まだ届いていない。
もしかしたら、そういう部分に対して、
ほんとうに具体的なコストをかけるような芸当が
必要になってくるのかもしれないですね。
チエノワ廣田
そういうことが必要だとは、
なんとなく気づきはじめているのですが、
覚悟はできていないですね。

糸井
難しいですよね。
実際にやるには、そのコストが必要だと
証明しなきゃならないから。
チエノワ廣田
とはいえ、いまがまさに、
そういったチャレンジをする
チャンスだとも思っているんです。
”チエノワ”のチームでメンバーを募集してみたら、
160人もの人が手を挙げたことが、
いま、社内外でとても驚かれていて。
糸井
もしかしたら、その160人をそのまま
「人事」にするといいんじゃない?
新しい人を採るのを、その人たちの仕事にしてしまう。
たぶん失敗もあるけど、きっと面白いですよ。
いままで採らなかったタイプの人を採ったり、
一芸入社みたいなこともできるし。
チエノワ廣田
たしかにそうですね。
”チエノワ”チームは人事制度の見直しも
これから考えていきたいのですが、
さらに「仲間募集」もあるかもしれないですね。
糸井
人をとるのって、難しいんですよね。
ぼくらもたくさんのお金はかけられないから、
そのぶん手間をかけてやってます。
先日は「いい人募集」という
職種を決めない募集をしたんですが、
最終的に、応募してくれた人とみんなで合宿をして、
互いの相性をさぐりました。
時間も手間もずいぶんかかりますけど、
そうやって仲間になってもらうのが、
いまのところ、いちばん効率がいい気がしています。
チエノワ廣田
‥‥突然ですが、このあたりで、
だいぶ時間が終わりに近づいてきたので、
最後に、ほかのメンバーからも、
ぜひ質問させていただけたらと思うのですが。
チエノワ相河
いまのお話にあった「いい人募集」って、
「いい人」をどう見分けるのでしょうか。
騙されたりとかはないのでしょうか。
糸井
そこは、善良で騙されやすい人とかの
「いい人」ではないんです。
社内のメンバーから、入社のあとで
「今回いい人がきたね」と言われるような人に
入ってきてほしい、ということで。
チエノワ相河
あ、なるほど。
糸井
どうして「いい人募集」という
言いかたをしたかというと、
自分たちは人が欲しいけど、
「どういう人」かを言葉にできなかったんです。
だけど、言葉にできなくても、
実際にいい人が入ったらみんな、
「いやあ、いい人が来てくれたね」
とか言うじゃないですか。
そういう人をとりたいと思ったんです。
具体的な言葉で言えなかったから
「いい人募集」なんですね。
それで、合宿のときにゲームとしての
プレゼンテーションをしたりしながら、
相性を探っていったんです。
チエノワ相河” width=
そういうことなんですね。
よくわかりました。
チエノワ栗橋” width=
先ほどの糸井さんのお話で、
"チエノワ"のチームを人事で使うといいのでは、
という言葉がありましたが、
どうしてその「人」という発想が
糸井さんから出て来たのか、もっと聞いてみたいです。
糸井
まずは、その"チエノワ"という
新しい挑戦をしようとしているチームが、
ただの勉強会になるのが、
いちばんいけないと思いました。
勉強会ってつい、勉強なら何でもたのしい
「勉強マニアの会」になりがちですから。

だからもし、160人が、
「考え方としてはもっとこうでしょう」
「君が考えてるのはその程度のことですか」
とかそういう話ばかりをして
「いやあ、今日も勉強になった」とか
毎日言いあうような場所になったら、
それはダメだと思いました。

それで、勉強会にしないためには
目的があるといいと思ったんです。
そして「いい人を取る」というミッションは
あるんじゃないかな、と思いました。
チエノワ栗橋
その目的がたとえば
「なにか商品を企画する」ということも
あると思いますか?
糸井
もちろん、あると思います。
ただ商品開発って、
いいものを出すのがほんとうに難しい。
もちろんいいものができたらすばらしいけど、
ものすごく情けないものが
作られてしまう可能性は、おおいにあります。
商品となると、お客さんは厳しいですから。

そして、まったく商品作りの経験のないチームが
そういうことをしていると
「これまで何だったんだろう」になりかねないので、
そのチームがほんとうに育っていくには、
商品を作るよりも、
「ほかのチームの手が足りないから、
誰かにやってほしい」
という仕事をするのがいいのでは、と思ったんです。

人事って、とにかく手間がかかるんですよ。
そのとき160人もの人が、会社の時間として堂々と、
今度採る5人のために長い時間を使うのは、
「みんなが見ている」「時間も使える」
「新しい考えでやれる」といった
このチームの特性が、すごく役に立つと思いました。

チエノワ栗橋
よく理解できました。ありがとうございます。
‥‥あと、感想になりますが、
糸井さんが最初のほうでおっしゃった
「内臓」という言葉がとても印象に残りました。
わたしはいま、産休を終えて、
仕事に復帰したばかりなのですが、
子どもを産んだらなにか、自分の仕事が
変わるかと思っていたんです。
でも、思った以上に変わりませんでした。
子どもを産んだらもっとキラキラするとか、
もしくは、すごくできなくなったりするかと思ったら、
感覚がまったく前といっしょで。
それで「自分は内臓の部分をちゃんと
使えているだろうか」と思ったんです。
糸井
いや。お母さんになって戻るって、
見えない大変なことがいっぱいあるんですよね。
急な呼び出しもあるし、
保育園で泣いている話を聞いたりもするし、
病気の回数も多いし、
きっと、自分のホルモンの部分も
変わってるに決まってるんですよ。
子どものことでも、仕事のことでも、
絶対に無意識でバランスをとっているわけで。
子どもの世話もしてますし、
たぶん夫についても、子どもが生まれたことで
「夫はこういう人だったのか」と。
そういう新しい問題に直面しますし。
一同
(笑)
糸井
‥‥そういう状況のはずですから、
「案外変わらないんですよね」っていうのは、
きっとあなたの、
いわば自助努力で成り立ってる
「案外変わらなさ」なんですよね。
だから、ほんとにご苦労様です。
大変だよ、お母さん。
チエノワ栗橋
いやいやいや。
ありがとうございます。
チエノワ廣田
このプロジェクトに関わっている方たち、
どんどん赤ちゃんが生まれてくるんですよ。
もちろんお子さんが生まれてから
このチームに入る方もいるんですけど。
プロジェクトをメインで担当されている方たちが、
どんどんお母さんになっていっていて。
糸井
それは会社として伸び盛りなんでしょうね。
そういうことを心おきなく
できてるっていう状態になったという。
チエノワ廣田
ありがとうございます。
今日はとても勉強になりました。
僕自身、いろいろなことを、
難しく考えすぎていた気がしました。

糸井
いえ、立場的に当然、
どうビジネスにするかも考えるわけだし、
難しいですよね。
チエノワ廣田
ですが、すごく勇気を貰いました。
今日、いろんなヒントを貰えたと思います。
一同
ありがとうございました。
糸井
こちらこそ、ありがとうございました。

(こちらでおしまいです。
お読みいただき、ありがとうございました)