ザッハトルテ家族ザッハトルテ家族2015

身内を中心に、ごくごく一部で好評をいただいている
ザッハトルテの「試食会」レポート。
ことしも、やらせていただきます!

試食会は毎回、「とある家庭のお茶の間にて」
という設定で行われます。
つまり、お芝居仕立て。
しかしながら、登場するのはずぶのしろうと。
ハードルを、ググーッとさげてお読みください。

主な出演者は「ほぼ日」乗組員。この面々です。

‥‥そう。
毎年読んでくださっている方はお気づきでしょう。
ことしは出演者がひとりすくないのです。
ただでさえ不安定なしろうと芝居なのに‥‥。
だ、大丈夫なのでしょうか??
ハードルを、もーっとさげて、お読みください。

現場監督は山下、写真係はモギでお届けします。

山下 小学校なら最終学年。
ついに6年目になりました。
モギ 誰がこんなに続くと思ったでしょうか。
山下 いずれにしても、続いているのはおめでたい。
ことしもよろしくお願いいたします。
一同 よろしくお願いしまーーす。
山下 毎度おなじみの顔ぶれで‥‥
と言いたいところですが、今回はちがいますね。
モギ ひとりすくない顔ぶれです。
とりあえずご紹介しましょう。
「ザッハトルテ家族」、その配役は‥‥
山下 田口さんがお父さん役で、
おのちゃんがお母さん役。
モギ わかたちゃんが長女を演じます。
山下 前回までは
外山ちゃんが次女を演じてましたが、
次女は恋人と暮らすために
この家を出て行ってしまったのです。
モギ ‥‥というストーリーでした。
もちろんフィクションです。
なにがなにやらちんぷんかんぷんの方は、
「ザッハトルテ家族2014」をお読みください。
山下 そして今回も
最初に申し上げておくべきでしょう。
このコーナーは完全な「オマケ」です。
わかた オマケ!
モギ 「ザッハトルテ」を購入するにあたって、
重要な情報は、ここにはほぼございません。
ならば、なんのために、これをやるのか?
山下 ケーキが届いたときのワクワク感や、
お届けする側のうれしさなど、
この販売を通してうまれる「きもち」の部分を
不器用でもいいから、
みなさんへお伝えするために、やるのです。
田口 それってある意味、
めっちゃ重要なポイントじゃないですか!
山下 ‥‥田口さん、ことしも同じリアクションを
ありがとうございます。

そう! 重要なポイントです。
ですから、こころを込めてやりましょう。
いいですか?
ぼくらには、こころしかないんです。
演技力はゼロです。なんなら、マイナスです。
だからせめて、精一杯のまごころを!
誠心誠意、この茶番劇をやりきりましょう。
一同 はい!
モギ ‥‥ことしは武者震いしますね。
山下 そうでしょうとも。
前回と同じストーリーではありませんから。
新作の茶番劇。初演です。
おの 初演‥‥。
山下 大丈夫。リラックスしてください。
お話の流れは、さっき説明しましたよね。
一同 はい。
山下 では、はじめましょう。
マイナスからの茶番劇。
オープニングはいつものシーンです。
「お父さんが茶の間で新聞を読んでいる。
 子どもはマンガを読んでいる。
 そこへお母さんがやってくる」
もろもろよろしければ、いきまーす。
田口 けっきょく、ぶっつけ本番‥‥。
山下 モギさんは
じゃんじゃん写真を撮ってください。
モギ 了解(カメラを構える)。
山下 よおーい‥‥スタァーーーート!!
田口 新聞っていうのはいいものだな。
なぜなら、新しいことが書いてあるから。
田口 ‥‥お前はまたマンガを読んでいるのかい?
わかた うん。
田口 どんなマンガなんだい?
わかた 恋愛マンガよ。
田口 ‥‥れ、恋愛?!
まさか好きな人ができたんじゃ?!
わかた お父さん‥‥。
田口 お前もまりこのように家を出ていくのか。
おの ちょっと、お父さん、よしてください。
マンガを読んでるだけでしょう。
それよりほら、みかんですよ。
田口 ああ‥‥母さん。
すまない。つい取り乱してしまった。
‥‥そうだな、りっぱなみかんだ。
おの はい、いいみかんですよ。
田口 ああ、いいみかんだ‥‥。
だが‥‥やっぱり母さん‥‥
ひとりすくないっていうのは、
さみしいものだな‥‥。
おの ‥‥そうですね。
わかた まりこ、元気かなぁ‥‥。
田口 母さん、最近まりこから連絡は?
おの (首を横にふる)あまり。
田口 そうか‥‥
連絡がないのは幸せってことなのかな。
わかた うん‥‥。
おの ‥‥‥‥‥‥。
田口 ‥‥‥‥‥‥。
わかた ‥‥‥‥‥‥。
山下 ピンポーン。
田口さーーん、宅配便でーす。
田口 あ、はーーい。
山下 こちら、お届けものです(荷物を渡す)。
田口 (受け取る)ご苦労さまです。
山下 ‥‥(ひそひそ声で)
「なんやろう? この荷物はなんやろう?」
と言ってください。
田口 なんやろう? この荷物はなんやろう?
山下 (ひそひそ声で)いいですか、ここからですよ。
お互いがんばりましょう。

まず、「んんん??」という表情をする。
田口 んんん?? これは、ザッハトルテや‥‥。
山下 (ひそひそ声で)
おれ、ことしはネットで注文してないやん。
田口 おれ、ことしはネットで注文してないやん!
家族3人でザッハトルテ1個は多いから、
もう、注文するのをやめたやん。
‥‥だれか、注文したの?
わかた (首を横にふる)
おの (首を横にふる)
田口 そんなわけで、
すみませんが何かのまちがいだと思います。
山下 ‥‥ハンコください。
田口 いや、だから注文してないんですって。
受け取れないので、持ち帰ってください。
山下 困ります。
配達するのが私の仕事ですから。
田口 あのね‥‥。
いいですか。注文を、していないんです。
山下 ハンコください。
田口 ‥‥なんだろうこの人は。
宅配便なのにピザ屋さんみたいな
ヘルメットかぶってるし。
田口 とにかくね、これを受け取るわけには、
山下 ハンコください。
田口 ‥‥‥‥。
山下 ‥‥‥‥。
おの お父さん、わたしいいことを思いついたわ。
そのザッハトルテ、
わたしたちが返しに行きましょう。
田口 ‥‥え??
おの ヘルメットの人は持ち帰ってくれそうにないし、
それに、わたしいつか、
「シュヴェステルンハウス」に行きたかったの。
わかた 「シュヴェステルンハウス」!
ザッハトルテをつくっているお店ね。
おの そう、「シュヴェステルンハウス」へ!
わかた 「シュヴェステルンハウス」へ!
おの 行きましょ。前橋までドライブだと思って。
田口 ドライブって、母さん、
そんなことを急に言われても・・・・・・・・・
 
山下 いやぁーーーーー、いいお天気っ!
まさにドライブ日和ですね!!
田口 ‥‥なんであなたも乗ってるんですか。
前橋からバイクで来たんでしょう?
山下 電車で来ました。
田口 電車で? ヘルメットかぶって?
山下 はい。
田口 今もおかしいですよ、車の中でヘルメットって。
「ラリー」じゃないんだから。
山下 はははは! どうぞおかまいなく!
わかた お母さん、たのしいね!
おの そうね。
こうして家族でお出かけするのは久しぶりだわ。
山下 あ、お父さん、SA!
サービスエリアです!
入りましょう、入っちゃってください!
田口 (車を停めて背伸び)
ああ‥‥きもちいいなぁ。
山下 ここで10分の休憩にしまーす。
各自トイレとかを済ませて10分後に集合ー。
田口 あの人、なんで仕切ってるんだろう‥‥。
山下 これこれ、SAではこういうのを食べないとね。
一本ください。
山下 ん‥ん‥うまいうまい。
(もりもり食べる)
山下 (10分後車に戻ってくる)
サービスエリアはサイコーですね。
さあ、再び出発進行ーー!
わかたろうちゃん、「柿の種」食べる?
わかた あ、ありがとうございます。
田口 わかたろうちゃんって‥‥。
なぜ、うちの娘のあだなを知ってるんですか。
山下 え‥‥? こまかいことはいいじゃないですか。
ドライブをたのしみましょうよ。
‥‥でも、あっれぇ?
なんか、車、進まなくないですか??
わかた 渋滞みたいです。
山下 ええーー。
かんべんしてよぉ、渋滞。
えええええーーー。
田口 ‥‥ひとんちの車に乗って、
グズグズ言わないでください。
山下 寝ようっと。
 ──── 約1時間経過 ────
山下 ‥‥ふぁ〜‥‥居眠りしてたら前橋に。
わかた 「シュヴェステルンハウス」は、もうすぐ?
山下 もうすぐだよ。
ほら、そこを曲がって、そうそう、ここ!
はい、到着。
車はお店の前に停めてくださーい。
‥‥降りましょー(降りる)。
じゃーん。
ここが「シュヴェステルンハウス」です!
わかた わあー、インターネットで見たお店!
おの ねえ。すてき。
山下 さ、中に入りましょう。どうぞ遠慮なく。
田口 ‥‥お店の方は?
山下 いま留守ですね。買い物かな。
さ、座ってください。
田口 いいんですかね、留守中、勝手に。
山下 いいのいいの、気にしないで。
山下 そうだ、わかたろうちゃん、
おなかすいてるでしょ。
わかた え?
山下 ラーメン作ってあげる。
ちょっと待ってて(キッチンに移動)。
♪お鍋で〜 お湯を〜 沸かします〜
 おいしい〜 チャルメラ〜 つくるから〜♪
山下 ♪そうだ 卵も入れちゃおう〜
 たしか冷蔵庫に ‥‥ありましたー!
山下 ♪できたよ できた〜♪
山下 よいしょ(ラーメンを運ぶ)。
はい、おまたせ。卵入りだ。
わかた ‥‥ありがとうございます(食べる)。
山下 おいしい?
わかた はい。
山下 よしっ!(ガッツポーズ)
わかたろうちゃんが、よろこんだ。
まりこちゃんにも食べさせたかったなぁ。
ま、みなさん、くつろいでってください。
ただいまー。‥‥あらら?!
山下 か、金井さん! そして紀子さん!
山下 きょうは帰りが遅くなるはずではなかったですか。
金井さん それがね、用事が早く済んだから帰ってきたの。
紀子さん 菊池さんこそ、どうしたの?
山下 それがその‥‥。
わかた 「きくちさん」っていうのね。
おの そういえば名前を聞いてなかったわ。
山下 すみません! 留守中に勝手なことを。
金井さん いいんですよ、
菊池さんを信用してるから鍵を預けてるんです。
自分の家のように使ってくれていいの。
山下 ありがとうございます‥‥。
紀子さん こちらのご家族は?
菊池さんのお友だち?
田口 はじめまして。田口と申します。
金井さんと紀子さんのことは
インターネットのスライドショーで
拝見していました。
金井さん あらまあ(笑)。
田口 ザッハトルテを作っている方ですよね。
紀子さん じゃあ、お客様?
わかた はい! 毎年ザッハトルテを食べてます!
金井さん それはそれは。ありがとうございます。
で? 今日はなぜこちらに?
田口 実はですね‥‥
かくかくしかじか、かくかくしかじかで、
ここにお邪魔しているというわけです。
金井さん そうだったの。
菊池さんといっしょに、わざわざ。
紀子さん 菊池さん、いい人でしょ。
ちょっと変わってるけど(笑)。
金井さん 菊池さんはね‥‥いろいろあったの。
くわしいことは、まぁ言いませんけど、
とにかくいろいろあって、
「一からやり直したい」って。
紀子さん それで、数年前からここを手伝ってもらってるの。
金井さん 東京方面に持っていけるだけのケーキを
配達してもらってるのよ。
電車で運ぶから効率はすごく悪い(笑)。
紀子さん でも、受け取る人の笑顔を見るのが
最高にうれしいんですって。
だから効率は悪くても。ね?
山下 はい。やらせてもらってます。
金井さん とはいえ、
ご注文いただいてないのに配達したのは、
たしかにこちらのまちがいだわ。
ちょっと、伝票を確認してきますね。
山下 待ってください、金井さん。
まちがいではないんです。
金井 ‥‥どういうことかしら?
山下 田口さんへお届けするザッハトルテは、
私が注文して、私が料金を支払いました。
田口 え?
わかた え?
おの え?
山下 つまり‥‥私からのプレゼントです。
田口 ‥‥見ず知らずのあなたが、なぜプレゼントを?
ていうか、それなら最初に言ってくださいよ。
山下 照れくさくて‥‥。
金井 (笑)まちがいじゃなかったのね。
山下 はい!
紀子さん じゃあ、そのザッハトルテは、
田口さんのおうちに行かないとね!
山下 はいっ! もちろんです!!
──── 5分後 ────
金井 帰り道、気をつけてね!
紀子さん またいつでも遊びにきてねー!
田口 はい。ありがとうございました!
お邪魔しましたー。

‥‥で、
なんでまた菊池さんが乗ってるんですか。
山下 これを配達するのが、私の仕事ですから。
さあ、東京へレッツゴー!
わかた イエーイ!
──── 1時間後、SA駐車場 ────
山下 ‥‥‥‥ずいぶん、太陽が傾いてきました。
田口 ‥‥そうですね。
田口 ‥‥うかがってもいいですか。
なぜ、
私たちにケーキをくださったんです?
山下 ‥‥‥‥毎年、
私は毎年、見ていました。
田口家にケーキを届けてハンコをもらったあと、
窓のそとから、中の様子を。
‥‥みんなでじゃんけんをして、箱を開けて、
おいしい顔を順番にして‥‥。
それを見るのが大好きでした。
山下 ところが去年、次女のまりこさんが
恋をして家を出て行ってしまった。
そしたらことし、注文がなかった‥‥。
田口 なんだか‥‥火が消えたようでね‥‥。
山下 ‥‥私にも、娘がふたりいます。
さくらと、かえでという名前です。
ほら、ここに。
山下 ヘルメットは、娘ふたりからのプレゼントです。
「配達のお仕事がんばってね」って。
「またみんなで一緒に暮らそうね」って。
田口 菊池さん‥‥。
山下 あのケーキは、私の勝手な願いなんです。
田口さんのご家族には明るくいてほしかった。
だから‥‥
おの やった。できたわ。
すみません、ちょっと見ていただけますか。
山下 なにをです?
おの みかんアートです。
おの トス。
山下 トス‥‥?
おの バレーボールの、トス。
田口 母さん‥‥それ、あとにしようか。
いま大事な話をしてるから。ね。
おの はい。
田口 ‥‥菊池さんのお気持ち、わかりました。
ありがとうございます。
そうですね‥‥
私は贅沢を言っていたのかもしれません。
田口 幸せの中にいるはずなのに、
ついつい昔のことを思い出してしまうんです。
いつのまにかすっかりお年ごろになっていた、
わたしの娘‥‥。
田口 パパと一緒じゃないと眠れないと
泣いていたあの夜。
はじめて自転車に乗れた、あの日の夕方。
おててつないで帰り道‥‥。
わかた できた! お父さん見て!
田口 なんだい?
わかた ネコとボール。
田口 ‥‥‥‥。
わかた ネコがね、ボールで遊んでいるところ。
山下 ‥‥すばらしい!(笑)
すばらしいよ、わかたろうちゃん!!
よーし、ごほうびに菊池さんが、
ソフトクリームを買ったげよう。
そして、
それを食べたら、みんなでおうちに帰ろう。
あの、あたたかいおうちへ帰ろう!
──── 約1時間経過 ────
田口 ただいまー。
わかた たのしかったー。
おの こらこら、靴をちゃんとそろえなさい(笑)。
山下 ‥‥田口さん‥‥お届け物です。
ハンコをください。
田口 ご苦労さまです。
たしかに、受け取りました(ハンコをおす)。
‥‥そしてどうぞ、お上がりください。
山下 いや! いやいやいや!
それはダメです!
私は外から見せていただければそれで!
田口 菊池さん。
覗き見されるのは困るんです(笑)。
だから、さあ。
山下 ‥‥そうですか。
では、お言葉に甘えて‥‥。
田口 よーし、いっしょにやりましょう。
山下 いっしょにって、まさか‥‥。
田口 その、まさかですよ!(笑)
山下 「本気じゃんけん」だ!
田口 そう。
届けられたザッハトルテは
箱を開けるのがいちばんたのしい。
その最高の役を、田口家では、
台本なしの本気じゃんけんで決めます。
山下 いつも覗き見していた、あのじゃんけんに
私もまぜてもらえる‥‥。
田口 がんばってくださいよぉ。
毎年ここでミラクルが起きます。
話題の中心になった人が強いんです。
山下 わ、わかりました、私、がんばります。
ありがとうございます、
ありがとうございます!!
田口 さぁいしょは、グーー!
一同 じゃーんけーん、ぽんっ!
一同 ‥‥おあーーーーー!!(笑)
※ことしも明るく盛り上がる田口家。
 じゃんけんの結果が気になりますが、
 ここまででたいへんな行数を費やしてしまいました。
 じゃんけん→箱開け→ケーキカット→おいしい顔
 というおなじみの流れにつきましては、
 ことしはスライドショーでおたのしみください。
 それでは、
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モギ はい、チーズ。
山下 終了‥‥。お疲れ様でした。
一同 お疲れ様でしたー!
モギ どうなるかと思ったけど‥‥
山下 やりきった。
「菊池さんがザッハトルテを電車で配達する」
という設定にかなり無理があったけれど、
とにかく最後までやりきりました。
モギちゃん、気配を消しての撮影、お疲れ様。
モギ いえいえ、それよりなにより、
前橋の「シュヴェステルンハウス」、
金井さんと紀子さんに大感謝です。
山下 ほんとに。
わけのわからない茶番劇に
お付き合いいただきました。
モギ ありがとうございました!
山下 できそこないのロードムービーのような
珍妙なお話になりましたが、
ことしもお伝えしたいことは同じです。
「ひとつのケーキで、うれしくたのしく」
モギ それが伝わることを祈りつつ、
おひらきにしましょう。
わかた また来年〜〜〜!
山下 は、どうしよう‥‥??

▲「シュヴェステルンハウス」のみなさんと。
 今回のお話も、すべてフィクションです。
 「シュヴェステルンハウス」は菊池さんを雇っていませんし、
 配送はしかるべきプロによって行われています。念のため。
ザッハトルテ家族2015は、これにて終了。
みなさんも、ケーキの到着で、
「うれしく」「おいしく」なりますように!

とじる