おいしい店とのつきあい方。
七冊目

036  食いしん坊的 外食産業との付き合い方。 その1
きほんの話にもどります。

食いしん坊の一家でした。
おいしいものが好きな一家でもあった。
ただ、自分がおいしいと思うものばかり食べていては
世界が小さくなってしまう。
だから自分が苦手と思うものでも、
おいしく食べる工夫をしようね‥‥、
と、それがサカキ家の家訓のようでもありました。

他人の好き嫌いに敬意を払う。
他人の食べ方に関心を持つ。
食べ慣れぬものを食べてビックリしたときも、
一旦、その味を受け入れるだけの
寛容な食欲を持てれば立派な食いしん坊。
食べることだけじゃなく、人やコト、
モノとの付き合い方も食いしん坊的であれば
母と一緒に食事をすると、
しみじみそんなことを思って感謝する。
そしてちょっと反省しました。

この連載をはじめたきっかけ。
それは、外食産業とお客様という
ふたつの異なる立場をつなぐ
お手伝いができないかしら‥‥、と思ったコト。
だから外食産業の仕組みや裏側、
そこで働く人たちの気持ちを多く伝えてきました。
ところが最近。
外食産業のことをほとんど書かなくなった。
理由はどんどん外食産業のことが
好きじゃなくなってしまったから。

食べることは好きなんです。
おいしいお店の話は好き。
けれど、産業としての飲食店が
どんどん嫌いになってしまって、
それで考えることもやめてしまっておりました。
でも、好き嫌いを超えて相手のことを考えるということが、
母から教わったボクの生き方だと思い、
それで再び「今の外食産業」のことを考え、
その外食産業との付き合い方をお伝えしようと思った次第。


先日、オキニイリのレストランに
久しぶりに行ったときのコトです。

人が減ってるなぁ‥‥、って思いました。

お客様ではない、働く人。
SNSでかなり人気が出てきてて、
かつてに比べてお客様の数は多くて店はにぎやか。
だからなおさら、お店の人が少なくなったなぁって思った。

とはいえサービスは的確。
料理も納得のいくもので、
人気が出るのも当然のコトと感心しながら食事をしてた。

平日のランチでした。
だからワインまでは‥‥、
と思ってガス水を飲んでいました。
けれどおいしい料理はワインをねだる。
午後にこれと言った予定があったわけでもなくて、
ガス水をグラスワインに変えてもらおうと思ったのです。
グラスワインには必要十分な
ニュージーランドの白がリストにあったのが
気になっていもしました‥‥、それで。


この連載を参照するなら、ここで手をあげたり
お店の人の名前を呼んで呼び止めるのは無粋な行為。
優秀なサービススタッフなら、小首をかしげて
ニコッとしながらガス水の入ったグラスを指差すだけで、
そのお替りかあるいはグラスの中の飲み物を
変えたい合図に違いないと近づいてくる。

‥‥、はずでした。

けれどお店は忙しい。
人手のたりぬスタッフたちは、
お客様の方を観察する余裕もなくて
厨房と客席の間を料理を運んで行ったり来たり。
結局、手を小さく上げて
サービススタッフを呼ぶことになった。
呼ばれたサービススタッフは頭を下げながら
「お待たせして申し訳ございません」と近づいてくる。
ボクはこの「申し訳ありません」という言葉を
飲食店で聞くのが嫌い。
嫌いな言葉をボクの行動で言わせてしまうのは
この上もなく哀しいことで、
なんだか切ない気持ちになった。

昔はボタンひとつで
サービススタッフが飛んでくるような店が
好きじゃなかった。
なるべく使わぬようにと心がけていたけれど、
今ではそういうお店も当たり前になった。
そういう工夫でもしなければ
お店をやっていけないほどに人手不足が深刻な今。
人手不足でサービスが行き届かないからこそ、
サービスをスマートにしてもらえる
ふるまい方を真剣に考えなくちゃいけないのだなぁ‥‥、
としみじみ思った訳であります。

さて来週。
オーダーバイキングは一体何モノ‥‥、
って話をちょっといたしましょう。

2018-07-12-THU

サカキシンイチロウさんの本

書籍
『おいしい店とのつきあい方』

とっておきの店の常連になって
メニューにはない味を楽しむ。
これぞ、コドモには教えたくない
大人の贅沢!
そんなおいしい店との素敵な関係を
つくる秘密を、こっそり、
でも、丁寧にお教えします。
くわしくはこちらのページからどうぞ。

書籍
『おいしい店とのつきあい方 実践編』

懐石料理で持ち上げていいお皿と
そうでないお皿の違いは?
手でつまむお寿司屋さんで
箸を割るタイミングは?
などなど。お店にもっと大事にされる
お客さんになるコツを
こっそりお教えします。
くわしくはこちらのページからどうぞ。