おいしい店とのつきあい方。

124 ごきげんな食いしん坊。その18サンドイッチの無数の選択肢。

たまごサンドイッチが、
一番好きなサンドイッチかというとそうじゃない。
一番好きなサンドイッチは、ハムとチーズのサンドイッチ。
なのにこれからたまごサンドの話をしましょう‥‥、
と思った理由をちょっと説明。

小さな頃から沢山サンドイッチを作ってきました。
特にここ10年間ほどは、毎週末。
朝ごはんにはサンドイッチを作って
食べるコトを習慣にしてきたから、1年約50週、
10年間とすると500個は
確実にサンドイッチを作った勘定になりますか。
週末の朝食以外にも夜食だったり、
イベントや仕事の差し入れに
サンドイッチを作ったりもしたから、
自分でも一体、いくつ作ったんだろう‥‥、
ってわからないほど。

何度作っても、不思議なことに飽きないのです。

沢山つくるということは、
沢山食べたということでもあるのだけれど、
食べ飽きることもまるでない。
ただ、何度も作り続けると、
同じようなサンドイッチばかりを作ってしまいがちで、
だからこんなモノを挟んでもいいんだろうか‥‥、
っていうようなものも試して挟む。
自分で作って自分で食べる料理。
しかも手軽に作れるものだから、
失敗覚悟でいろいろ試しました。

スモークサーモンのサンドイッチがあるんだから、
マグロの赤身(刺身)も
サンドイッチになるんじゃないか‥‥、
と思って挟むと、やっぱり鮭とマグロは
別物なんだと愕然としたり、
でもそのマグロの赤身を漬けにして
わさびマヨネーズと一緒にライブレッドで挟むと
これがおいしかったりする発見。
鰻の蒲焼きはマスタードとルッコラとの
相性がいいということがわかったり、
香港風の叉焼は何と組み合わせて
サンドイッチにしても
結局、肉まんみたいな味になるとか‥‥。

同じサンドイッチは二度と作るものかって、
試行錯誤をしばらく繰り返すも、
二年ほどでそれにも飽きる。
新しいサンドイッチを発見することもたのしいけれど、
それ以上にたのしいのは
「いつものサンドイッチをよりおいしく食べる工夫」
をすることなんだと、気がついたのが5年ほど前。
サンドイッチとはナニモノなのか?
ということにやっと気づいた。
それからどんどん、
サンドイッチ作りがたのしくなった‥‥、というワケです。

サンドイッチは

[1]パン
[2]メインの具材
[3]副素材
[4]調味料

で出来上がる。
それぞれ無数の選択肢があります。

パンと言っても食パンがありバゲットがあり。
食パンの中にもきめが細かくしっとりしたものから、
生地が粗くて乾いて焼きあがったモノとさまざま。
調味料も多様で、ボクは一時期、
味噌や豆板醤にまで手を伸ばしてた。
メインや副素材に至っては
そのバリエーションは多様で、多彩。
それらを自由に組み合わせていくと
無限に料理の種類は増える。
それはそれでたのしいことなのだけれど、
地図を持たずにサンドイッチという森の中を
さまよい歩くようなコトになる。
自分の好きなサンドイッチって、
一体どういうモノか見つけることもむつかしくなる。

それでボクはまず「メインの具材」を
いくつかに決めることにしたのです。
一番好きな具材はハム。
それをいろんなパンで挟んでみる。
ハムのムッチリとした食感と塩の風味と
脂の旨みを受け止めるには、
どっしりとしたきめ細やかな食パンがよい。
けれどパンがどっしりしすぎると、
主役であるはずのハムよりパンが主張する。
だから薄切り。
できれば12枚切りくらいに薄く切り分ける。
マヨネーズだけでは酸味が強すぎて、
だからバターをまぜて使うと、
ハムそのものの動物っぽい旨みが引き立つ。

副素材は、その選び方で
劇的にサンドイッチの印象が変わる選びがいある食材。
キュウリは青くみずみずしい。
レタスはシャキシャキ、歯ごたえにぎやかで
芯の部分はほんのり甘い。
やわらかすぎぬ、かたいトマトを選べば
それはあたかもソースのように口の中でふるまう。
どれもおいしい。
おいしいのだけれど、
野菜は存在感がとても強くてメインの具材のハムの対極。
口の中での一体感に欠けるのですね。
だからボクにとって最高のハムのお供はチーズ。
ハムとチーズが口の中でとろけて混じりあうおいしさは、
なんとも格別。
旨みに酸味、ほのかな甘みに渋みと、
おいしい料理に必要なほとんどすべての味がふくまれ、
ただ唯一、苦味と歯ごたえ、歯ざわりが少々弱い。
それもパンをトーストすれば、
焦げたパンの苦味とザクザク歯切れる歯ざわりで、
すべてが揃う。
ボクにとって、ハムとチーズのサンドイッチが
一番好きなサンドイッチであるのはそういう理由。

ただ好きなサンドイッチを作ってたのしいかというと
そうじゃないのがなやましいところ。
その点、作ってたのしいサンドイッチはたまごサンド。
だから、たまごサンドを話題にしようと思ったわけです。
大好きなのに作っていてたのしくはないハムサンドの、
たのしくないという理由を来週。
ついでに、なんでたまごサンド作りはたのしいのかも
あわせてお話しいたしましょう。

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グルメ本でもあり、ビジネス本でもある
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2017-08-10-THU