おいしい店とのつきあい方。

084 お店の情報とのつきあい方。 その10
サイトには書かれていない情報、それは‥‥?

飲食店を評価するための口コミサイト。
そこで手にすることができない情報の中で、
本来、一番関心をもたなきゃいけないであろうモノが、
そこで働いているスタッフの数。
スタッフ一人が何人のお客様を担当するのかというコトは、
そのお店のサービスに対する考え方を表す大切な指標。

ファミリーレストランが全盛の時代。
サービススタッフ1人が担当できるテーブル数は
一般的に4テーブルから5テーブル。
1テーブルあたり4人座ったとして
20人弱のサービスを担当できる。
100席くらいありましたら、
5名スタッフがいてくれるとなんとかなった。

一方の厨房の中には、「焼く人」「揚げる人」
「食材の下準備をしてサラダのようなものを作る人」
「お皿を洗う人」に「調理長」と
5人働いてはじめてお店が機能する。
大きなお店の厨房、
あるいは、上等なお店の厨房は
分業で出来上がっていて、
なぜかというとそれぞれ料理を作るための
調理器具とエリアが分かれているからなんです。

サービス側に最低5名。
厨房側にまた5名。
それで100名のお客様をもてなすとすれば、
お客様10名に対してスタッフ1人というのが
最低ライン‥‥、ということになりますか。

カウンターだけの、例えば寿司や天ぷらの店で、
料理を作りながら提供もするお店の場合で
ひとり7名をもてなすのがせいぜいと言われますから、
客席数÷スタッフの人図=7~10というのが
「よきサービス指標」になる‥‥、とボクは思うのですネ。

とは言え、飲食店で働きたいという人が
減っているのが今の日本のさみしい実情。
だから、スタッフ1人でひとりでも多くのお客様を
もてなせるよう、いろんな工夫をお店はします。

商品の種類をしぼりこめば厨房スタッフの数が減る。
ステーキ専門とか、揚げ物専門とか、
調理場所をしぼりこめばより一層、
厨房スタッフの数は減る。
ビールよりもワインを売り物にして、
ボトルを1本抜いてもらえば、
飲み物のお代わりをねだられるコトもなく、
サービススタッフをそれで減らせる。
ついでに、サービススタッフを呼ぶことができる
ピンポンってなるマシンをテーブルに置いておけば、
かなりの人員が節約できる。

つまり、最近流行りの「ワイン肉バル・ピンポン付き」は、
少ない人数で売上を作るビジネスモデル‥‥、
だったりするのです。

レストランの評価サイトに「ピンポンマシン」が
置かれているかどうかがわかる項目があればいいのに‥‥、
って熱烈思ったりする今日このごろ。

レストランで働く人に関するコトがらは、
お店のウェブサイトや評価サイトで書かれることが
案外少ない。
評価サイトで書き込みがありがちなのは、
サービスが良かった、悪かったという「印象」がほとんど。
印象というのは人それぞれで、だからボクは
「あぁ、こういうふうに感じる人もいるんだなぁ‥‥」
と、参考程度にしか見ぬことにしています。
一方、「ランチのピークなのに、
従業員が一人しかいなかった」‥‥、
というような印象ではなく
「事実」は厳粛に受け止める。
そして、ランチにいくなら
ピークを外していかなくちゃ‥‥、
と、良いサービスを受けるための対策を
たてるヒントにする。
事実を批判するのは簡単だけど、
それではなにも生まれない。
前向きにたのしむためのヒントとして事実を使う。
不機嫌なお客様にならなくてすむ、
情報との付き合い方‥‥、
なんじゃないかと思うのですネ。

比較的少ない人に関する情報の中で、シェフの経歴。
これは案外、見つかりやすい。
どういうキャリアをもっているのか。
働いてきたお店のコトや、
例えばイタリアに何年間も修行にいった。
うちの料理は「だからおいしい」「安心できる」と
説得力をもたせるために、経歴を書く調理人は結構多い。

その経歴を正しく読み解くことができると、
そのお店の今だけでなく未来がわかる。
今、どんなに人気があって繁盛していても
5年後、あるいは10年後。
その繁盛が継続しているかどうかはわからない。
わからないけど、
「人気が長続きするかもしれない条件」を
備えているかどうかは
シェフの経歴を見ればなんとなくぼんやりわかる。
なぜかと言えば、ボクはシェフのために
お店を作ってさしあげるというコトを
30年以上も続けてきました。
だからわかること。
あぁ、この経歴の人は
しぶとく何年間も繁盛させることができるだろう。
いやいや、この人はあっという間に
人気を消耗してしまうかも‥‥、
と、経歴書を見て推察できるようになった。
100%というわけじゃなく、けれどかなりの確率で。

さて来週のおたのしみ。

サカキシンイチロウさん
書き下ろしの書籍が刊行されました

『博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか
半径1時間30分のビジネスモデル』

発行年月:2015.12
出版社:ぴあ
サイズ:19cm/205p
ISBN:978-4-8356-2869-1
著者:サカキシンイチロウ
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「世界中のうまいものが東京には集まっているのに、
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福岡一のソウルフードでありながら、
なぜか全国的には無名であり、
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「うどん平」「因幡うどん」などを食べ歩き、
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博多うどんの素晴らしさ、
東京出店をせずに福岡にとどまる理由、
そして、これまでの1000店以上の新規開店を
手がけてきた知識を総動員して
博多うどん東京進出シミュレーションを敢行!
その結末とは?
グルメ本でもあり、ビジネス本でもある
一冊となりました。

2016-11-03-THU