056 どこでも一緒? その1
全国共通になっていく「食」。

日本全国。
どの町のロードサイドも、同じ景色になったと言われます。
マクドナルドにすかいらーく。
吉野家だったり、すき家だったりと
街道沿いの目立つ場所には
原色系の目立つ大きな看板が立つ。
夜になると、トップリ暗い畑の真ん中に
一際明るい場所があり、何かと思って近づくと
チェーンのステーキハウスや焼肉店があったりもする。
スターバックスなんて、
ドライブスルー付きの同じ形の箱型店舗を
これでもか‥‥、って作っているし、
コメダ珈琲店だってそこらじゅうにある。

同じ看板。
同じ形のお店を作るのは、お客様への安心と、
働く人の作業を標準化するのにいいんだと、
チェーンストアの理論を作った人たちが、
もう40年近くも前に決めた法則が、
日本中のロードサイドを同じ景色にしたのです。



物販の世界ではずっと前から、
日本のどこに行っても同じ‥‥、が
当たり前になっていました。
たくさん仕入れることができる人たちが、当然、
誰よりも安く売ることができる人たち。
だからそういう大きな会社が、どんどん市場をとっていく。
衣料品の店も雑貨の店も、
日本全国どこにいってもほとんど同じ。

地域性が品揃えを左右すると言われる
食品を中心に扱うスーパーマーケットに限っては、
ずっと地域ブランドががんばっていた。
けれどそれもナショナルチェーン(*)の
系列化が進んでしまって、お店に入ると景色は同じ。
ボクの実家のある香川県の
地元ローカルチェーンのスーパーも、
ナショナルチェーンの傘下に入った途端、
魚の売り場が赤くなった。
マグロのような遠海魚が中心の
品揃えになっちゃったんですね。
すぐ目の前の瀬戸内海には、
そこならではのおいしい魚がたくさん泳いでいるのに、
遠くから運ばれてきた魚が並ぶ。
当然、半分くらいは凍っていたりするのです。

(*)ナショナルチェーン 全国規模で、いろいろな地域に
チェーン店を広げる企業のこと。外食産業や小売業に多い。

ショッピングセンターなんて代物は、
まさにその代表的な装置のひとつで、
しかもたちの悪いことに
保証金と家賃をどっさり払える
余裕のある会社しか出店できない。
利用するお客様のシアワセだったりニーズだったりが
入り込む余地のないテナント選びの先にあるのは、
どこにでもあるお店がズラリと顔を並べる不思議な景色。



その点、町中。
例えば駅前だったらアーケード商店街の中には
まだその地方ならではのお店があった。
古くから、その地に根ざした商売を続けてきた人たちが、
チェーンストアを跳ね返してた。
そういうお店は強いです。
土地や建物をもっていることが多いから、
家賃を払う必要がない。
しっかり作られたお店を、
丁寧にメンテナンスし続けていれば
古くからあるお店が現役。
設備投資を新たにする必要もないから、
借金もほとんどなかったりするのです。

そういう商売はとっても強い。
特に飲食店でそういう環境にある店というのは、
なかなか潰れることがない。
食というのは、地域地域に
「好みの味」や「好みの料理」があるのです。
だからなかなか全国共通にはなっていかない。
マクドナルドとかすかいらーくというのは、
とてもめずらしい例のひとつで、
なぜ彼らが成功したかというと
もともと、ハンバーガーもハンバーグも
日本になかった料理だったから。
日本にないというコトは、
それを食べて育った人がいないということ。
だから日本中、どこでも同じ味で
商売することができたのですネ。
他の料理。
特に日本料理とか中国料理とか、
昔から日本にあった料理は
なかなかどこでも同じにはなっていかない。
だから郊外の景色が日本共通になっていって、
街の景色は多彩で独特‥‥、だったのです。

けれど最近、その町や駅前までもが
どんどん、どこに行っても同じになっていく。
理由はいくつかありましょう。
町中という場所が、
車生活にとって不便な場所になってしまった。
だから商売を辞める人がふえてきて、
やめたあとにチェーンストアが入っていく。
あるいは商売をやっている人たちの老齢化。
そこから引き起こされる、
事業継承の問題もあるのでしょう。



多彩で豊かであることが、
日本の食のすばらしいところだったはず。
なのにそれが今、壊れようとしていることが悩ましく、
けれどそのかたわらで
いまも元気でガンバっている地方の食があったりもする。
そのコトを、これから考え、話していこうと思います。

まず「チェーン店って
なんでみんな同じ形になっちゃうの?」って、
そんなコトからお話ししましょう。
また来週。


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2016-04-21-THU



     
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