それからというもの、
時差をともなう長距離移動の後に
食事をとる場所を選ぶテーマを、
ボクは次の通りに決めました。

エキサイティングで、
寝ることを許さぬたのしいお店。

格好はいいけれど座り心地の悪い椅子。
お腹の中から頭のてっぺんまで、
したたか揺すって突き抜ける今のはやりのBGM。
ざわめくおしゃべり。
ファッショナブルな装いに身を包んだお洒落な人達。

寝ようにも眠れぬほどの刺激に満ちた、
今、人気のレストランを紹介してくれませんか?
と、ホテルのコンシエルジュにお願いすれば
かならず一軒。
今この瞬間の街の空気、
雰囲気が溢れかえるレストランを教えてくれる。
「お料理やサービスに過度な期待をされませぬなら、
 ご要望に添えるお店かと存じます」
そういいながら手渡された住所をたよりにでかけると、
たしかに寝てる場合じゃないほどエキサイティングで、
たのしい場所で、
とはいえ二度、訪れる価値があるかというと
決してそんなワケじゃない。
だから毎回。
その街を訪れるたびに、
新しい「今一番」のレストランを求めて次から次へと。
ちょうどクラブ遊びが上手なボクの友人のように、
次へと次へと。

レストランにはいろんな役割があるのですネ。
人のココロを癒してくれるレストランもあれば、
とびきりの元気をくれるレストランもある。
そのときどきにふさわしいレストランを
選ぶコトができればシアワセ 。




あまりにたのしくて、エキサイティングで
逆に目がすっかり冴えてしまって、
どうにもこうにも眠れないようなときもあったりします。
そんなとき。
ボクは、明日の朝に食べるモノのコトを思い浮かべながら
ベッドの中でボンヤリすることにしています。

いつも行ってるあそこのお店で、
ベーグルサンドイッチを作ってもらおう。
ポピーシードのベーグルにしようか、
それともブルーベリーのベーグルかなぁ‥‥。
スモークサーモン。
今の季節は、脂の乗ったノバスコシアの
むっちりとしたハラミの切り身。
ディルを多めに、
クリームチーズはローファットので
カロリーバランスをとってやろうか。
今年出荷がはじまったばかりの
オレンジの出来はどうなんだろう?
あぁ、明日の朝が待ち遠しい。
オレンジジュースで目をさまし、
スモークサーモンとトーステッドベーグルでむかえる
シアワセな朝のコトをあれこれ考えているうちに、
なんだかお腹が一杯になった気持ちになって、
気づけば眠りに入ってる。
羊の数を数えるよりも、とてもすんなり、気持ちよく。

旅先でなくても、
たとえば明日のコトが不安でどうにも眠れないとき。
気になるコトがあって、
眠りがなかなかやってこないとき。
ボクは、明日の朝に食べるモノのコトを思い浮かべながら
ベッドの中でボンヤリすることにしています。
例えばサンドイッチにするならば、
パンをトーストしようかそれともそのまま使おうか。
たしか、冷蔵庫の中に
ロースハムとベーコンがあったはず。
どちらを使おう。
ベーコンだったら、
タマゴはフライドエッグにすれば
BLTのようになるよな。
タマゴを黄身までよく焼いて、
ケチャップ使って甘みと酸味を足してやろう‥‥、とか。
いっそ、あそこのお店のとびきりのサンドイッチを
食べにいこか、なんてあれこれ。
おいしい悩みは、正しく処方された睡眠導入剤のごとき
ステキな役目を果たしてくれる。

注意しなくちゃいけないのが、そのおいしい悩みを
「どこで食べようか?」ってところにまで広げないコト。
選択肢が広がりすぎて、収拾つかなくなってしまう。
「どこで食べよう?」って、そのことばかり考えてると
どんどん人は不安になります。
けれど何か食べたいものを思い浮かべて、
それを「どうやって食べようか?」って考えてると、
気持ちはどんどんたのしくなってく。
たのしい気持ちに誘われた、
眠りの中で出会う夢はステキな夢に違いない‥‥、
って思いませんか?
だから眠れないとき、明日の朝のメニューをひとつ。
その食べ方をあれやこれやと考えて、
たのしく疲れはてて寝ましょう‥‥、オススメです。

ぐっすり寝たあと、
ほらお腹の中で目覚まし時計がなりはじめます。
空腹を目覚まし時計がわりにしたシアワセな朝。
さて、朝ごはんを食べましょう。




2010-11-11-THU
 
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN