おいしい店とのつきあい方。
サカキシンイチロウの秘密のノート。
(四冊目のノート)
12月にレストランに行くと、
12月ならではのいろんなご挨拶がたのしく出来ます。

今年もたくさんおいしいモノをいただきました。
どうもありがとう。

感謝の気持ちをまとめて伝える、良い機会でしょう。

それはそうと、今年、
どこかステキなお店にいかれました‥‥?

そんな情報交換をするのにもよい時期です。
ボクは毎年、12月になると
今年で一番、思い出に残ったお店を
リストアップすることにしています。
今年一年の自分の楽しかった記憶を残しておくために。
同時に、この時期、
おいしいモノに興味を持っている人や、
あるいはおいしいモノを食べさせてくれる人たちとの
情報交換の種として、今年一年を振り返ってみる。
それそのものが楽しいコトでありますし‥‥。

たとえばこんな具合のリストです。

今年、オープンしたばかりのお店で、
ココロに残ったレストラン。
今年、久しぶりに行ってみて、
すばらしいと再確認することができたレストラン。
今年、一番、感激したお料理を
食べさせてくれたレストラン。
今年であった、一番すてきな笑顔の
サービススタッフのいるお店。

毎年一度、こんな具合に
自分の頭の中にあるレストランを整理してみる。
ステキなことです。
で、先ほどの質問と一緒に、
自分がとてもステキだと思ったお店の名前と、
その理由を簡単にお店の人に言ってみます。

するとこんな答えが返ってくる。

そうなんですか‥‥、
行ってみたいと思っていた店なんですよね。
やっぱりステキなレストランなんですネ。
是非、行かなくちゃ。
ところで、こういうお店にいかれましたか?
ワタシにとって、
今年一番のお気に入りレストランなんです。
もしまだでしたら、是非、どうぞ。
なんでしたら、ワタシから
ご予約のお電話してさしあげましょうか‥‥、
もしよろしければ。


ステキなことです。
レストランのプロのとっておきを、
自分のとっておきにすることができるなんて、
とてもステキなことですよね。
みんなが今年一年のことを振り返りたくて
仕方ない時期であればこその、情報交換。
人間関係を作るためのちょっとした一工夫でありましょう。

ついでにこんなことも聞いてみます。

年末年始はお休みになるんですか‥‥?

年末は30日まで営業させていただきます。
そのかわり、お正月はユックリ
お休みを頂戴しようと思っているんですヨ。
もしよろしければ、年末年始のご案内状、
お送りさせていただきましょうか?

ええ、いいですとも、お願いします。
そういいながら、名刺を出す。
お店の人に手渡した、あなたの名刺の中身は確実に、
そのレストランのお客様リストに
キチンと丁寧に記入され、
来年一年、大切に保管されているに違いない。
大切なお客様としてのあなたの名前が、
こうして見事に更新されるのでありますね。

ステキなお客様であり続けるための、
ちょっとした工夫です。

今年一年で、一番ココロに残ったレストラン。

この一言。
ボクはまだ懇意にさせてもらっていない、
でも大切にしたいレストランで
ボクのことを覚えてもらうための、
最終兵器としてこの時期、使わせてもらうことがある。
‥‥、秘密ですヨ。
こんな具合に‥‥。

良いレストランは、確実に思い出の中に残ります。
特に、よく似たお店に訪れるたび、
どうしてもそのステキだったお店のことを思い出し、
そこと比べてしまったりする。
確かにその店は、あとからあとから、
思い出すたび、ああ、いいレストランだったなぁ‥‥、
ってなんだか恋しくなるような気持ちになってくる。
もう一度、行かなくちゃ‥‥、
と思ってはいたのだけれど、
でもなかなかそうした機会に恵まれることがなくて、
それでほったらかしにしておいた。

そんなレストラン。


12月というレストランが一番、
華やかな空気に包まれるこの時期を選んで、
ボクは再び、そのレストランに
恋をするつもりで出かけます。
その恋する気持ちが裏切られることなく、
確かに期待通りに
すばらしいレストランであったとしたら、
ボクは迷わずこう言います。

今日はこのお店にこれてよかったです。
ボクにとって、今年一番のレストランはどこだろう‥‥、
って一生懸命考えて、やっぱりココじゃないかなぁ‥‥、
と思ってそれでやってきたんです。
ほんとに良かった。
来年も、よろしくお願いいたします。

ああ、恥ずかしい。
でも、ステキなレストランを
もっとステキに楽しむために、
このくらいのテクニックを使うコト。
許してくれるに違いない。
そもそもレストランという場所は、
日常生活にほんの少々の芝居じみた非日常を
プラスすることで出来上がっている空間です。
だから、お客様であるボクたちが、
多少、きざな台詞をはくことだって許される。
事実、こうしてボクはすばらしいレストランの笑顔が
ステキで気の効く支配人の名刺をいくつも頂戴した。
当然、その支配人の名刺入れには、
ボクの名刺がストンと入り、
数週間後のお正月には、
そのレストランからの年賀状がポストに落ちる。

とてもステキな
「あけまして、おめでとうございます」
ということになるのであります。
うれしいことに。
 
2006-12-28-THU