「ほぼ日公式ラーメン」を
作ったぞー。

今度のコラボレーションは日清食品と、だよ。

第二回 クリエイティブの試練。

■まず、ミーティングからはじまる。

さて、日清食品の方々がお帰りになった後、
「ほぼ日ラーメンの担当」として、
早速サガコ、ROCK西本の両名が任命されました。
(ちなみに二人とも、とんこつ育ちの九州組ですばい)

担当といっても、やるかやらないのかさえ決まってない。
『ほぼ日オフィシャルラーメン』と言いたくなるような、
魅力のあるラーメンを思いついて、
これをあらためて日清食品に提案して、
そこがスタートラインになるわけです。
「まずは、のびのびラーメンのことを考えてみて」と、
darlingは気楽に言ったけれど、
のびのびしろといわれても、かなり硬かったと思います。
う〜む、これはサガコとROCK西本の2名だけでは、
手に余る、大大大難問だぞ〜。

とにかく、この最初の出会いについて報告することと、
みんなの「ノリ」を見てみたい。
ほぼ日でいちばんおおげさな
「全員ミーティング」を招集して、
とにかく話をしてみようということに。


■人に訊く前に、自分は何がほしいんだよ?

みんなは、あんのじょうノリノリでした。
「『がんばれ自炊くん!』とか連載しているけど、
 そこにある考え方と矛盾しないかい」
という意見が、まずは話し合われました。

「だって、現実に、どっちの食事もしてるじゃない?
 忙しい時にもスローフードで押し通すって人も、
 世の中にはいると思うけど、
 わたしたちの場合は、両方を使いわけてるよね」
「ほぼ日のキッチンには、絶対買い置きがあるもんね」
「食べるばっかりで、買いに行かない人がいます」
「ぼ、ぼくのことですか?」

「カップラーメンが世の中から無くなったら、
 どえらいことになると思う」
「どえらいこととまで言わなくても、
 えらいことくらいにはなるね」
「ハラ減ると、仕事止まるしねぇ」

「だいたい、『ほぼ日公式ラーメン』なんて、
 実際、コトバだけでもうれしいじゃん」
「じゃん、って言うのか、九州でも」
「あ・・・言わないです。横浜ぶったつもりでした」
「横浜ぶる必要はない」

「前にさ、Yahoo!のお菓子がコンビニにあったんだよ。
 それが、おいしくないんだけど、うらやましかったなぁ。
 インターネットのサイトから全国的な商品がでるなんて、
 いつか『ほぼ日』もできたらいいなぁって思った」
「そのお菓子、食べたよね」
「うん、もうなくなってたけどね」

そんな会話がメモに残っていました。
みんなとにかくやりたくてしょうがないみたいです。
もちろん、サガコはもっとやりたい気持ちでした。
でも、darlingは、
「やらない可能性を、きちんと半分持っていろ!」と、
かなりコワイ顔をして言っていました。
やらないかもしれないのかぁ・・・イヤだなぁ。
なんとかやりたいなぁ。
でも、つくりたいもの、食べたいものが思いつかなかったら
せっかくの日清食品さんからの提案に対して、
「残念ですが、今回は見送らせてください」と、
言わなくてはいけないことになるらしいです。
それが、「ほぼ日」のコラボレーションの
絶対に守るべき基本姿勢だと、
コワイ顔モードのdarlingに、何度も言われました。

アイディア、出るのか?
担当者って、アイディア出すのが仕事だろ?
こわいよ〜〜。

「やっぱり、読者に訊いてみるのが一番なんじゃない?」
という声がやっぱり出ました。
これまでも「ほぼ日」は読者の皆さんに助けられつつ、
よいしょよいしょと歩いてきたのだから、
今回もやっぱり、最初の一手として
アンケートをとろうじゃないかー、と。

■darling、沈黙を連れてくる!

アンケートだ、アンケートだと
盛り上がるスタッフ達を、
それまで静かに見守っていたdarlingが、
ここでふとつぶやきました。
「今までと同じでいいのかなぁ?とは思わない?」
むむ?
ご機嫌ムードだったスタッフの空気が、
一瞬ピタリと止まります。
darlingは続けて言いました。

「今回のラーメンは、共同開発、だよね。
 これは今までの自前のグッズとは違うよ。
 だって、ラーメンの企画なら、日清食品は、
 いくらでも出してきているプロだぜ。
 それなのに、新しいコラボレーションしたいって提案だ。
 つまりは、いままでになかったほどのアイディアが、
 ほぼ日のクリエイティブの能力が試されてるんだよ。
 そういうチームだと思われて期待されてるんだぜ。
 その期待に対して、まずみんなに訊いてみようなんてさ。
 読者の皆さん、いい考えを!なんて、
 情けねぇなぁ・・・」

私たちは、黙り込んでしまいました。

読者に訊いてみるってこと自体は悪くないと思うんです。
でも、それは、こちらに提案するべき
アイディアの核があって、それを確かめたり
ブラッシュアップするときに、とる方法だと言われました。
そういえば、「ほぼ日」で、
さて皆さん、次はどんな商品をつくりましょうか?
なんて投げかけたことはありませんでした。
ヒントになるような何かが、ふいに飛び込んでくることは
あったかもしれないけれど、
「次は、どんなふうに驚かせよう」とか、
「こんどは、これだぜ、すごいだろ」とかいう、
先を走る者の見栄みたいなものがあったんです。
サガコは、このチームに加わる前に、
その姿勢をうらやましがって憧れて見ていたはずでした。

今までの「ほぼ日」グッズを振り返れば、
そのほとんどの場合が、読者との密接なやりとりで
つくってきました。
でも、核とか軸になる「これがやりたいんだけど」という
提案の部分は、自分たちのなかから生まれた動機でした。

よく考えてみたら、今回のラーメンに関しても、
最初の最初に口火を切ってくれたのは
日清食品さんだったけれど、わたしたちの提案部分が、
まったくできてない状態で、読者を頼るっていうのは、
たしかに、「想像力がサボってる」(darling)。
カップラーメンを、つくることになる
なんて思ってなかったから、いままで個々の商品を
「うまい」「まずい」「あのCMが好き」なんていう、
無責任な批評をしていればよかったんだけど、
こんどは、こういうものが欲しい、と、
日清食品に向かって言わなきゃいけないし、
新しいお客さんたちに向かっては、
「いいでしょ?」と言えなきゃだめなんでした。

でも、やってみたい。頑張ってみたい。
怖いけど、でも、なんかわきわき。
わきわきっていうのは、「わくわく」と「どきどき」の
混じった気持ちだということですが、
どきどき成分の高いわきわきでした。

……しかしながら、この時の私たちはまだ、
読者に訊いてみないではじめるってことが、
どれほど大変なことか、なんて、
全く予想できていませんでした。
「やるぜ!」と意気込んでおきながら、
とんでもない地獄に入り込んでいくことになりました。
いまだから、笑って言えるんですけれどね。

そのお話は、また次回でございます。

2001-11-15-THU

BACk
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