Hobo Nikkan Itoi Shinbun 社長に学べ! おとなの勉強は終わらない。vol.6  株式会社パソナ社長 南部靖之×糸井重里


第1回 わかっている人がいた!

  僕が南部さんとお会いしたいと思ったのは、
農業の話をしていたときでした。
世のなかには、夢やビジョンを語る人は
いっぱいいるんですが、南部さんが
「パートでもいいじゃないか」という発想で
人を農業に送り込む話を聞いて、
「ちゃんと実現できる話をしてる人がいるぞ!」
と衝撃を受けたんです。
 
農業だけでなく、どの分野でも
そうなんですけどね。
  できないこと言ったって
しょうがないんです。
 
そうそうそうそう。
  「ああ、それならちゃんとできるな、すごいな」
という話を、パソナのスタッフの方から
つづいて聞いたんです。
「それ、だれが考えたの?」
「社長です」
「うわー、会いたいな!」
と思いましてね。
そして、パソナが本社の地下に作った
あの農場を拝見しました。
 

註:
パソナ本社のある、東京・大手町のビルの地下には、
PASONA O2(パソナオーツー)という名の
畑があります。
太陽光の届かない地下で植物栽培を行なう
新しい都市空間就農支援施設です。

あそこは屋内で地下だから、
畑の太陽はすべて人工灯がやります。
温度調節や防菌も必要だから
僕らのいるオフィスよりも
坪単価かかってる(笑)。
24時間冷暖房完備の畑ですよ。
  地下の畑にかかわっているスタッフの方は
小学生用の漫画雑誌かなんかで勉強したりして、
何から何までかまわずに、
いっしょうけんめいやっていますよね?
 
よくご存知ですね(笑)。
  みんな、ゼロからやってる。
なまじプロみたいな人はいない。
どうやら社長が
「人の動きが重要だ」
とおっしゃっているらしい。
「なんてわかってる人なんだ!」
と思って、南部さんの本を読みはじめました。
 
ありがとうございます。
  「ホラ吹くより実際に動け」と
言っている人がこの世にいるんだ、って
ほんとうに驚いたんですよ。
 
批判や非難は誰でも言います。
例えば「行政が悪い」とか、
「天下りはよくない」とかね。
それはほんとうに
誰にでもできることなんです。

実際に行動するからこそ
そこにひそむ問題もわかるし、
逆に、かかわっている人たちの
よさもわかります。
実行して体験してはじめて
ものを言えるんです。
ですから僕は、
体験する前に批判と非難を言うことだけは
やめとこうと思ってます。
  なるほど。  
僕は行動規範を
「迷ったらやる」
ということにしているんです。
  迷うことはあるんですか?  
迷いっぱなしですよ。
昼飯でも「どれしようかな、どうしようかな」と
いっつも迷います。
「これやると金かかるしな」
「地下2階で農場なんか作って
 失敗したら何億円も飛ぶな」とか。
  心の奥は
やっぱりヒヤヒヤしてるんですね。
 
どちらかというと
ヒヤヒヤはしないですよ。
やるかやるまいかを迷って、
やると決めたらあとはもう、
目の前は確約された未来の姿を
自分で想像しちゃって(笑)。
  はははは。  
地下の畑のことも、やると決めたとたん
「となると、ここに6つの部屋がいるな」
「あれをあそこに置いて、真ん中をこうしよう」
と、どんどん考えちゃうわけです。
「完璧な冷暖房完備にしよう!」
「京都の盆地の温度の状況を作ろう!」
とかね。

失敗はまったく頭にない。
やるかやらないか、考えるだけ。
まわりは「えー」と思ってるかもしれないけど、
やると決めた瞬間に、
頭はその中に入り込んじゃってます。
  どなたか
ブレーキ役の人はいらっしゃるんですか。
「それはあんまりです」とか、
ツッコミ入れる人は?
 
僕、まずは迷うから、
ものすごい「どうする、どうする」と
みんなに訊くんですよ。
その段階でみんなの意見を訊く。
そうして考えて、最後まで迷ったら
もう、やっちゃうわけ。
(明日につづきます!)
2006-09-05-TUE
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