ポカスカジャンの脱線マガジン。

ツアー日記

8月25日(木)

いよいよやって来てしまった。
俺の実家、佐世保でのLIVEの日。
うれしいのと、恥ずかしいのと、逃げ出したい気持ちが、
俺の中でロケットスタートしてK点を越えた瞬間に
トリプルアクセルをしながらバナナシュートで
マウントを取られたような……。
他人には絶対わからない感情が込み上げてきている。

いつものように午後4時に会場入りをして
セッティングをすませる。
今日の会場はオランダ人のケースさん夫妻が経営する
ライブハウス・アドベンチャー。
オランダのBar風(と、ケースさんが言ってた)の
おしゃれなつくりのライブハウスだ。

お客さんも、ハウステンボスが近いということもあり、
ハウステンボスのオランダ人スタッフ(バンドマンやら
大道芸人さんやら)が多いということだ。
店の奥の方には居住スペースがあり、
かわいい犬2匹が僕らを迎えてくれた。

今日はココを楽屋として使わせていただく。
すべての用意をすませ楽屋で待機をしていたときに、
大久保がなにやら騒ぎだした。

「ない! 俺のドスコイパンツがない!」

ドスコイパンツというのは“ラブ・ユー・両国”という
曲で使う、小道具の黒いビキニパンツのことだ。
これをはいた上に、簡単なマワシのようなものをまいて
力士の扮装をするのだ。

メンバー全員で大久保のドスコイパンツを探す。
大久保の話によると、置いておいたら
犬がにおいをクンクンしていたので、
犬が持っていったのかもしれないと言っている。

「あったー! これじゃないの?」
スタッフの新井氏が声を上げた。
ドスコイパンツはあった。
だが、どう考えても、犬が届きそうな所じゃないし、
しかもキレイに折り畳んである。
これは絶対、犬の仕業ではない。

俺達は推理しはじめた。
結果はこうだ。
セッティングを済ませた僕らは食事に出かけた。
その間に残っていたのは、たしかマスターの
ケースさん。そのケースさんが楽屋に何かの用で
入ってきたときに、ふと黒くてしわくちゃの布きれを
見つけたのだ。

「ワ〜〜〜〜オ! コレハ、マイワイフノパンティーね。
 ohー、イタズラワンチャンネ〜〜」
 
というような独り言があったあとに、
キレイに折り畳んで犬が届かない所へ
置いたのではないかというものだ。

まあ、何はともあれドスコイパンツも見つかったし、
LIVEもスタートできる……。

「あっ!」

……忘れていた。LIVEだ!
LIVEをやんなきゃ、なのだ!!!

心の準備もできないままに、無情にも本番の幕は開いた。
客席には両親、おじいちゃん、おばあちゃん、
いとこ、高校時代の友人、
おまけに昔好きだった女の子までいる。
ヒザが笑っている。
俺の心臓が巨大化していく。
何も聞こえなくなり、目の前が真っ白になっていく……。

LIVEは終わった。
何も覚えていない。
でも終わったことにはかわりはない。
ハ〜〜、ヨカッタ〜〜〜、終わったー。
ヨーシ、飲むぞ〜〜〜〜!!!

かくして我々の脱線ツアーは続く。

(PSJ/中山省吾)

1999-08-31-TUE

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