詩 人 と T シ ャ ツ 。
ボ ー ズ 、谷 川 さ ん ち に 行 く 。

第8回「なんであろうとTシャツになりますよね」



谷川 これはね、アメリカ製なんだけどね、
Tシャツなんだけど、雑誌なんですよ。

ボーズ 雑誌?
谷川 詩とか、いろんなものが書いてあるの。
それでね、アメリカではこれは、
印刷物の一種として扱ってくれるから、
郵便物扱いで郵送できたりするんです。
ボーズ へぇー。
谷川 で、日本ではね、
やっぱりそういうふうには
扱ってくれないみたいだけれど。
ボーズ アメリカでは雑誌扱いなんですね。
おもしろいなー。
谷川 内容としては日本の現代詩特集で。
それで、僕の詩も
このTシャツのどこかにあるんですけど。

ボーズ あっ、ここですね。
谷川 あ、これ、これ、僕の詩なんですけどね。
ボーズ へぇー。
谷川 だから、Tシャツってもう
メディアにできるんですよね。
ボーズ そうですねー。これはあれですか、
イベントとかで作ったものなんですか?
谷川 ううん、じゃなくて、これは、
定期刊行物っていうか(笑)。
ボーズ あ、そうなんだ!
続いて出てるもんなんですね。
谷川 なんか、でも、4号ぐらいで
潰れちゃったみたいなんですけど(笑)。
ボーズ さすがに無理があったのかな(笑)。
あと、これ、
着てる人が読めないっていう
パラドックスがありますね。
谷川 そうそう、それがおかしい(笑)。
ボーズ でも、これが雑誌だとしても、
べつにそう言われなければ、
かわいいプリントのTシャツっていうことで
ふつうに着られるわけだし。
谷川 そうそうそう。
「ちょっと変わったプリントだね」ってね。
アメリカでは、こういう漢字なんかが
デザインとしてよろこばれるし。
ボーズ うん、とくにいま、そうですよね。
あ、そっちにも漢字のTシャツがありますね。

谷川 あ、これは中国で買ってきたんだけど、
漢字がすごいきれいなんで。
しかもバックプリントだったから、
気に入って買ったんですけどね。
ボーズ これは、なんて書いてあるんですかね?

谷川 よくわかんないけど、
「語」とか「話」とか「読」とかあったから
なんか詩に関係があるんじゃないかと思って、
それで買ったんですよ。
中国語で何て読むのか知らないんだけど。
ボーズ なんか、ふつうにアメリカで
作られてそうな感じですね。
いま、漢字のものとか多いから。
逆に、日本だと、日本語のTシャツって
まだまだ少ないですよね。
谷川 あんまりないですよね。
ボーズ カタカナもなかなかないし。
逆に、アメリカのアーティストなんかは、
カタカナ使ったTシャツ作って、
それがけっこうカッコよかったりして。
谷川 あー、なるほどね。
ボーズ なんか、日本人って、やっぱり、
日本語をデザインするの苦手なんですよね。
谷川 そうそうそう、そうなの。
こっちは、日本で買ったTシャツ。
わりと最近、九州で買ったんだけど。

ボーズ あ、かわいい。これはかわいいですね。
谷川 かわいいでしょう?
すごくきれいで、
しかも有機的な木綿だったから
つい買ったんですけど、よく見ると、
線がこまかーい文字でできてて、
簡単なメッセージになってるんですよ。

ボーズ へぇー。かわいいなあ。
谷川 こっちも日本で買ったやつですね。
西田幾多郎っていう偉い哲学者がいて、
西田幾多郎記念館っていうところで
売ってたんですよ。書いてあるのは、
西田幾多郎先生の書なんですけど、
これぜんぶ「無」っていう字なんだ。

ボーズ はー、すごいですね。
谷川 すごいでしょ?
無を背負って歩いてる、っていう(笑)。
これもけっこう好きなんですけどね。
哲学者ですらTシャツになるってのが
なんか、おもしろいですよね。

ボーズ はははははは。そうですね。
その、いまって、ほんとに、
なんでもTシャツにするんですよね。
谷川 そうそうそう(笑)。
なんであろうとTシャツになる。
ボーズ なんであろうとTシャツになりますよね。
それはあるなー。
撮影:MIKA POSA

2004-03-29-MON

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