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2014/08/21 14:27 頭とハート

「なんでも、やるのは、
 その人の頭とハート。
 ね? ここなんですよ」

2014/08/21 14:13 おでんが来た!

ここで特製の
静岡おでんが運ばれてきました。

「うまそう!!!」

松家先生、これをたのしみにして
本日来てくださったのです。

「で、さきほどのお話のつづきですがね。
 それは、レポートだけの問題ではないのです。
 ものごとというのは
 複雑にからみあっているものです。
 問題の大きさに
 呆然となったままではいけないと
 ぼくは思います。
 
 さきほど、災害のときに
 おにぎりをむすぼうと思った人がいたら
 それでいいのです、
 という話をしましたが、それと同じ。

 例えば、難民問題って、とても
 手に負えないと思うでしょう。
 複雑に絡み合ったいろんなことを
 解決するなんてできないと思ってしまう。

 でも、難民の衛生問題を解決しよう、
 と思えばどうでしょうか。
 手を洗えば
 伝染病の被害は格段に減るとも言われます。
 もともと手を洗う習慣がなかった人たちに
 手洗いをしてもらうためにはどうしたらいいか、
 これを考えることにしましょう。

 じっさい、それを考えた人がいました。
 その人は、石鹸のなかに小さなおもちゃを
 入れることを思いつきました。
 石鹸で手を洗うということを
 たのしいものにすればいいじゃないか、と
 考えついたのです。

 全体の問題は解決できないかもしれないけど
 それはすばらしい仕事です。
 問題は、大きいままでは解決ができません。
 それこそ、糸井さんがいつもおっしゃる
 『できることをしよう』だとぼくは思います。
 勉強も、仕事も、同じです。
 その人にできることをすればいいと思います」

2014/08/21 14:10 おたよりに答えます

「まずね、レポートというものは
 課題があるわけです。
 ゼロからやるわけではなく、 
 目の前にある何かを調べていくものです。
 やっかいなのは、その課題が
 あまりにも漠然とした大きなテーマであること。
 レポートのテーマというのはだいたいが
 そういう感じですよね。

 あまねく全体を考察するのは不可能です。
 大切なのは、絞り込みです。

 私はここに関心を持った、
 ここについて意見を書けそうだ、
 そうやって、課題テーマで広げた大風呂敷を
 自分なりにたたんでいくことが大切です。

 たとえば‥‥そうですね、
 東京の交通渋滞についてレポートを提出、
 というときには、
 東京の道路事情や人口の分布、車や産業の流れ、
 東京の成り立ちや地形まで
 その原因を調べていくことになるでしょう。

 その原因のひとつに、
 自分なりに絞りこんでいきます。
 道の流れだったらそれだけでいい。
 そこに自分なりに関心を持つことができれば
 それについて分析してみるといいのです。
 それが考察です。

 いっぽう感想は、
 『車乗んなきゃいいじゃん、
  地下鉄便利だし、いいよ』
 ということでいい。
 感想は自分勝手な意見でかまいません」

そうですね。
あまりにも壮大なテーマを示されて
そんなこと結局解決できないしなー、と呆然となって
夏休みの20日くらいを費やしてしまう
ということが多いと思います。

「大きなテーマに惑わされてはいけません。
 東京都庁だって、
 東京都のことはぜんぶやります、という課は
 ありません」

2014/08/21 14:05 質問コーナー

それではここで、
読者のみなさんからの
質問コーナーに行かせていただきたいと思います。

ーーーーーーーーーーーーー
<おたより>
中3の女子です。
宿題でレポートを書くものが多いのですが、
「結果」と「考察」、
「考察」と「感想」のちがいをつけて
 書くのが苦手です。
 感想はうまく自分のことばで表すことができず、
 とても短い感想になってしまいます。
 どうしたらよいでしょうか。
(眉)
ーーーーーーーーーーーーー

「ふふーむ。レポート」

2014/08/21 14:00 本の虫

でも、松家先生は
本の虫、でいらっしゃるでしょう?
図書館という環境のなかで
よくぞ本に気を散らせないで
勉強ができましたね。

「いいえ、それは無理です。
 ですから14時から15時までを
 『本を読んでいいタイム』と決めていました。
 その夏休みで、ドストエフスキーの
 『カラマーゾフの兄弟』『悪霊』を読みました。
 思えばあの夏は、
 すごいテンションだったと思います。

 浪人なんかしない、
 やるのは3科目、ぜったい現役で合格する。
 そういう決意のもと、
 ・でる単 試け単
 ・古文の読解参考書
 ・山川の日本史をなめるように
 そういったベーシックな受験の項目を
 徹底的に勉強していきました。

 それでいて、いっぽうは
 高校生が考えがちであり
 大人になると打っちゃっておく問題である
 『自分とは何か』
 『この世界とは何か』
 ということが、心をとらえているわけです。

 図書館と自宅があった
 東京中野区の道端には落ちていない
 人間の本質や、果ては宗教を含むその問題は
 19世紀ロシアの重厚な
 ドストエフスキーにつまっているだろうと嗅ぎつけ
 読破したのです」

はっはぁー。
その夏が、とくにすごいテンションだったと。

「それ以降も、秋、冬、と
 自分は受験当日まで勉強したのでしょうけれども
 その勉強の記憶が、まったくありません」

それほどまでに、コアタイムの夏休み。
 

2014/08/21 13:58 いちばん勉強した期間

では、松家先生は
どうやって大学受験に成功したのでしょうか。

「こうはいっても、人生でいちばん
 勉強したとき、というのがありましてね。
 勉強というのは、受験勉強のことですよ。
 それは高校3年生の夏休みです。

 ぼくには兄がいて、兄が国立大学に落ち
 私立大に行ったんです。
 ですから、ぼくはなんとなく
 私立大に行っていいんだ、
 という気分になりました。
 ぼくにとってはありがたいことです。
 なぜって、私立大学はドラスティックに
 受験科目が減るでしょう?
 ぼくはもちろんそこまではあまり
 勉強していない高校生で、
 しかもど真ん中の文系でした。

 私立大で、めざす大学の科目、つまり
 英語、日本史、国語、
 この3つさえやればいいのです。

 そして夏休み、地元の図書館に通いました。
 開館時間は
 朝9時から夕方6時ごろまでだったと思いますが、
 びっしり机に座っておりました。

 なぜ、図書館で勉強するのか?
 家ではサボるからです。
 図書館に来ると、みんなが勉強しているので
 雰囲気は最高です。
 しかも、あそこは本のにおいがするでしょう。
 本のにおいというのは、
 勉強したほうがいいかなぁ〜という
 気分にさせる作用があるのです」
 

2014/08/21 13:54 プレゼンテーションばやり

「プレゼンテーションはできなくても
 役に立つことはできるでしょう。
 みんなの前に立って話すこと以外でも
 ちがうかたちでプレゼンテーションすることは
 いくらでもできます」

でも、いまの授業ですと、
みんなの前で発表できないと
評価されようがありませんよね?

「そのときに評価されなくても、それはそれ。
 だいいち、世の中ぜんぶが
 プレゼンテーションだったら
 どうなるでしょうか。
 そんなことはありませんよね?
 
 たとえば、災害などが起こった場合のことを想定し
 このような対応対策を考えました、
 と発表して拍手をもらっても、
 それをいったい誰がやるのか、ということが
 まずあります。

 そして、実際の現場では、
 そのプレゼンテーションの内容に
 あったかどうかは関係なく、
 自分がおむすびをにぎろう、味噌汁を作ろうと
 思いついたら、勝手にやればいいのです。
 そこはプレゼンテーションと関係ありません。

 そのおいしいおにぎり、あたたかい味噌汁は
 最大のはげましと思いやりです。
 プレゼンテーションができない人でも
 それができるとしたら、それは、最高の仕事です。

 学校の中で、発表がうまくなくても
 だめだなんて思うことはまったくありません。
 教室をきれいにしよう、とか
 ゴミを出すとかは、誰にプレゼンしなくても
 だまってできることです。
 人に好かれてなくてもいいと思います。
 めったに笑わない子が笑ったとか、
 あの子のああいうところがいいなとか、
 見ている人はたくさんいます。

 ぼくの高校時代に、
 いじめられていた男の子がいました。
 その子がある日、自分の机の上に立って
 いろんなものを蹴散らして
 全身全霊で怒ったことがあるんです。
 それはいまでも忘れられません。
 すごくかっこよかった。

 調子に乗ってからかうようなことをしていると
 人を本気で怒らせることがある、
 人が全身で怒るとこうなるんだ、
 ということがわかりましたし、
 40年ほど前のことですけれども
 ぼくの大事な記憶のひとつです。
 彼は、本気の表情や声で
 ぼくらにいろんなことを伝えました。
 同級生にも覚えている人たちが多いと思います」

2014/08/21 13:47 新奇探求性遺伝子

「ずいぶん前にテレビで
 やっていたんですけれどもね、
 新奇探索性‥‥だったっけな、
 新奇‥‥いや、いまネットで調べますね、
 あ、ぜんぜんひっかからない、
 記憶力は役割分担で
 人にまかせてしまいましたので
 忘れちゃった」

えーと、新奇探求性なら出てきますね。

「あ、そうですそうです。
 新奇探求性遺伝子です。
 あたらしいことにチャレンジしたいという
 要求を持つような遺伝子のことなのですが
 これ、アメリカ人は
 日本人の何倍も持っているのだそうです。
 だから、アメリカは月にロケット飛ばしたり
 するんですねぇ」

へぇえ。
ぜんぜん知りませんでした。
松家さんは、その新奇探求性遺伝子を
お持ちなんですか?

「持ってると思いますか?
 持ってないですよ。ぜったいありません(笑)。
 日本っぽく、こもっています。
 ぼくは遺伝子が
 すべてを決めるとは思わないけど、
 でもそういう気質があると思います。
 プレゼンテーションとか、できませんもの」

でも、プレゼンテーションはいま
おおはやりですよね。

2014/08/21 13:37 手に汗

「正直言うと、いまでも
 人と会って話すのは苦手なんです。
 以前、久米宏さんが
 テレビ番組かなにかでおっしゃっていたのですが
 あの方でも人と話すのは緊張するし苦手だと
 おっしゃっていました。
 『ほら、いまでも手に汗がびっしょりです』と
 見せていらっしゃいました。
 
 すごい表現をする、
 感動するような演技をなさる役者さんでも
 ふだんは消え入りそうになっている方もいます」

ほぼ日の編集部などを見ていても思うのですが、
人と話すのがおっくうだったり緊張する人ほど
そういうことが得意なような気がします。

「あるかもしれませんね。
 もともとの気質がそういうふうに影響する」

2014/08/21 13:19 ひきこもり

「ぼくはまず、
 人と会ってお話することがとても苦しい、
 という学生でした。
 いまでもそういうところがありますが、
 一日中家に閉じこもって、本を読み、
 池袋の文芸座に行って映画をたくさん観て、
 また帰ってきて本を読む、そういう生活を
 できればずっとしていたい、という、
 いまでいうひきこもりのタイプでした」

松家先生は編集者時代、そうそうたる方々に
ロングインタビューをされてきたので
とてもそんなふうには思えないのですが‥‥。
しかも、私などの後輩にも、とてもフランクに
とてもたのしくおしゃべりをしてくださいます。

「それは、出版社ではたらきはじめてから
 身につけたことでした。

 出版の仕事というのは
 人とコミュニケーションを取って、
 同じ目的を持って、
 まとめあげていく、というものです。
 これは出版だけでなく
 あらゆる職業に言えることだと思います。

 新卒で編集部に入ると、
 同じ部署で働く人には
 来年定年だ、という人もいます。
 外部で手を組む人たちも
 世代はバラバラ、キャラクターもバラバラです。
 そんな人たちと、同じ目標をもって
 進んでいくのです。
 ああ、人と話すというのは
 こういうことなんだな、
 だからこうやって話していくんだな、
 とわかりました。

 ですから、ぼくにとっては
 会社が更生施設だったようなものです」