| 増田 |
権利の話をしているうちに、
その直前にやった
ピンク・レディーの限定コンサートの
100か所200回公演のきつさを
忘れていったんでしょうね。
|
| 糸井 |
はぁあー‥‥。
100か所200回公演って、
すごいですね。
|
| 増田 |
きつかったです。
でも、もう二度とないと思ったから
引き受けられました。
|
 |
| 糸井 |
その前の、ピンク・レディーが
大ブームだったときにも
「もう一生ない」と思ってたから
できたわけでしょ。
|
| 増田 |
そう‥‥なんですけどね。
|
| 糸井 |
３回目じゃないですか。
|
| 一同 |
（笑）
|
| 増田 |
お産が苦しくても
ちっちゃな赤ちゃんを育てながら
「もうひとりほしい、もうひとりほしい」
と思うのと同じかもしれませんね。
コンサートはとてもきついですが、
達成感や、
ミーとハモったときの
全身の鳥肌が立つような恍惚感は
何にもかえがたいものがあります。
|
| 糸井 |
それはお客に伝わりますよ。
ふたりとも、うれしそうだった。
|
| 増田 |
はい。だから、
苦しいことやつらいことを
忘れてしまうんでしょう。
|
| 糸井 |
「好きでやってた」ということですよねぇ。
歌じゃなければ続かなかったでしょう。
|
 |
| 増田 |
もしかしたら、
「苦しいから、また味わいたい」
と思うのかもしれない。
|
| 糸井 |
（笑）
|
| 増田 |
ただただ気持ちいいだけじゃ
ダメだな、きっと。
|
 |
| 糸井 |
ただ楽しい、そんなことというのは、
まぁ、ないんですけどね。
ちっちゃなことならありますけど、
大きな歓びというのは
たいてい「苦しい」が混じってますよね。
|
| 増田 |
はい、混じってます。
|
| 糸井 |
ステージのおしまいのほうで
おふたり、息が切れてらっしゃったでしょう、
あれはもしかして、演技‥‥？
|
| 増田 |
いえ、演技ではないです。
|
| 糸井 |
歌も踊りもハードなやつを
２曲連続でやったあとに、
膝に手をあてて
ふたりではぁはぁ言ってた。
|
| 増田 |
激しい２曲のうしろに
バラード入れたら楽なんじゃないか、
と考えたんですが、
それは大きなまちがいで。
苦しいあとのバラードは、もっと苦しかった。
|
| 一同 |
（笑）
|
 |
| 増田 |
そんなこと、いままで
やったことがなかったので
わからなかったんですよ。
|
| 糸井 |
うん。じゃんじゃん歌が続く
ステージだから。
|
| 増田 |
いままでは、
苦しい曲を２曲やるとMC入れて、
なんていうふうにやってたと思います。
だけど、さすがに50を過ぎて、
苦しい曲を２曲やってMC入れたら
休んでるのがバレバレだし。
|
 |
| 糸井 |
あ、そういう
意地っ張りなことを思うわけですね。
|
| 増田 |
うん。
前回、２年間限定で
再結成したときのステージは
40代後半でした。
弱音をはいていいんじゃないかと思って
「もうおばさんなのよ」
「こんなのやってられないわよ」
と、そのときの自分たちを
出すようにしたんです。
|
| 糸井 |
言いやすかったんだね。
|
| 増田 |
でも、今回は「解散やめ」です。
「またやります」なんて
かっこつけちゃったから、
ちゃんとした、完成したものを
やらなきゃいけない。
弱音は絶対にはけません。
ミーも
「ケイ、今回クールにいきましょ」
って言ってて（笑）。
|
 |
| 糸井 |
クールに。
|
| 増田 |
はい。
「私たちこんなおばさんだからさ」
なんてことを、言わないようにする。
|
| 糸井 |
考えは一致したんですね。
|
| 増田 |
激しい２曲のあとのバラードの出だしで、
私がソロで歌うところが
あるんですよ。
|
| 糸井 |
ああ、ありました。
|
| 増田 |
それはほんとに苦しくて。
|
| 糸井 |
ほんとは、
はぁはぁ言いたいわけですよね。
|
| 増田 |
肺は異常に打っているわけです。
その４分の１ぐらいの速度で
バラードを歌い出さなきゃいけない。
すごく肺に背いている気がして（笑）。
|
| 糸井 |
それはそうだ。
|
| 増田 |
バラード歌いながら
「こんなに苦しいことはないな」
「失敗したーっ！」
「順番失敗したなぁーっ！」
そう思いました。
|
 |
| 糸井 |
コンサートの構成を組み立て直す
という発想はないんですか？
|
| 増田 |
ないです。
はじまったら、
そのままいくしかないです。
|
| 糸井 |
「やると決めたらやる」のは、
ケイちゃんはもう、
ちいさいときからなんですね。
|
| 増田 |
だからこそ、
客席に伝わるものがあるんだと
思っています。
|
| 糸井 |
‥‥聞いてると、ものすごく
くそまじめな人たちですね。
|
 |
| 増田 |
歌うことに関してはそうですね。
|
| 糸井 |
ステージ拝見して思ったんですが、
「あ、いまトチったな」とか、
ないんですよ。
|
| 増田 |
いえいえ、トチります。
|
| 糸井 |
そうですか？
|
| 増田 |
これは年齢のせいでしょうね、
体に染みついてるはずの歌詞と振りが
危ういときがあります。
|
| 糸井 |
でも、その程度ですよ。
客席から、ときどき
「これはクチパクじゃないんだよな？」
ということを思い出しながら観てました。
そのくらい、ピタっときてるんですよ。
‥‥オレ、ちょっといま、
興奮してしゃべってます。
|
 |
| 一同 |
（笑）
|
| 増田 |
クチパクは、もちろんやってませんが
みなさん、サビってわかりますか？
サビの部分はちょっと厚くしたいので、
声をダブルにして重ねてはいます。
でも、歌は最初から最後まで
全部ちゃんと歌ってますよ。
|
| 糸井 |
すごいです。
|
| 増田 |
そういえばこのあいだ、
生まれてはじめて
「UFO」の歌詞を間違えました。
２コーラスめのＡメロの歌詞を、
思いっきり間違えたのに、
間違ってないと思って堂々と歌っちゃったから、
ミーとまったく違う歌詞が重なって。
|
| 糸井 |
はい（笑）。
|
| 増田 |
アンケートで何人かのお客さまが
「あれでほんとに歌ってるとわかった」
と書いてくださってました。
|
| 糸井 |
そう言いたくなるほど、
ちゃんとしてるんですよ。
|
| 増田 |
クチパクでは歌えないですよ。
そんなことしたら、
振りがわからなくなってしまいます。
歌詞と振りがセットになってるので、
ほんとうに歌わないと、間違います。 |
 |
|
（つづきます） |
