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第42回 プリントしてみないと、
わからないこともある。


Nara, 1991
この写真は、画面ではわかりづらいかもしれませんが、
プリントすることで、改めて写真が
“もの”として存在することを、
大きな実感をもって知ることが出来た、大切な一枚です。
(クリックすると拡大します)


前回は、カメラ付き携帯電話の話をしました。
そこで、今回はそれも含めて、
もしもあなたが、最近少しでも
写真を撮るのは好きなのだけど、
「何だか、ちょっとマンネリ化してきたなあ」
とか、
「何だか、うまく撮れないなあ」
と感じているとするならば、
そんな時にどうしたらいいのか、
というお話しをします。

最近では、デジタルカメラが主流ですし、
そのため、たとえたくさんの写真を撮っていたとしても
パソコンの画面で観ることが多いですよね。
誰かに見せよう、と、ブログなどに載せてみたり、
友達にメールで送ってみたりはしたとしても、
そんな写真のほとんどは、
ただハードディスクに貯め込んでしまっていませんか。

だとしたら、たまにはそんな写真の中から
お気に入りの写真を選んで、
プリントをしてみて欲しいと思っています。

もちろん、プリントするには
街の現像所にお願いしてもいいですし、
プリンターとよばれる専門家もいます。
そして最近では、自宅で
インクジェットプリンターを使って
プリントをすることもできるなど、
さまざまな方法があります。
けれど、今回はその方法は問いません。
(そのことは、また改めて
 お話ししたいと思っていますが)
とにかく今回は、
どんな方法でもかまいませんので、
プリントを、してみてほしいのです。

●一枚の写真が「もの」として生まれ変わる。

それには、いくつか理由があるのですが、
何よりもぼくは、どこかでいまだに
“プリントが写真”であると思っています。
今でもどちらかというと
フイルムをよく使いますが、
その理由はプリントを作るのに適しているから、
という理由も大きかったりします。
ぼくにとってはプリントするという行為は、
写真を撮る上でも、とても重要なプロセスなのです。

たとえフイルムであろうが、
デジタルであろうが、
プリントをすることで、“一枚の写真”は、
“一枚の「もの」”として生まれ変わります。
そうなのです、プリントをした瞬間、
あなたが撮った写真は、
はじめて、手にとって確かめることが出来る
“もの”になる。

そのことはある程度の時間を経ると
どんどん、わかっていくはずですが、
写真を楽しく撮る上でも、
思いのほか、大切なことだったりするのです。
アルバムだって同じですよね、
そこに貼り付けられている一枚一枚の写真は、
ただの記念写真だったとしても、
あとで見直してみると、
その時の思い出も含めて、
とても大切なもののひとつになっているはずです。
これは普段あなたが撮っている写真にも
同じことが言えるのです。

たとえば、ぼくが毎日デジカメで撮っている
「今日の空」にしても、
たまに自分で観ていて、天気の善し悪しにかかわらず、
「何だか、最近良くないなあ」
と感じるときがあります。
ぼくはそんな時には、そこから1ヶ月ほどさかのぼって
お気に入りの数枚を選んで、
A4サイズぐらいに、プリントをしてみます。
すると、プリントされた写真の中から、
パソコン上でも、ウェブ上でもわからなかった、
自分自身の眼差しのようなものが
そこにしっかりと写っていることを
見つけることが出来たりします。

「最近は、空ばかりに気が行っていて、
 その空の下の日常を観ていなかったのかも?」

「あー、もしかしたらこの瞬間に
 季節が変わったのかもしれないなあ?」

「何だか、最近忙しさにかまけて、
 すこし地に足が付いていなかったかも?」

などなど、いろんなことを感じることが出来ます。
そして時間があるときに、
今度は、そんなプリントされた写真たちを
ゆっくりと写真集をめくるように
ながめてみるのです。
「ただの空」かもしれない一枚の写真から、
じつは自分が本当に撮ってみたいものだったり、
自分自身の気持ちのようなものだったりが
見えてきます。
ものとして目の前にあることで、
実感を持って、感じることが出来るのですね。


最初は何でもかまいませんから、
お気に入りの写真を数枚選んで、
ちょっと大きめに(A4ぐらい)
プリントをする。
そしたら、今度はそんなプリントを
お気に入りのファイルや箱を見つけて、
その中に、ためていってみる。
それをたまにながめるのも楽しいですし、
それこそ、また自分の写真に疑問を持ったときには、
そうやってたまっている写真を
見直してみるのもいいかもしれませんね。
プリントしていなかったときに比べて、
ちょっと特別なものになった一枚の写真が
なにかをあなたに語りかけてくるはずです。
するときっと、あなたはまた新しい写真を
撮りたくなるでしょうし、
かんじんの写真だって、
もっともっと、上手になっていくはずです。



Amami, 2003
この写真も、もともとは湿板写真ですが、
インクジェットプリントという最新の方法で
プリントしたことで、ぼくに新たな方向性を教えてくれた
大切な一枚です。
(クリックすると拡大します)


次回は、
「キャン・アイ・テイク・ユア・ピクチャ?」
というお話しをします。
お楽しみに。


2006-11-24-FRI
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