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第28回 いろんなカメラ、いろんなレンズ。


Nikon F2
(クリックすると拡大します)


今まで、光の話をたくさんしてきました。
そしてそれを感じる上で、
ぼく自身がいつも思っていることをお話ししてきました。
そして前回、前々回と続けて、
写真というものの画質について、
もっとも大切と思われる要素でもある
黒と青の話をしましたよね。

今回は、そんないろいろを捕らえる上で、
写真において欠かせない装置でもある
カメラとレンズについて、
これもまたいつものように、
あくまでもぼくなりに発見したこと、感じてきたことを、
(一般論にはならないかもしれませんが)
自身の経験を元に、お話ししたいと思います。

偶然にも、そのカメラには
いいレンズがついていた。


まず最初に、大前提として、
第5回「ほんとうに正しいカメラの選び方。」
でもお話ししたように、
このカメラという写真装置には、様々な大きさがあります。
その理由も、その時に簡単に触れましたが、
今回はもう一歩踏み込んで、
同じファーマットのカメラであったとしても、
それもまた、そのフイルムの大きさの違い以上に
その性能も特質も様々であるということを
知っていてもらいたいと思っています。

ぼくは大学一年生の時に、写真を始めました。
それまでは、カメラといっても、
家にあったコンパクトカメラで
記念写真を撮ったことぐらいしかなかったものですから、
当時の写真学科の生徒が使うカメラとしては、
いわゆる一眼レフと呼ばれているものが
スタンダードだったのですが、
入学式の当日、その教室の机の上に上がっていた
他のみんなのカメラを見て、
“大きいカメラ”というのが、ぼくにとっての
“一眼レフカメラ”の第一印象でした。
そしてそれらは当然、大きいだけではなくて、
いかにも“よく写りそう”な感じがしました。
ちなみに“一眼レフカメラ”というのは、
レンズを通した画像を、鏡に反射させて確認し、
シャッターを押すと、その鏡がはねあがって、
フイルムに印画するというしくみになっている
カメラのことです。
レンズを通して確認した画像が、
そのまま、フイルムに焼き付けられる画像になるのですね。
もちろん当時のカメラやレンズには
オートフォーカスの機能はついていませんでしたが、
当時も、いまも、写真を勉強する学生は
「まずマニュアル一眼レフ・単焦点レンズから入るべし」
というのがあたりまえになっていました。

だからといって、別に欲しかったわけではないのですが、
そんな入学当初は、一眼レフを持っていなかったぼくも、
先生の「写真学科だったら、ニコンキヤノンだ」
というすすめもあって、“Nikon F2”というカメラに
標準レンズの50oというセットを購入しました。
ただ、そうやって買ってはみたものの、
相変わらず“大きい”という印象は変わらず、
ついつい、入学前に「これ、かわいいなー」
と思って手に入れた、“Olympus XA”という
コンパクトカメラが、ぼくの常用カメラでした。


Olympus XA
(クリックすると拡大します)

ある時、ぼくは課外授業にも
そのカメラを持って行ってしまいました。
当然、担当の先生からは怒られました。
ところが、後日行われた学科長の公表の折、
その写真は、とてもほめられてしまったのですね。
ぼく自身も、言われるまでは
ピンと来ていなかったのですが、
確かに他のみんなの写真とは、
少し画質が異なっていました。
この作例でも解るように、解像力も確かに劣るし、
その情報量も決して多いわけではないのですが、
それは黒が黒として、しっかりとした厚みを持った
独特の描写をしていました。
その理由は、コンパクトカメラゆえに、
レンズはかなり小さいのですが、
後々、調べてみると、このカメラに付いている
ズイコーレンズというのは、
メーカーも威信をかけて作ったなかなかのもので、
だからこそ、の結果だったのです。
(ぼくにとっては、その時点では
 あくまでも偶然ではあったのですが。)
そしてぼくは、その経験の中で、
レンズによって、画質が大きく変化するということを
知ることが出来ました。
とはいうものの、
やはり一眼レフカメラの最大の特徴として
今でこそ当たり前のことですが
(開発当時は、かなり革新的なこと)、
実際にファインダーの中で見えている世界と、
最終的に写真になったものが同じ、というのは、
写真を勉強する道具としてはもちろんのこと、
撮影時に出来上がった写真をイメージする上でも、
もっとも適しているのではないかと思います。


Nikon F2
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ニコン、キヤノン、コンタックスのちがい。

そして、そんなぼくもそれ以来、
プロなんだから当たり前といえば当たり前ですが、
様々なメーカーのカメラとレンズを使ってきました。
とにかく、そうやって実際に使ってみると、
驚く程にその写りは各社によって様々なのです。
すべてお話しするときりがありませんので、
簡単にいくつかご紹介しますと、
それこそ最初に買ったニコンのカメラとレンズは、
さすがに旧社名を“日本光学”というだけあって
解像力が高く、
例えば、眉毛だって一本一本しっかり写ります。
ただ、その分、時には全体的に“かたい”印象を残します。

そして、その後に使ったキヤノンのカメラとレンズは、
ニコンに比べると、とにかく発色がいいのです。
ただ、何を撮っても、その色乗りのいい
キヤノン的な写真になってしまいます。
また、昨年惜しくもなくなってしまったコンタックスは、
その最大の特徴でもある
カール・ツァイスのレンズによって、
とてもきめの細かい柔らかい描写をします。
特に人物撮影において、
その感じは個人的には嫌いではないのですが、
やはり時と場合によっては、
少しばかり“うすい”という印象を
残してしまうかもしれません。

とにかくその違いというのは、
多少の話ではなくて、まるで違うのです。
その理由は、第18回でもお話ししましたように、
すべてはレンズによるものなのです。
一言で言うと、この“かたい”とか“やわらかい”とか、
“濃い”とか“うすい”ということが、
その写りの特徴をすべて決定していくのですが、
大きく分けて、二つの程合いのバランスが、
各社によって、様々ということなのですね。
しかも、何度もお話ししていますように、
この世の中には、いろんな光が満ちあふれています。
そのことも手伝って、今のところ
いわゆる“万能カメラ”というものは、存在していません。
それにどうやら、カメラと道具というのは、
他の道具でも当てはまるように、
あくまでも人が使うものですから、
その使う人にとっての相性みたいなものも
とても大切なような気がしています。
ぼくも今まで、具体的にそのカメラの操作性や、
レンズの特徴を考えてみても、申し分ないはずなのに、
どうもしっくりと来ないカメラがたくさんありました。
そこには、“触り心地”みたいな、
本来なら、写真とはあまり関係のない要素まで
カメラを使う上では、
とても重要な選択肢のひとつになったりしますよね。

「カメラを変えてみる」という奥の手!

これはデジカメだって同じなのです。
時代は進化して、たとえ記録方式が変わったとしても、
相変わらず、カメラの特徴は各社によって様々です。
だから、この写りの違いを楽しんでみるのも
前向きに考えれば、
写真の楽しみのひとつなのかもしれません。
ぼく自身も、何となく上手く写らなかったり、
思うように写真が撮れないと思った時に、
一番最初にすることといえば、
カメラを変えてみることだったりします。
「このカメラのレンズが云々」みたいな話を
耳にすることがありますが、
それはあまり気にする必要がないように思いますよ。

とにかく、いろいろと話しましたが、
覚えておいていただきたいのは、
カメラというのは、
メーカーによってその特徴は様々だということです。
そして、その中からしっかりと探していけば、
必ずしっくりと来るカメラに出会うはずです。



もしも、最近写真が少しつまらなくなってきたなぁ、
と思った場合は、
まずは違うメーカーのカメラを使ってみて下さい。
ともだちと、カメラを交換してみるのもいいですよね。
すると、それだけで新しい気分で、
新しい写真が撮れたりするものです。

次回は、
そんな中で、最近ぼくが好んで使っている
ライカについてのお話をします。
お楽しみに。

2006-07-14-FRI
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