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第27回 青という色は、はじまりの色。


映画「青い魚」より
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東京では、相変わらずはっきりしない空が続いていますが、
どうやら沖縄地方は、すでに梅雨明けしたそうですね。
そんなニュースを聞いたこともあって、
ぼくは今、とても沖縄に行きたいなあーと思っています。

考えてみたら、ちょうど10年前の夏に、
ぼくは沖縄で、映画「青い魚」の撮影をしていました。
その時は、毎日暑い日差しが照りつける中で
撮影を繰り返していたこともあって、
今でもその時の光や色は、
しっかりと目に焼き付いています。
そして、第19回「きっと偶然なんてものはない。」
の中でお話ししましたように、
そこから、いろんなことがはじまっていきました。

前回の話の中で、
写真においては、その色彩のためにも
“黒”が大切というお話をしましたよね。
そして、今回は、
だとしたら、この“色”というのは、
どのようにして生まれるのかという問題を
改めて考えてみたいと思います。

具体的には、色彩というのは
写真の中では特に、
光の存在抜きにしては考えられません。
簡単に言うと、
まず最初に、闇という黒があって、
そこに、光が当たることで色は生まれていきます。
その際に、一番最初に立ち現れる色が、
今回、お話しする“青”という色なのです。
そして、やがてその光量が増えていくことによって
様々な色が、そこに生まれていくのです。
そういった意味でも、
青という色彩の原点の色を知ることは、
きっとこの世の中に存在する
ありとあらゆる色を知る上でも
大切なことなのではないかなあーと、
ぼくは思っています。

早起きして、
夜明け前の青い世界を撮影してみよう。


そんなことも手伝ってか、
色彩学的に、色のはじまりと言うことだけではなくて、
世の中のにおける“青”という色は、
「あいつは、まだまだ青いよねー」なんて言うように、
ぼくたちの日常の中にいても、
青という色は、何となく、
未分化な状態を表す時に使ったりしますよね。
にもかかわらず、実はぼくもそうなのですが、
この世の中に様々な色があるなかで、
青が好きという人が割と多いように思います。
だからというわけではありませんが、
写真を撮る上でも、
青は大切な色となっています。

では、それを光の状態の中で考えてみると、
それは、印象としても、
そして具体的にも、いわゆる夜明け前の
青い世界の光です。
しかも、日が完全に昇る前の独特の光の状態。
それがもっとも“青い”のではないでしょうか。

映画のタイトルを「青い魚」とつけたのも、
この映画が朝はじまって、朝終わるものだったからです。
一枚目の写真は、映画の中において、
主人公の女の子が、彼女が暮らすビルの屋上で、
一日のはじまりでもある朝の中で
(今まさに夜が明けようとしている中で)、
新たなはじまりと向かい合う瞬間の写真です。

みなさんも、もし早朝に目が覚めてしまったり、
あるいは寝苦しくて、なかなか寝付けなくて
朝が近づいてきてしまった時は、
少しだけ早起きして、
カメラを手に、その“はじまりの気分”を
味わってみて欲しいと思っています。

“青”の印象を写真にのこす方法は?

では、そのときの“青”、
‥‥一日のはじまりの気分みたいなものを
写真にのこすためには?
前回と同様に、
“少し暗め”に写してみて下さい。
またそんな時に、青さを強調する方法のひとつとして
デジカメの場合は、ホワイトバランスの設定を
“電球マーク”に設定して、
撮ってみて下さい。
すると、かなり青くなるはずですよ。
(これは、昼間でも使い方によっては
 面白い写真が撮れたりしますので、
 試してみて下さいね。)

そして、もう一方では
“青”という色で、すぐに連想できるのが、
空だったり、海だったりしますよね。
もうすぐ夏がやってきます。
すると、それこそあの沖縄のような青い空が、
ぼくたちの上にもやってきます。
ただし、あの夏の光の中の
空の青さや、海の青さには、
実はまた別の秘密が隠されています。
その理由は、このぼくたちが暮らす地球という星の
最大の特徴でもある“水”というものの存在に
とても関係しているのです。
それというのも、水というものは
その確かな理由は、ぼくも知らないのですが、
様々な色彩の波長を含んだ太陽光の中の、
赤色の成分を吸収する特質を持っています。
だから多くの水分を含む空にしても、
海にしても、あれほどに青いのです。
だから特に日差しの強い季節の
夏の光の中では、
空も、海も、その青さを増すのです。


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このように、同じ“青”でも、
少しだけその成り立ちの違いを意識しながら
感じてみたり、またそれを写してみたりすることで、
もしもその違いが、少しでも写ったとしたら、
何となく、光そのものを写すことが
出来たような気になるのではないでしょうか。

そして、おそらくそれを知ることが出来たら、
この世の中にある、様々な色の全てに
理由があるように思うことも出来るでしょうし、
そうなることは、きっと写真を撮ることの
楽しさにもつながっていくはずです。
そして同時に、それこそはじまりの青を
確認することが出来たなら、
近いうちに現れるであろう
あの夏の青い空と向かい合うのも、
ますます楽しみになったりするのではないでしょうか。
そしてその時に、
その青という色の幅みたいなものを知ることで、
自然と、光そのものの幅を知ることにもなります。
だから、それを何となくでも感じていることで、
おそらく写真の幅も、一気に拡がっていくはずです。



まずは夜明け前のはじまりの色としての青を
再確認してみよう。
そのためにちょっと早起きして、
夏の朝の光を写真におさめてみよう。
すると、きっとそこには
新しい発見もあるだろうし、
何かのはじまりを、実感できるはずだから。


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次回は
「いろんなカメラ、いろんなレンズ。」
というお話をします。お楽しみに。

2006-07-07-FRI
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