PHILADELPHIA
お医者さんと患者さん。
「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。

手紙179 WHO・2 ホーチーミン市


こんにちは。

前回は、
世界全体では治療を必要とするHIV感染者が
590万人いるのに、
そのうちの7%しか治療を受けていない現実に対して
WHOとUNAIDS(国連エイズ計画)が
2005年末までに、300万人を治療しようという
「Treat 3 million people by 2005.」計画を提唱して、
いわゆる「3 by 5計画」が始められた
いきさつについてご紹介しました。

いきなりそんな計画が決められても、
それを実行するためには
お金の工面や、医療従事者の養成、
患者さんへの教育、薬の配り方、
副作用への対応などなど、
それはそれはたくさんのことを行う必要がありました。

何もないところに
HIV治療を行う基礎を作り上げるために、
ここ数年間
世界中でたくさんの人々が働くことになり、
その努力は今も続いています。

そんな中で、わたしは
HIV感染者がとても多いアジアの国のひとつ、ベトナムで
あまり裕福ではない地域での治療基盤を立ち上げる
WHOの人たちの仕事ぶりを
ごく短い期間でしたが、垣間見ることができました。

基礎から必要なことをほぼ網羅した、
すごくよくできているHIV診療のための教材を
タイの赤十字で働いている
オーストラリア人の医師が作ってくれました。
彼が、その教材を用いて
現地の医師や看護師に実際に教える、
集中講義を手伝う仕事についての説明を
上司から受けました。

「・・・と、こういう仕事に行ってみてもらえるかな。」
上司の部屋に呼ばれて、詳細を聞いた後で
わたしは、
これはとても面白そうな仕事だ、と思っていました。

「で、これは出張なんだけど、
 いろいろな手続き上の問題があって、
 有給休暇を使って、ということになってしまうんだ。
 悪いけど、いいかな。」

知らない国に一人で行くのも気になるところなのに、
不安がよぎります。
ついさっきまで面白そうだ、と思っていた興味も
1割減です。
心配になって聞いてみました。
「航空券と宿泊費も自己負担ですか?」

「それは、何とかする。」

今、わたしは公務員として働いているのですが、
これは本当にいろんな決まりがありすぎて
なかなか理解できません。
いろいろと上司が奔走してくれた結論が
「手続き上の問題で、有給休暇を使って出張」
となれば、それを覆すことは不可能です。

航空券と、
現地に着いたら連絡すべきWHO職員の携帯電話番号、
他のスタッフが泊まっているホテルの住所、
これだけを持たされて
わたしは初めてのベトナムに行くことになりました。

ちょっと罰ゲームみたいで面白い、と思いながら
わたしはホーチーミン市の空港に着きました。

では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2005-11-18-FRI

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