PHILADELPHIA
お医者さんと患者さん。
「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。

手紙162 インフルエンザ・シーズンがやってくる


こんにちは。

前回の分からタイトルが変わるかもしれませんよ、と
聞いてはいたのですが
どんな名前になるのかは全然知らなくて、
11月5日の掲載された新しいタイトルを見て
少し驚きました。

わたしは、ここでは、体や健康については
「普通の人よりちょっと詳しい人」というつもりで、
自分が知っていることを知人に話す、という
気分でやっているので、
「お医者さん」と呼ばれると
ちょっと窮屈な気がしますし、
話をお伝えしたい相手が
「患者さん」である必要はないと思っているからです。

でも、わたしが病院で働いている
医師であることは事実だし、
「患者さん」、という言葉を使えば
タイトルをご覧になった方に、
ここには健康や病気のことについてのことが
書いてあるんだろうな、と
連想してもらいやすいかもしれません。

というわけで、
新しい名前にもそのうち慣れるかもしれませんし、
前回、糸井さんが紹介文の中で触れてくださったように
『親しみやすい「知恵」や「知識」や「気持」』を
お伝えできるよう、やってみます。

で、今日はそろそろ近づいてきた
インフルエンザのシーズンに向けての話です。

昨年、じゃなくて、今年のはじめに
短いシリーズでご紹介したインフルエンザですが、
秋も深まり、またその季節が巡ってきました。

インフルエンザウィルスについての
細かい話は、どうぞ前回のシリーズ
ご覧になってください。

インフルエンザに罹ると、
体がだるくなったり、のどや関節が痛んだり、
熱が出たり、といったような、
よくご存知の症状がでますし、
この病状がさらに進むと
場合によっては死に至ることもあります。

米国では、1年間にインフルエンザが原因で亡くなる方が
約2万人いる、という統計が出ています。

このような状態を防ぐための最良の手段は
インフルエンザのワクチンを
シーズンに先駆けて接種することです。

世界保健機構(WHO)や
米国の疾病コントロールセンター(CDC)
日本の国立感染症研究所など、
世界中のさまざまな公的な機関が
毎年春頃に、
その年の冬にはやりそうなインフルエンザの種類を予測して
その中から3種類を選び、
それに効くワクチンを作っています。

国により、製法に少しずつ違いはあるのですが、
今年もまた、
3種類のインフルエンザに有効なワクチンができました。

もちろん、予測したものと違った種類の
インフルエンザウィルスに
かかってしまう場合もあるのですが、
ワクチンを接種した人は
そうでない人よりも症状が軽く、早く治ることができます。

インフルエンザのワクチン接種は
広くお勧めしたいのですが、
次のような方々には、健康を守るためにとりわけ大切です。

1)50歳以上、とりわけ65歳以上の方
2)老人ホームや長期療養所にお住まいの方
3)慢性の肺の病気や心臓病をお持ちの方
4)糖尿病・腎臓病・免疫力の落ちる病気にかかっている方
5)こどもで、長期間アスピリンを飲んでいる人
6)インフルエンザのシーズンに
  妊娠中期・後期を迎える女性
7)病気の人に接する機会の多い人

その理由は、これらの方々がインフルエンザに罹ると、
症状がすぐに悪化して重症になりやすいからなのですが、
もちろん、そうじゃない、一般の健康な方々にとっても、
インフルエンザを防ぐために、ワクチンはとても有効です。

ただし、ワクチンは作るときに鶏卵を使っているので
精製を繰り返しても、
少し卵の成分が残ってしまっています。
ですから、重篤な卵アレルギーのある方は
残念ながら受けることができません。

現在、インフルエンザのワクチンは
日本の健康保険制度の中では
支払いの対象になっていないので
ご希望の方は全額自分で支払うことになります。

施設によって値段は少し違うようですが、
だいたい5千円前後だと思います。
また、自治体によっては
年齢や病気の種類に応じて
費用の一部または全額の補助をしているところもあります。

理想的には、このワクチンは
インフルエンザのシーズンが始まる前に
接種しておいた方がよくて、ワクチン接種後に
インフルエンザウィルスに対する抗体が
体の中で作られるまでに
2週間かかることを考えると、
だいたい、11月中にやっておいた方がいいようです。

もちろん、その後でも、
やらないよりはいいのですが。

あと、授乳中の女性が
予防接種を受けても、おっぱいへの影響はほとんどなく、
大丈夫です。

もし、よろしければ
どうぞお考えになってみてください。

では、今日はこの辺で
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2002-11-12-WED

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