PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
ニューヨークの病院からの手紙。

手紙129
インフルエンザ・3 予防接種の回数のことなど。


こんにちは。

インフルエンザのお話は今回で終わりです。

最近、予防接種法が改正になって
65歳以上の方と、
特定のご病気(心臓病や肺の病気)を
お持ちの60歳以上の方は、
市町村が一部
(または全額、自治体によって違うらしいです)負担して
インフルエンザの予防接種を行うようになりました。

該当なさる方は
どうぞ自治体にお尋ねになってみてください。

予防接種の回数は
抗体をつくる力の弱い小児では、
(米国では9歳未満がその対象となっていますが、
日本では13歳未満と、少し幅が広くなっています)
間に1ヶ月くらいおいて、2回接種が望ましい、
とされています。
これに対して大人に対しては、
アメリカの疾病管理センター(CDC)の
ガイドラインによると
1回で十分だ、と考えられています。

日本では公式には
大人も2回接種が望ましい、らしいのですが
最近は
「1回でもたぶん大丈夫、ただし医師と相談してね」
というような表現に変わってきています。

大人が予防接種を2回受けても
体内のインフルエンザ抗体の量は
1回受けた時と大差ない、
という報告も出ているようですし、
たぶん1回で十分なんだろうと思います。

ただ、予防接種を受けた後には、副作用として
注射したところが2日くらい痛んだり、
筋肉痛やだるさを感じたり、
熱が出ることがあるみたいです。
また、超まれにしかおきませんが、有名な副作用として
神経障害をおこすギラン・バレー症候群、
というのがあります。
この頻度は100万人に1人くらいです。

あと、予防接種を受けない方がいい、という人もいます。
たとえば、熱があるとか、
今何か病気に罹っている、とか。

また、ワクチンは鶏卵を使ってつくられます。
その精製課程では、アレルギー反応の原因となる物質を
できるだけ取り除いているのですが、
やはりごくわずかですが、卵の成分が残ってしまいます。
このために、予防接種の後、アレルギーを起こす人も
ごく、まれなんですが、いらっしゃいます。

ですから、卵を食べると
重篤なアレルギー反応が出てしまう方は
医師とよく相談なさってみてください。

更に、以前予防接種で
ひどいアレルギーを起こしたことのある方も
同じです。

さて、このように予防接種で万全を期したつもりでも
残念ながら、それでもやはり
インフルエンザに罹ってしまったということも
もちろんあります。

そんなときは部屋をよく加湿して、
ゆっくり休んで、じゅうぶん水分を取ってくださいね。

インフルエンザウィルスに効く、という薬も
いくつかあります。

昔からある、アマンタジン、とか、リマンタジンという薬は
A型のウィルスにしか効き目がありません。

また、最近のはやりの
ニューラミニデース阻害剤と呼ばれる薬は
リレンザとか、タミフルという商品名で売られていますが、
ウィルスの表面にある
ニューラミニデースという酵素に働いて、
ヒトの細胞への侵入を妨げようとする薬です。
ただ、これらの薬は
症状が出てから48時間以内に服用しなければならず、
また、服用しなかったグループの人と比べて
1日から1.5日早く症状が軽くなった、とか
ウィルスの分泌が2日早く減った、という結果が
報告されている程度です。

終わりの方はちょっと駆け足になってしまいましたが
インフルエンザの予防接種についてのお話は
これで終わりです。

アメリカでも、日本でも
政府はインフルエンザの予防について
とても熱心です。
インフルエンザに罹ることで生じる
医療にかかる費用や、労働力の損失を
できるだけ減らそう、というもくろみも見え隠れしますが、
いずれにしろ、元気に過ごせることは
自分にとってもいいことには違いないと思います。

日本のサイトでは国立感染症研究所
とても詳しい説明を掲載していますし、
英語なんですが、米国の疾病管理センター(CDC)が
今年の5月に発表したガイドライン
少し長いですけれど、わかりやすいです。

あと、とても面白い読み物としては
去年の今ごろに、「ほぼ日」の
婦人公論・井戸端会議』で加地正郎先生が
わかりやすく風邪とインフルエンザについて
お話しになってくださっています。

もう少し踏み込んだ情報が必要な方は
どうぞご覧になってみてください。

では、みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

2002-01-07-MON

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