PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙101 病院評価・2 看護部門の想定問題集

こんにちは。

病院がある程度の質を
保っているのかどうかを評価する
第三者機関・JCAHOの3年に一度の査察の日が
近づいてきた時のことを前回お話ししました。

この査察に備えて、
病院の管理部門の人たちは
さまざまな対策を講じたJCAHO臨戦体制をとりました。

その中のひとつに
各看護部門に配られた「想定問題集」があります。

これは、JCAHOのメンバーが各職場を訪れた際に
その場に居合わせた看護スタッフに
質問するであろう内容について
「望ましい回答」を集めたものでした。

先日、このことを看護婦の友達と話している時に
「その問題集なら、まだ職場のファイルに残ってるよ」と
教えてくれたので、
見せてもらいに行きました。

結構面白かったので、
今日はこの「想定問題集」について
ご紹介することにします。

JCAHOが査察の際にチェックする項目は
事前に明らかになっているので、
この想定問題は
そのチェック項目に沿って作られているのだと思います。

約50の質問と、「望ましい回答」とが
その文書の中にはぎっしり詰まっていました。

患者さんの意識の状態があまり良くなくて
治療に必要なチューブを
無意識のうちに自分で抜いてしまったり、
ベッドから落ちそうになるほど暴れて危険な時に
わたしたちは「抑制」と呼んでいますが、
手足をベッドに縛ってしまうことがあります。

この「抑制」については
医師が24時間ごとに
その必要性について所定の用紙に記入の上
オーダーを更新しなければならない、
(つまり、「抑制」しっぱなしではだめ)
というふうに決まっていて、できるだけ
「抑制」を減らそうという方向にはあるのですが、
それでもやはり、やむをえないケースもあります。

今回の査察では、この「抑制」が
大きなトピックのひとつになっているようでした。

・ 患者さんを「抑制」する前に
  やっておくべきことは何か? 

まず、患者さんをナース・ステーションの近くの
よく目の届きやすい部屋に移す、とか
家族や友達と一緒に過ごす時間を増やす、とか
薬を見なおす、とか
排泄の問題はないか確かめる、など
10項目以上の「抑制前にすべきこと」が
リストアップされていました。

また、その他にも
・ 「抑制」に使う道具の種類は? 
・ 何時間ごとに医師はオーダーを
  更新しなければいけないか?

など、「抑制」に関する質問とその回答については
とても細かく準備されていました。
これは、わたしが働いている病院が
前回の査察で「抑制が多い」と指摘されたことと
無関係ではないようです。

このほかにも、
・ 正しい手の洗い方
・ IDの裏を見ないで(ここに答えが書いてある)、
  当病院の使命を言え
・ 患者さんの食事が残って「取っておいて」と
  頼まれた時には、
  どこに、何時間まで置いておくことができるか
・ 薬の記録はどうすべきか
・ 医師からの口頭の指示を受けることができない
  (医師が自分でオーダーシートに書きこんで
   サインしなければいけない)項目は何か

など、患者さんにまつわる、
ありとあらゆる場面を想定した問題が満載でした。

また、直接患者さんの治療には関係ないけれど
病院内の安全を保つための項目として、
・ 消火器の使い方
・ 化学物質が床にこぼれた時の連絡先
・ 酸素供給バルブの管理者
なども、挙げられていました。

これらの想定質問について
どのくらい熱心に事前に取り組むか、ということに関しては
著しい個人差があるようでしたが、
ともかく、看護部門の人たちはこのような準備をして
査察の当日を迎えることになったようでした。

では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2001-06-27-WED

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