PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙83 HIV10 治療薬の名前

こんにちは。

今回のHIVのシリーズは
だんだん長くなってきてしまっていて、
ずっと続けて読んでくださっている方が
果たしていらっしゃるのかどうか
どんどん心配になってきていますが、
HIV感染のリスクのある方や、
既にHIVに感染してしまった方には
きっと参考になるんじゃないかなあ、と
思うことについて言い終わるまでは続きます。

ご興味のおありになる方は
どうぞお付き合いください。

前回お伝えしたように
HIV治療の原則は、
「少なくとも3種類の薬を、決まった量と時間を守って、
 途中で絶対にやめないで飲み続ける」

ということなのですが
今日はその具体的な薬の名前などについて
お知らせすることにします。

前々回にお伝えした
HIV治療薬の3つのグループには
それぞれ特徴があります。

1.ヌクレオシド系の逆転写酵素阻害剤
  (Nucleoside Reverse Transcriptase Inhibitor;
   NRTI)

HIV治療薬として、最初に開発されたグループで
米国では現在6種類のNRTIが発売されています。
zidovudine(略号・AZT/ZDV 、商品名・レトロビル)、
didanosine(ddI、バイデックス)、
zalcitabine(ddC、ハイビッド)、
stavudine(d4T、ゼリット)、
lamivudine(3TC、エピビル)、
avacavir(ザイアゲン)

いずれも日本でも入手可能です。
ひとつの錠剤のなかにAZTと3TCの両方を合わせた
コンビビルという薬もあります。

このグループの薬の共通の副作用としては
むかむかしたり、肝臓を傷めたりすることがあります。
薬によっては
血液を造る骨髄の働きが悪くなって貧血を起こしたり、
頭痛、下痢などがみられることもあります。


2.非ヌクレオシド系の逆転写酵素阻害剤
  (Non-Nucleoside Reverse Transcriptase
   Inhibitor; NNRTI)

これは比較的新しいグループですが、
グループの中の薬の一つに耐性ができた場合
このグループ全体の薬が効かなくなってしまうという
交差耐性を作りやすい、といわれています。

現在市販されているのは
efavirenz(サスティバ)、nevirapine(ビラミューン)、
delavirdine(レスクリプトル)の3種類ですが、
そのほかにも開発中の薬がいくつかあります。

副作用は他のグループと比べると
ややマイルドで使いやすいのですが、
肝臓を傷めたり、湿疹ができたりします。
また、efavirenzは不眠や耳鳴りが起こしたり
変な考えが浮かぶようになったりすることもあるようです。


3.プロテアーゼ阻害剤
  (Protease Inhibitor)

この薬の出現によって、
米国の90年代のAIDSによる死亡者は
激減しました。

この薬が米国社会に与えたインパクトは
とてつもなく大きなものとなり、
プロテアーゼ阻害剤を含んだ
3種類の薬による治療法を提唱したDavid Ho博士は
アメリカの雑誌・タイムの
Man of the Yearに選ばれて表紙を飾ったほどです。

「プロテアーゼ阻害剤を含んだ最強の組み合わせで
出きるだけ早く治療を開始しよう」という
“Hit Early, Hit Hard”と呼ばれた治療法が
90年代の半ばに非常に脚光を浴びましたが、
このプロテアーゼ阻害剤は
多くの副作用があり、
また他の薬と一緒に飲むことで
血液中の薬の濃度をさまざまに変化させてしまうこと、
薬を飲む回数やタイミングがとても煩雑で
なかなか規則正しく飲むのが難しいこと、
さらに、どんなに強力な治療をしても
体内のHIVを全滅させることはできないこと、などから
現在は治療を開始するタイミングについては
議論が分かれています。

プロテアーゼ阻害剤もまた
交差耐性を作りやすいグループです。

現在市販されているのは
saquinqvir(フォルトベース)、ritonavir(ノービル)、
indinavir(クリキシバン)、nelfinavir(ビラセプト)、
amprenavir(アジェネレース)、
lopinavir/ritonavir(カレトラ)
の6種類です。

副作用は本当にいろいろあってうんざりします。
むかむかしたり、下痢を起こしたり、
肝臓を傷めたり、体に部分的に脂肪がついたり、
血糖値が高くなったりすることがあります。
尿路結石を作りやすくなる薬もありますし、
血友病の患者さんの場合には
出血しやすくなることもあるようです。


今回ご紹介した薬のほかに
現在開発中の薬が9種類くらいあるようですが
今すぐ市販される、という段階にはなく、
また、治療の原則が、
「少なくとも3種類の薬を規則正しくずっと続けること」
であることに変わりありません。

個々の薬の組み合わせについては
とても細かくなりますし、
患者さんの個別の状態に合わせて決めていくものなので
具体的には
HIV治療の専門医に相談してください。

今回は、薬の名前の羅列で
お読みになりにくかったかもしれません。
すみませんでした。

次回はHIV治療のもう一つの柱、
日和見感染の予防についてご紹介しようと考えています。

では、みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

2001-03-17-SAT

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