PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙75 HIV 2 感染経路その1

こんにちは。
HIVの話の2回目です。

HIVの感染は人から人へと起こります。

この病気の存在が明らかになって間もない頃は、
感染者の周囲の人たちが
自分たちに感染が及ばないようにするために
今からみると
過剰な、ヒステリックな対応をした時期もありましたが、
現在、HIVの感染経路はだいたい明らかになってきていて、
どうすれば、感染を防ぐことができるか、
ということについてはわかってきています。

今日はHIVの感染経路
つまり、HIVはどうやって人に感染していくのか、
そしてさらに、どうやって感染を防いでいくか、
ということについてご紹介していこうと思います。

HIVは小さなウイルスですが
空気や食べ物、水などを通じては、人にはうつりません。

また、握手をしたり服が触れたりすることでも、
うつることはありません。

HIVに感染した人の血液やその他の体液の中に、
ウイルスはたくさん含まれています。

現在、血液中のHIVの量は
測ることができるようになってきました。
ウイルスの量は人によってさまざまですが、
血液1mlあたり10,000,000個くらいの
HIVを持っている人もいます。

体液というのは
精液・膣からの分泌物・涙・唾液などですが、
これらの体液からも
HIVは検出されています。

出血や体から分泌される体液が、
他人の体内に入りこむと、HIVは新たに感染を起こします。

ですから
他人と血液や体液が交わるような接触があった場合には
HIVに感染する可能性がでてきます。
ただし、唾液のみからのHIV感染は
まだ確認されていないようです。

では、具体的に
「どんな行為がHIV感染のリスクとなるのか?」
ということについて、以下にご紹介してみます。

1 性交渉

すべての性交渉はHIVの感染の可能性があります。

肛門を使った性交渉をすることが多い
つまり、粘膜が傷つきやすい性交渉をもつことが多い
ホモセクシュアルの男性の間に
HIV感染者が多いことはよく知られていますが、
現在HIVは
ヘテロセクシャル(異性間で性交渉をもつ)の男性、
また、もちろん女性にも急速に広がってきています。

開発途上国を対象とした調査では
新たな感染者に占める女性の割合は
10年前には全体の7%程度であったのに比べ、
現在は25%まで急増しているそうです。

感染の危険が高い、いわゆる「ハイリスク」な行為としては
不特定多数の男性または女性との
頻回な性交渉が挙げられることは
よくご存知だと思いますが、
問題はその回数ではありません。

極端なことを言えば、
HIVに感染するために必要な性交渉は
理屈の上からは「1回」で十分なのです。

一度でもその予防を怠ければ、
十分HIVの感染の可能性がある、ということになります。

では、どうすればそのリスクを抑えることができるのか。

英語では“safe sex”と呼ばれていますが、
自分と相手の体液や血液が
混じらないようにしての性交渉がその唯一の予防です。

つまり、コンドーム。

今年の始めに
鳥越さんがご自分のページで取り上げたニュースの中で
「男性間の性交渉でコンドームを使うことで
 今後予測される感染を減らすことができるかもしれない」
という厚生省のHIV研究班が発表した内容について、
「異性間の間違いではないか」とおっしゃっているのを
読みました。
http://1101.com/torigoe/2000-03-05.html

新聞が報道した
HIV研究班が発表したこの内容は、正しいです。

この場合のコンドームは
精子と卵子の出会いを妨げて妊娠を防ぐためではなく、
片方が持っているHIVを含んだ血液や体液が
相手に入りこまないようにするためです。

鳥越さんのような方でも
HIVに対する認識はこのくらいなんだな、と思ったのが
今回のシリーズを始めるきっかけになりました。

もちろん、コンドームはHIVだけに限らず
その他の性行為感染症(sexually transmitted disease;
STD)の予防についても効果があります。

HIVは、もう既に身近な病気です。
完治できる薬は、まだ見つかっていません。
でも、その予防は可能です。

今日はちょっと長くなったので
その他の感染の経路についてはまた次の回に。

みなさま、どうぞお元気で。
よいお年をお迎えください。

本田美和子

2000-12-26-TUE

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