PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙47 集中治療室3 栄養士

こんにちは。

どこの仕事場もそうなのでしょうが、
病院もいろんな職種のひとが働いているところです。
それぞれ、自分の専門分野についての知識が
豊富な人たちなので
いろいろ相談にのってもらっています。

今日は、そんな専門家のひとり、栄養士について。

日本で働いていた頃、
栄養士さんに一番お世話になっていたのは
糖尿病や、高血圧、腎臓の病気など
日頃の食生活が、病気に反映しやすい患者さんに
毎日の食事について、どんなものを食べたらいいのか、
どんなものを避けたらいいのか、などの
栄養のとり方についての説明をお願いするときでした。

このような説明をしたり、
入院患者さん向けの食事の献立を考えるのが
栄養士の仕事だろうと、勝手に思いこんでいて、
友達になった栄養士さんから、
「一番の仕事は毎日の食事を作ること。」と
言われるまで、まさか食事を作るところまで
やってるなんて思ってもみませんでした。

その友達は、
「ただ給食を作ってるだけじゃ、
 病院で働いてる意味がない。」といって、
入院中の患者さんの栄養の問題について
一緒にいろいろ考えてくれたりして、
とてもお世話になっていました。

ここ数回は、集中治療室にまつわる話を
しようと思っているので
今日は、その友達が言っていたように
「給食を作ってるだけじゃない」、
(というか、たぶんこの国では
食事を作ってる人は栄養士じゃないような気がしますが)
栄養士の仕事ぶりについてお伝えしようと思います。

集中治療室に入院しなきゃいけないくらい
体の具合の悪い人は、
たいてい普通の食事をとることができません。

鼻から胃の中へ管を通して流動食を流したり、
それも難しくなると、
点滴を使っての栄養補給を余儀なくされたりするのですが
その内容を細かく決めなければなりません。

患者さんの体重や、消耗している度合いなどによって
必要な栄養量は変わってくるので、
いろいろ計算をしてメニューを決めるのですが
その内容について、栄養士がチェックしてくれます。

入院中の患者さんのカルテに
彼女たちは、それぞれ細かく計算をした
流動食や点滴の参考例を書いていって、
その後も定期的にメニューを見てくれたり、
血液検査の結果をチェックしたりと、
フォローアップしてくれます。

もちろん、わたしたちも自分で
患者さんの点滴や流動食のメニューを
つくることはできますし、
彼女たちからの提案が、患者さんそれぞれの病気の問題で
すべては受け入れられないときもありますが、
治療のチームとしての彼女たちの役割は、
とても大きいです。

もちろん、退院の前にこれからの食生活についての
詳しい説明もやってくれます。
このように病棟で働いている栄養士が、
この病院には10人くらいいるそうです。

ひとりの患者さんの健康管理にいろんな専門家からの
意見を取り入れていくことは、
とてもいいことだと思うのですが、
これは、医療経済の立場からは、
医療費高騰の原因のひとつとして
挙げられるのかもしれません。

次回は、医療費抑制の専門家について
お伝えしようと思います。

では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2000-04-23-SUN

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