PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙46 デイライト・セービングタイム

こんにちは。

この前の4月2日、
アッキィ画伯の結婚式の日は当直でした。
週末は交代で休みをとるために
自分の受け持ちの患者さんだけではなく
もうひとつのチームの患者さんも診ることになるので
ちょっと忙しくなります。

土曜日の当直の人から
患者さんの引継ぎをしてもらってから
日曜の仕事が始まるのですが
その日の朝、そろそろ仕事に行こうと
準備をしているところに
ポケベルで呼ばれました。

「患者さんを引き継ぎたいんだけど、いい?」

いつもの時間より、ちょっと早いけど
ま、いいか。
その人だって早く帰りたいだろうしね。
と思って、病棟へ行きました。

引継ぎを受けて、
「じゃ、どうもありがとう」と、お礼を言ったところ
彼女はちょっと言いにくそうに付け足しました。
「あのね、もしかしたら
 今日からデイライト・セービングタイムが
 始まったのに気がついてないのかなー、と思って
 ポケベル鳴らしたんだ」

「えーっ。き、きょうからなの?」

だんだんずうずうしくなってきていて、少々の失敗は、
ほとんど動じなくなっていたつもりなのですが
これは、久々の大ヒットでした。

まわりで仕事をしていたほかの人たちも
「しょうがない奴だ、まったく」といった感じで
こっちを見ています。

「じゃあ、今は9時半なのね。ほんとにごめんなさい。」

こういうときに、言葉豊かに謝れるといいのですが
なにしろ語彙が限られているので
せめて表情だけでも申し訳ない感じにして
何度も謝りました。

「ね、どうやって
 今日からデイライト・セービングタイムだって
 みんな知ってるの?」

次に同じ失敗をしないように、
覚えておかなくちゃ、と思って
そこにいた人たちに、聞いてみました。

「いやあ、なんかね、昨日ニュースで言ってたんだ」
「わたしも、昨日ラジオで聴いて思い出した」
「いつも、イタリアにいる母が
 前日に電話をくれることになっているの」

ナースステーションには、10人くらいいたのですが
そこで、わたしに来年の参考になる情報をくれたひとは
ひとりもいませんでした。

わたしのアパートはテレビの映りが悪いので
よっぽど見たい番組がないとつけないし、
ラジオもそんなに聴かないので
このままじゃ、来年も同じ失敗を繰り返しそうです。

この、日照節約時間が始まると
(春先から秋の終わりまでのこの時期を
 サマータイムと呼ぶには
 ちょっと無理があるような気がします)
最初の数日は、ちょっと調子が狂って
朝寝坊しがちになるのですが、
1週間たってようやく体に馴染んできました。

では、今日はこの辺で。
みなさまどうぞお元気で。
栄養士のおはなしは、また次の機会に。

本田美和子

2000-04-17-MON

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