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いままでの記事 2006/03/17  
 
第7回 自分で決めたならいいんです。
糸井 『プチクリ』に書いてあるとおり、
ぼくも、クリエイティブを
「みんながやればいい」と思うんです。
でも、食えるか食えないかは別の話だよ、
ということを、ぼくはわりと、強く言います。
「食ってく」というのは、別の技術だから。
岡田 はい。
糸井 学校は、そこのところを教えることが多いんです。
文章でいうと、原稿用紙の使い方とか
テーマの見つけ方とか。
そうやって、
誰でもできるマニュアルを作って、
「食える道」を探させる。
岡田さんは、その前の、
「おもしろいと思ってるなら、
 やりたいんだったらやればいい」
と、背中をポンと押してくれるわけです。
遠慮することないんだよ、と。
『プチクリ』では、
食えるかどうかについては、
じつはあまり書いてないですね。
岡田 ほんとうは
はっきり書きたかったんですよ、
「もういい、30までは親にすがれ」と。
実際に、一回書いて、消しました。
でも、ほんとは、
人に頼って暮らすのが当たり前、
みたいな顔してる奴が
うらやましくてしょうがないからかも
しれないですが、嫌いなんです。
糸井 ハハハハ。
岡田さんの「歌」は、
「好き」と「嫌い」で
できていますね。
『プチクリ』にも「好き=才能!」
って書いてあるもん。
岡田 はい(笑)。
そこはもう、白旗です。
ぼくのラインは「好き」「嫌い」です。
で、糸井さんの歌は
「快」と「不快」かな。
ぼくは、自分が好きなことにしか
価値がないと思っているところがあります。
糸井 屋台のおでん屋さんで、
みんなが和気あいあいと
飲んだり食ったりしてるのかと思ったら、
かわりばんこに
自分の話をしてるだけの状態のような。
岡田 オタクの飲み会は、そんなかんじですよ。
自分の話しかしない。
糸井 「客と自分」なんだね!
岡田 会話のキャッチボールじゃなくて、
投げ込みをしたいんです(笑)。
以前、うちの会社にいた社員が
「俺は女の子と
 会話のキャッチボールをしたいんじゃない。
 ピッチング練習をしたいんだ。
 いいキャッチャーの女が欲しいんだ!」
って言っていました(笑)。
糸井 ボールは、返ってきてほしくないんだ。
そんなにまで、不慮の事故ってものが
嫌いなんですね?
岡田 そうです。
糸井 でも、例えば、愛って台風でしょ?
岡田 はい、はい。
糸井 「なんで俺はあんな女のところに、
 こんな傘をさして出かけてるんだ?」
というのが愛ですよね?
岡田 それをぼくの歌に翻訳すると
どうなるかというと、
自分のなかの、
盛り上がる感情が大事なのであって、
その女の人のことは、
きっと、どうでもいいんですよ。
糸井 はああ。
岡田 ですから、感情に女の人が引き合わなくなったら、
その人のことはどうでもよくなります。
‥‥言いながらイヤになるな。
微妙にイヤ、いやちがう、
日本語にするとイヤになるんだ、
いやいや、どう言ってもイヤはイヤだ(笑)。
糸井 じゃあ、チキンレースだったら、どう?
断崖絶壁を前に猛スピードで車を走らせて、
いつブレーキをかけるか、というやつ。
岡田 チキンレース‥‥!
糸井 そういう、見通しというものがきかないのが
人生ですよね、だいたい。
ブレーキをあんまり前で踏んだら、
相手が勝っちゃって、殺される。
崖を通り越しちゃうと、落ちて死んでしまう。
その場合は?
岡田 その場合は、ブレーキは踏まないで、
充分に死ぬくらいのことをします。
そのほうが、気が楽だから。
手前で止めて殺されるくらいだったら、
崖に充分突っ込んだほうが、まだ気が楽です。
糸井 その場合は、
自分は死んでもしょうがないと、
決めてるんですか。
岡田 自分の決断で死ぬんですからね。
不慮の事故があろうが、何があろうが、
自分の決断さえあれば死ねるんですよ。
決定権が手放せないんです。
糸井 岡田さん、いったい
何歳くらいのときから
自分で決定したがるタイプだったんですか?
岡田 ぼくは、幼稚園を
自分で辞めましたので。
糸井 ブブッ(笑)!
それはすごい!
岡田 幼稚園で、2年目にあがるときに、
黒板の行事表に去年と同じことが
書いてあったので、
「同じことを2年やるところに
 ぼくはいるつもりはない」
といって、親を説得して、
園長先生のところにいっしょに話しに行って、
辞めました。
糸井 へええ!
岡田 そのくらい、ぼくにとっては、
自分で自分を決めるということは、
大切なんです。
糸井 ご両親は、どんなかんじで?
岡田 うーーん、そうですね、
親に愛されすぎたのかもしれません。

ぼくは「心臓弁膜症」といって、
心臓に欠陥があったんです。
生まれてから1年間、
泣いたら死んでしまうような状況だったそうです。
ですから、その間、親は
ぼくを泣かさないように育てたので、
「世の中は自分の思い通りになるはずだ」
という思い込みが
ついてしまったのかもしれません。
それがどうしても取れないんでしょうね。
あの1年が、
こういういろんなところに
影響を及ぼすとは(笑)。
糸井 例えばコンビニなんかで、
「サービスをしない」と決めている店員さんに
会ったときのせつなさのようなものを
ぼくは感じることがあるんだけど、
親にかまってもらった人は、
そうは思わないみたいだね。
岡田 そうですよ。
糸井 うるさくてしょうがないから、
コンビニくらいは黙っててくれ、というのが、
無愛想なサービスを求める人たちなんだ、
とわかって、最近、とても驚いたんです。
そうか、そんなにみんな、
親にいろいろかまわれてるんだ!
(つづきます!)
 
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