2011年2月04日解体前夜。

「美本選定の夜」もふけてきた。

まず、絵本の本文のほうは、
ハードカバーよりもソフトカバーのほうが、
もともとの印刷が美しいということで、
ソフトカバーから一冊の美本が選ばれた。
高木さんという方の所蔵の本である。

そして、復刻の本の体裁は、
ハードカバーということがきまり、
表紙周りが一番美しい、本上まなみさんの本が
選ばれた。
ただし、ハードカバーは解体する必要は、無い。

ところで、藤井さん。
書籍を解体するときは、誰が?
専門の方?

「いいえ。」

えーと、じゃあ、工場の方が?

「いいえ。」

えーと、じゃあ、誰が?

「わたくしが。」

えーと、わたくしってわたくし?

「はい、わたくしです。
 解体は、営業の仕事でございます。」

え?

「他の人はだれもやりたがりません。
 ということはつまり、
 解体は、営業の仕事となるわけです。」

なんか特別な「解体七つ道具と」かあるんですか?

「無いです。
 己の手が道具です。」

おっしゃってることがいまひとつ
よくわかりませんが‥‥。

「こう、手をこうして。」


▲なぜ、この手の動きになるのか、このときはまったくわからなかった。

藤井さん、さっきから言ってることが
サッパリわからない。

「いや、包み隠さず事実のみをお伝えしていますが。」

つまり、「さよならペンギン」の解体は、
藤井さんが、手で行うということか。
ここで、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた人物がいた。
想像に難くない、永田である。
「安全第一 面白第二」を標榜する我社において、
これは、絶好のチャンスである。

「解体の様子は、中継しませんか。」

と、言い放った。
基本的に、営業マンというのは、
お客の本業以外のおかしな要望を断ったりはしないのです。
気が進まなくてもなんでも、藤井さんはこういった。

「ははははははは。
 い、いいですよ。
 でも、いいんですか? 私なんかが画面にでて。
 おまけに、本当にあっという間なんです。」

いいんです。いいんです。おもしろければ。
藤井さんは、大概なにかを熱心に語っている人というのは、
みていて絵になるし、耳を傾けたくなるし、おまけにおもしろい。
それに、「解体するだけ」ってちゃんと書きますから、
そんなに期待もされないようにしておきますし。
で、気楽にね。気楽に。

こうして、「さよならペンギン」の解体は、
宇宙部の助けを借りて、
全世界にUstreamで配信されることとなったのだ。
その名も「『さよならペンギン』解体ショー」である。
もちろん、「マグロの解体ショー」を
頭に思い浮かべながら決めたのは、言うをまたない。

さて、あとは高木さんだ。
本を提供してくださっている高木さんだ。
もちろん、解体を前提にして告知をさせてもらって、
それに連絡をしてくださって、
本をおくっていただいたのだから、
すぐに解体しても大丈夫、とも言える。
でも、自分だったらどうだろう?
「やっぱり、やめます。」も有りだとおもって、
彼にメールでもういっかい問い合せてみた。

高木さま

ほぼにちわ。ほぼにちのモギです。
お世話になります。
その後、いかがおすごしですか?

本日は、もしかすると
GOOD NEWSとは言いかねるお知らせと
お願いがありまして、メールをさしあげました。

『さよならペンギン』なのですが、
こちらのページでもご紹介させていただきましたとおり、
11名の方から本をおくっていただきました。
弊社にあった2冊とあわせて、13冊となりました。

こちらを、復刻を担当してくださっている
印刷会社の方、編集の永田、デザイナーの清水さんと
すべてにわたって詳細に検討しました。

そして、そのなかの一番の美本は、
高木さまのおくってくださった本でした。
表紙がほとんど劣化していないこと、
中の色の退色がみられないことなど、
ほぼ当時のままの姿なのではないかという結論です。
たぶん、あまり空気に触れない環境で
保存されていたのではないか、
というのが印刷会社さんのお話くださったことでした。
きっと、ビニールにいれて保存しておられたことが
本にとってとてもよかったのだと思います。

そこで、こちらの本を解体させていただく
あらためて、ご許可をいただきたいのです。
たぶん、おくっていただくときに、
心づもりをしていただいていたことと思うのですが、
美しい状態であればあるほど、
持ち主の方が大切にされていたものなのではないかと
想像されまして、
今一度、きちんとお聞きしてからとおもいました。

解体させていただいても
よろしいでしょうか??

ご検討いただきまして、お返事をいただければと思います。

なにかご質問やご懸念などございましたら、
遠慮無くメールかお電話をくださいませ。

これに対しての高木さんの答えは、明快。

「もちろん。」

そして、選ばれて光栄である、ということも書かれていた。
ああ、よかった。
これで、晴れてスキャンのための解体ができる。
そして、我々は「印刷のための版」を作ることができるのだ。

(つづく。解体の様子は次回!)

2011-03-29-TUE
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