2011年1月27日いちばんの美本はどれだ?

夜もちょっと更けて来た1月27日。
デザイナーの清水さん、
凸版印刷の藤井さん、
そして、永田と茂木が事務所の一室にあつまった。

凸版印刷の藤井さんをここで、
再度くわしく紹介しよう。
われわれ糸井重里事務所は、
いままでも何冊もの本を彼と一緒につくってきた。
祖父江慎さんが装丁をされた伝説の「ベリーショーツ」、
そして、同じく「言いまつがい」。
さらに糸井重里の「小さいことばシリーズ」は、
ここにいる、デザイナーの清水さん、
永田と一緒に作った本である。
本のつくりが複雑であればあるほど燃える、
印刷会社の営業マンである。
復刻だっていくつも手がけてきたさ!
でも、正体は「うちの奥さんが」を連発する、
ただの愛妻家だ! コロンボか!

さて、並べた本をみていこう。


▲ちょっと、藤井さんにみてもらうだけ、とおもってました。
 よもや、ここで「バラバラにする本」が決まるとおもってなかったので、
 ハンパな写真を撮ってあった。

「いやあ〜〜〜〜!(いつもより高い声)
 これが全部の本ですか?
 あつまりましたね〜〜。」

といいながら、
もうかたっぱしから本を手にとってはジロジロながめて、
次へ行きます。

「なるほど。なるほど。
 まあ、奥付をご覧になればわかりますが、
 ハードカバーが後に出版されたんですね。
 最初にでたものは、雑誌として流通させているものです。
 ある程度たってから好評だったので、
 ハードカバーにしなおしたんじゃないでしょうか。」

へ〜〜。

「中身の色は‥‥。
 初刷り、つまり、ソフトカバーのほうが
 全然いい印刷ですね。」

ハードカバーの方はだめ?

「うーん。たまたまなのかもしれませんが、
 ハードカバーの方は全部
 微妙に“藍かぶり”をしています。」

“藍かぶり”?

「あ、全体に青みがかかってる、という意味です。
 その青みがちょっと不自然です。」

なるほど〜。


▲もう、藤井さんは、なめるように本をみているので、
 しばらく放置させていただきました。
 彼にまかせておけば安心だとおもう。

どうですか?

「解体させていただけるならば、こちらの本がいいですね。
 これは素晴らしいです。」


▲本のつくりまでじっくりと見る。こころゆくまで、どうぞ。

そうなんですか?

「はい。おそらく、この本は
 出版社から直接納品されたものではありませんか?
 ここに、売上票がはいっています。
 これは、通常書店さんで抜かれるものですからね。」


▲売上票です。
 この売上票が白い紙に緑と黒で印刷をしています。
 「売上票に2色使いですか〜。贅沢な。いや〜!」と
 藤井さんは萌えていました。
 いまは、色紙に黒で文字を印刷している1色印刷だそうです。

そのとおりです。
ギャラリーをやってた大塚さんという方から、
譲り受けたものだと聞いている。

「そして、ビニールにはいって保存されていたのではないですか?
 紙は空気にふれると酸化していくんです。
 それで、他の本にはこのようにシミがでていますね。
 これが、殆ど出てないということは、
 ビニールにはいっていたとおもわれます。」


▲左が弊社で発見されたもの。お腹のところのシミが見えます。
 右が高木さんの絵本。ペンギンのお腹は真っ白。

なるほどね〜。

「とにかく、本を美しく保存する方法は、
 空気にふれさせないことです。」

みなさん、ききましたか?
「本を美しく保存する方法は、
 空気にふれさせないことです。」
ですよ。

こうして、1冊の本が選ばれた。
持ち主は「高木さん」である。

ところで、我々は、復刻するにあたって、
ハードカバーにするべきなのか?
それとも、ソフトカバーにするべきなのか?
永田は、ハードカバーが絵本らしくていいという
意見をもっていたが、
決定はデザイナーの清水さんに委ねる、と言う。

清水さん、どうします?

(つづく)

2011-03-22-TUE
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