西本
視覚障害の選手が、ガイドの声をたよりに、
時速100kmを超えるスピードで滑り降りる‥‥!
にわかには信じがたいです。
声で、ある程度の方向はわかったとしても、
斜度まではわからないじゃないですか?
しかもダウンヒルという競技は
ジャンプする場面もありますよね。
NHK_PRさん
これはもう映像を見てもらったほうがいいです。
視覚障害カテゴリーのアルペンスキー、
映像はこちらです。

西本
うわ、本当にダウンヒルで
時速105kmのスピードが出てる!!
大日方さん
視覚障害カテゴリーは選手もすごいですけど、
ガイドもすごいんですよ。
よく考えてみてください、
時速100kmを超えるスピードで
30~40m後ろに、
あまり目が見えない選手が
ピッタリつけてるんですよ。
ちょっとしたミスで
いつ追突されるかわからない。
そんななか、指示を出しながら滑っていくわけです。
NHK_PRさん
たしか、高速道路でも100km出したら
100mの車間距離が必要なんですよね?
なのに30~40mって‥‥ねぇ…。
大日方さん
技術系種目のスラロームはもっと大変ですよ。
通常は旗門にストックをあてて
倒していきながら、
ラインを滑っていきますが
先行するガイドが旗門を倒してしまったら、
後ろの選手が旗門にひっかかる可能性があります。
だから、ガイドは旗門にあたらないよう
大回りをしながらも、選手と同じスピードで滑り、
なおかつ、指示も出す。
そしてガイドによっては
声だけでなく、手で合図をすることもあります。
選手の視野角によっては、
見えやすい角度に手を出すんです。
この「手を出す」という動作を、
滑りながらするのは、
明らかにターンする動きとは違います。
内倒(斜面側に倒れちゃうこと)しちゃうくらいの
バランスをとりながら滑っていく
ガイドの技術たるや‥‥。
NHK_PRさん
選手と同じかそれ以上のスキー技術が必要な上に、
「けっして追突することは、ない」という
パートナーとの絶対的な信頼関係も
求められるんです。
西本
ものすごい信頼関係です。
NHK_PRさん
世界を転戦している選手とガイドは
一緒に生活することが多くて、
人によっては1年の半分以上も
一緒に暮らすそうです。
あまりにもずっと一緒にいるから
喧嘩ばっかりしてるって(笑)!
大日方さん
それくらいずっと一緒にいないと、
信頼関係が築けないんでしょうね。
「あ・うんの呼吸」どころじゃない。
NHK_PRさん
だから、パートナーが変わると
一気に滑れなくなってしまうそうです。
試合では、万が一に備えてサブガイドを
準備しておくらしいんですけれど、
どんなにサブガイドの方が
技術的には上手だったとしても、
うまく滑れなくなるんだそうです。
大日方さん
バンクーバーの時にこんなことがありました。
カナダのメダル候補の選手がいたんですが、
ガイドが怪我をしてしまって、
サブガイドで出場したんです。
けれどもゴールまで辿りつけなかった。
メダル候補の選手でも
ガイドが変わってしまうと
そういうことが起こり得るんです。
西本
だからこそ、ゴール直後の
ガイドと選手の喜びかたもハンパないんですね!
すごい達成感があるんでしょうね。
NHK_PRさん
夏の陸上では、視覚障害カテゴリーの選手は、
ふたりが襷(たすき)を持って走ります。
つまり、目に見える形でつながっているんですね。
きっと、冬は目に見えない何かで、
つながっているんですよ。
そこも見どころのひとつだと思います。
大日方さん
ちなみにマラソンなどの視覚障害ガイドは
競技中の交代が認められています。
だからガイドは、たとえ3位以内に入っても、
メダルがもらえないんです。
西本
よくジョギングをしているときにお会いする
中田崇史さんという選手がいるんです。
彼がガイドランナーをつとめた和田伸也選手が、
ロンドン・パラリンピックの陸上5000mで3位に入賞し、
表彰台にあがったときの写真を見たことがあるんですが、
中田さんは手でメダルの形を作っていました。
あれは、そういうことだったんですね。
(そのときの写真はこちら
大日方さん
でも、冬季のアルペンやクロカンは
ガイドは選手と最後まで一緒に滑ります。
だから、ガイドもメダルがもらえるんですよ。
西本
なるほど。スキーの世界では
ガイドも選手同様に扱われるんですね。
大日方さん
そうなんです。
見ていただいた映像では、
ガイドと選手がインカムをつけて
コミュニケーションをとっていましたが、
昔は鈴をつけて滑るガイドもいましたし、
スピーカーを背負っている方もいらっしゃいますよ。
西本
スピーカーを背負って!
NHK_PRさん
今日は、いいものをもってきたんです。
先日、日本選手のガイドスキーヤーとして
トリノ大会などに出場されていた、
石黒晶久さんにお会いしたんですよ。
(ゴソゴソと箱から何かを取り出す)
じゃーん!
これが、石黒さんが背負っていたスピーカーと、
実際にレースで使っていたヘルメットです。
西本
うわーっ。本物ですかー!
このヘルメットすごく軽い!
大日方さん
軽いだけでなく、強度もしっかりした
アルペンスキーの競技用ヘルメットです。
NHK_PRさん
石黒選手はこのヘルメットに
マイクをガムテープで固定しているそうです。
西本
ウエストバックの中に
スピーカーが埋め込まれていますね!
NHK_PRさん
秋葉原でスピーカーや部品を買ってきて、
自分で作ったって言ってました。
西本
ガイドが選手にコミュニケーションをとる
手段は決まっているんですか?
大日方さん
細かくレギュレーション(ルール)で
決まっているわけではないんですよ。
ガイドが工夫することも認められています。
西本
なるほど。この工夫、よくわかるなあ。
このウエストバック、
マウンテンスミスというメーカーのものなのですが、
通常のウエストバックのように
ウエストだけで固定するのではなくて、
左右4カ所のストラップで締め上げて
密着させる仕組みになっているんです。
腰の負担も少ないし、
つけないときと、重心がそんな変わらない。
リュックだと上半身の動きが制限されるし、
背中に重いものを背負ってしまったら
後傾して重心が変わってしまうから‥‥
これはよく考えたなあ。
NHK_PRさん
西本さん、意外なところにくいつきますね(笑)。
西本
ええ。ロードバイクに乗るときに、
リュックだと背中に汗がたまるんです。
腰で固定できて
長い距離を走れるものを探していたら、
このマウンテンスミスに行き当たったんですよ。
大日方さん
ガイドの工夫については
選手やガイド同士が
いろいろ教え合っているようですよ。
ワールドカップで転戦するうちに、
選手同士も知りあいになるので。
このバックなんかもまさに、
ほかの選手からのヒントがあったのかもしれません。
西本
それは意外です。お互い、
秘密にしておくようなことかと思いました。
大日方さん
パラリンピアンたちは
みんなオープンなんですよ。
ギアそのものに
技術やアイデアが詰まっている、
チェアスキーの世界でもそうです。
競技力があがってくると
国同士の対抗意識も出てはきますけど、
こういうノウハウについては
みなさんオープンマインドです。
ノウハウを隠すというよりは
みんなで共有して
より多くの人と競おうじゃないか!
というマインドなんですよ。
西本
ああ‥‥!
NHK_PRさん
あ、そうそう、チェアスキーの技術力は
日本が世界一と言われているんですよ。
大日方さん
こちらがわたしたちが使った
「長野モデル」と「トリノモデル」です。
わたしたち選手と
NISSIN(日進医療器株式会社)さんがタッグを組んで
長野から改良を加えて熟成させてきました。
西本
フレームやサスペンションがついてる!
MotoGPマシンのようじゃないですか。

(つづきます!)
2014-03-11-TUE

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