SHIRU
まっ白いカミ。

眠れない時は数えてみる

52枚目: 「学級崩壊日誌」

 


6月 22日(火) /天気 ちのあめ /日直 しるちょふ


義務教育法の改正で
社会人小学生がふえてきました。
僕のクラスにやってきた三浦くんは
社会慣習を貫こうとしていじめられています。
いくら部長だからってクラスの女子に
「お茶。」は無いと思います。
むかしは足が速いと女子に人気があって
男子の中では体格の良さがヒエラルキーでしたけど
だから最近はそうでもなくて
結構、銭の力がものをいっています。
カナなんて三浦くんから
毎朝ひまわりの花束が届くといって
僕たちはそれを発酵させた
ひまわりのお酒をジャングルジムで飲みました。
「中年ってのはいくばくかの銭の力で
かろうじてその存在を許されているようなものだからね。」
博士の言葉はときどき言葉の暴力で
僕は日直として学級崩壊の危険性を感じました。
「大人って汚いわ。」
そういう付和雷同型の綾音さんは千年ぐらい昔だったら
引く手あまたと思しきキューピーマヨネーズのような美人で
白粉こそはたいてないけれど
可能性とか希望みたいなので厚化粧をしているから
博士のいう事も間違えてないかもと思いました。
鬼も十八番茶も出花。世界は全て僕たちのもの。
それと僕の隣の席の竹本さんは
知らない国の話を色々としてくれて面白いです。
今日、給食の時間に
「こんなの人間の食べ物じゃない」
と竹本さんがいっていて
ウチウミがちょっとかわいそうでした。
でもウチウミくんは給食費を払ってないし
いつもがつがつ食べておかわりしにいくし
休みの人のプリンを勝手に食べるから
僕もあんまり好きじゃありません。
昼休みにはしげたくんがまた銃を乱射してました。
翠ちゃんのゲームボーイが壊れて泣いていたので
帰りの会の話題はきっとこれになるでしょう。
シゲタくんはあらかじめ切れていて
ほんと切る手間がかからないと思います。
そもそもシシリーから転校してきた
ドン・アバッキオくんが銃を持ってくるからいけないんです。
しかもアバッキオくんは日本語がわからないし
いきもの係のくせにキュウリだって持ってきません。
かたつむりの殻が最近うすくなったみたいで
しんじゃわないか僕は心配で
今日、給食のセロリを入れてあげました。
ていうかほんとはセロリが食べたくなかったのです。…ごめんなさい。
いったいイタリアにはキュウリがないのでしょうか。
僕はイタリア語でキュウリをなんていうのか
こんどお父さんに聞いてきます。


シル
shylph@ma4.justnet.ne.jp

 

from 『深夜特急ヒンデンブルク号』

1999-07-15-THU

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