SHIRU
まっ白いカミ。

#42 "高倍率な望遠鏡"



ナイフの様な細い月が
黒いドームを切り裂いた。
雑多な虹色に汚れたドームを
毎夜、月が掃除する。

胸を締めつけ
憧れていたモノが
一瞬で色褪せるから
残酷にゴミ袋に詰め込む。
きゅう!小さな悲鳴。
ケッ。

ベランダに座る。
高倍率な望遠鏡。
シャワーを浴びるお姉さんも
道ばたに寝転がるルンペンも
何年も昔に零れた星光も。
レンズが透かし集めて
僕の瞳に注ぎ込む。

月夜の公園で靴紐を結んでる少年。
旅人の寝首を狙うキャラバン。
砂漠で牧草の夢をみる牛。
ビルから携帯電話を投げつけた。

 

 


Email : Kohji-3200 * A L P H A C O H J I X : URL
×
Email : シル * 『深夜特急 ヒンデンブルク号』 : URL

1999-06-23-WED

BACK
戻る