BUSINESS
オトナ語の謎。
オレ的にはアグリーできかねるんだよね。

■■■  第61回 オトナ語専門用語編:その11 ■■■

さあ、本日は専門用語編最終回!
全国のオフィスと現場でがんばる諸先輩方、
お世話になっております。

さまざまな職場において
さまざまなオトナが用いる
さまざまな専門用語。
本日もにぎにぎしくお伝えしていこうと思う。
まずは例によってテーマを振り返る。

 オトナ語専門用語編テーマ 

お勤めする職場、業界に、特有の言葉はありませんか?
そこでは当たり前のように使われているものの
一般社会では絶対に通用しない言葉はありませんか?
そのような言葉を、現代語訳とともに紹介します。
身のまわりにある
「冷静に考えたらなんだこりゃ?」な言葉を
どしどしお送りください!
※募集は終了しました。

まずは、前回のコメントの修正を兼ねて、
「兄貴」と「弟」ネタから行ってみましょう。

【飲食業界:ホールにて】
「ちょっと弟ちょうだい!」
「兄貴じゃなくていい?」
「兄貴じゃもったいない、在庫だから」

▼現代語訳▼
「使用済みのお客様用お手拭きを2〜3枚ください」
「使用前のお手拭きでなくていいのですか?」
「使用前のものでなくて結構です、
 お手洗いの掃除に使いますから」
(提供者:モノレール)

■前回の当コーナーで、
 仕込んだ食材の古いものを「兄貴」、
 新しいものを「弟」と表現する例を紹介し、
 「ローカルな専門用語かもしれない」とコメントしたが、
 どっこい、「兄貴」と「弟」は
 全国の飲食業界に広く普及していたのである。
 軽率な判断をしてしまったこと、
 ここにお詫び申し上げる。
 ちなみにこの店では、使用済みのお手拭きを「兄貴」、
 使用前のお手拭きを「弟」と呼んでいる。
 あと、「在庫」というのは「トイレ」のことで、
 この店で、「トイレに行ってきます」の隠語が
 「在庫チェック行ってきます」だったことから
 きているのだという。
 ところで、この投稿によって「兄貴」と「弟」は
 食材のみを示すのではなく、
 モノの古さを示すらしいということがわかったが、
 じつはこういった言い回しには
 さらなるバリエーションが存在したのである。
 つぎの投稿を読んでみてほしい。


【ハンバーガーレストラン:キッチンからホールへ】
キッチン1「お〜い、長男からケチャップ取ってきて」
ホール  「はい!」
キッチン2「あっ、次男からロックも。」
ホール  「はい! ‥‥すいません!
      次男にはロックありません!」
キッチン1「ロックは三男だよ!」
ホール  「はい!ありました!」
キッチン1「ドラムお願いしま〜す。」
ホール  「はい!」

▼現代語訳▼
キッチン1「すいません、冷蔵庫の右上の扉開けて
      ケチャップを取って下さい」
ホール  「はい! わかりました。」
キッチン2「あっ、私も右下の扉を開けて
      ロックアイスも取ってほしいです」
ホール  「はい! わかりました!
      ‥‥申し訳ありません!
      右下の扉開けましたけど、
      ロックアイスは見当たりません!」
キッチン1「ロックアイスは左上の冷凍庫に
      入ってるんだよ!」
ホール  「はい! あっ、ありました!
      ありがとうございます!!」
キッチン1「フライドチキンできました。
      お客様に持っていって下さい」
ホール  「はい! わかりました!」
(提供者:佳代)

■こちらはなんと三兄弟!
 しかもその正体は冷蔵庫。
 理由は定かではないけれど、
 どうやら飲食業界、とくにその厨房では
 いろんなものが兄弟扱いされているらしい。


【消費者金融業界:担当者と上司の会話】
担当「○○に営業行ってきまーす」
上司「○○は今月で落ちそうだから、
   派手に営業かけてこいよ」

▼現代語訳▼
担当「○○さんの集金に行ってきます」
上司「○○さんは、
   今月の入金がないと貸し倒れになるので、
   きちんと集金してきてください」
(提供者:うに)

■投稿者が添えたコメントによれば、
「集金を営業と言うことによって
 少しでもよいイメージにしようとしていた」とのこと。
 業界によって「営業」が意味するものは
 大きく異なるのである。


【出版業界:校了直前の風景】
編集長「Aクン、アンタちょっと、
    今日校了だってわかってんの!
    ノンブル落ちてるし、
    キャプはハコになってないし、
    タチに大キャッチ引っかかってる!!」
部員A「すいません。ゲラもう一回まわします」
編集長「しかも、このキリヌキPhとカクハンPh
    ギャクハンだよ! 色校の意味ないよ!」
部員A「うわー、気づきませんでした。
    至急、アタリとりなおして
    ぶつかるキャプ組み変えますー。
    Bくん、ダーマトとポジ袋貸してぇー」
編集長「そういえば、Bくん、AB版どうなってる?
    向こうの返事来た? アカ反映しきれそう?
    困るよねー、タイアップだからって、
    アカ入れたい放題だもんね」
部員B「まっかっかですが、
    レイアウト変更はナシで行けそうです」
編集長「よかったー、そのオリ、進行早めだもんね。
    じゃあ、あとは現場さんゴメンって感じか」

▼現代語訳▼
編集長「Aクン、あなたは、今日が色を確認するだけの
    最終締め切りだということがわかっていますか?
    ページの下の方に入るはずの
    ページ数を表す数字も入っていないし、
    写真などを説明する文字が、
    箱組みになっていませんよ。
    大きな見出し部分の文字が一部、
    断裁(雑誌を大きさどおりに切ること)予定の
    部分に引っかかっていて
    これでは文字が切れてしまいます」
部員A「すいません。指摘を受けた部分の修正を、
    文字確認用の試し刷り(ゲラ)に書き込んで、
    写植屋さんに戻します。そしてデータ修正して
    もらったものを再度確認します」
編集長「しかも、この切り抜いて使う写真と
    四角いまま使う写真はどちらも
    ポジの裏表が逆になって印刷されていますよ。
    そんなことにも気づかないようでは、
    色や、写真を確認するという、
    色校正本来の意味がないではありませんか!」
部員A「気がつかなくて、本当に申しわけありません。
    急いで、写真の図柄や形が変わる指示を出し、
    写真とぶつかってしまう
    文字スペースの形を変えます。
    Bくん、ポジを入れるためのセロファン袋と、
    そのセロファンにも書ける
    特殊な色鉛筆を貸してもらえますか?」
編集長「そういえばBくん、
    雑誌より小さいサイズの版型の
    進捗状況はいかがですか?
    クライアントの確認は終わりましたか?
    修正依頼はどのくらいですか?
    この締め切り間近の状況で、
    修正しきれますか? まったく困りましたね、
    クライアントさんから制作費をいただいて
    作るページだからって、最後になって
    大幅な修正を要求してくるんですから」
部員B「修正箇所はたくさんありますが、
    全体のデザインを変更するような
    大きな修正はなさそうです」
編集長「よかったー。
    そのタイアップの折(ページのかたまり)は
    他よりもサイズが小さいから、
    紙をカットする工程が一つ余分に入ります。
    他よりも早く印刷所に戻さなければいけないので
    心配していました。あとは、その修正を反映する
    印刷所と写植屋さんの現場の方々に
    がんばっていただくしかありませんね」
(提供者:そういう私は編集長)

■おいおい、こんなわけのわからんやり取りが
 現場でほんとうに通じてるのかよー、
 と、思う向きもままあろうけれども、
 そういった業界に経験のある身から
 言わせてもらうとすると、ずばり、
 「ああ、ふつうのやり取りですね」
 ということになる。これほんとう。
 ちなみにこの投稿が希有なのは、
 実際の編集長さんから送られているということだろう。
 長い投稿を書かれているあいだ、
 この方の机に校正類が溜まっていないかが心配である。


【システム業界:雑談】
「昨日アブノーマルばっかで、
 斎藤くん大変だったらしいよ」
「へぇ〜」

▼現代語訳▼
「昨日、システムの異常終了(アブノーマルエンド)が
 多発して、
 斎藤君はその対処で大変だったらしいよ」
「へぇ〜。」
(提供者:とむ)

■ハイ、お母さん、出番ですよ〜。
 んまあ! なんてふしだらな!
 いえいえ、お母さん、そういう話ではないのです。
 だってアナタ、アブノーマルだなんて!
 まあまあ、お母さん、それは、
 システムの異常終了のことなんですよ。
 でも、アブノーマルだなんて! 変態!
 落ち着いてください、落ち着いてください。
 娘さんはよくやってくださってますよ。


【ホテルの花屋:婚礼ピーク時間】
A「バージンどうかな? 
  一応白ションと白デンもってっといて」
B「どんでんはじまったよ! お父さんは?!」
A「お父さんはここ! あれ、子供は?
  ガキ、まだなんじゃないの?!」
B「ガキは今、店で作ってる! すぐできるから!」

▼現代語訳▼
A「今朝、教会のバージンロードに飾った装花は、
  まだきれいな状態でしょうか?
  念のため、白のカーネーションと
  白のデンファレ(蘭の一種)を持っていって
  折れている花がある場合には、交換してください」
B「最初の披露宴パーティが終わり、
  会場は次の御披露宴の準備がはじまりました、
  急ぎましょう。ご両親への花束贈呈の折に、
  お父上の胸につけるコサージュは、
  もう用意できていますか?」
A「お父上用のコサージュは
  ここにありますから大丈夫です。
  あら、お子様用の小さな花束はどこかしら?
  もしかすると、お子様用花束は
  まだ製作されていないのではないでしょうか?」
B「お子様用の花束は、
  ただいまショップのほうで鋭意製作中です。
  すぐに完成しますから」
(提供者:い)

■んまあ! んまあ! バージンだなんて!
 まあまあ、お母さん、落ち着いてくださいよ。
 しかもしかも、ガガガガ、ガキをつくるだなんて!
 いえいえ、そういう話ではなくて、
 子ども用の花束をつくるという話ですし、
 そもそもこの投稿、完全にお母さんねらいですよ?


【金属加工業:仕事の確認】
A「おい、あの後家さんどうした?」
B「あれかなりシワがひどかったけど、
  なんとか皮むいて焼き入れときました」

▼現代語訳▼
A「おい、あの凸と凹で1セットの品物のうち
  片側(1個)だけ注文が入った品物どうした?」
B「あの品物は、鍛造したときに
  鍛造ジワができていたので、
  なんとか機械加工で表面を削り落として
  熱処理の業者に発送しておきました。」
(提供者:たけみ)

■んまあ! 老女虐待! ひどすぎる!
 ですからお母さん、そういう話ではないのです。
 ふたつセットになった部品の話でして‥‥。
 皮をむくなんて! 焼きを入れるなんて!
 それは表面を加工するということでして‥‥。
 うーーーん、バターーーン!
 あっ、お母さん、しっかりしてください!
 ‥‥むにゃむにゃ‥‥もう食べられないよ。
 お母さん、お母さん、起きてください!


【洋画吹替え声優業界:ディレクターの指示】
「23ページからのところは3本線で行きます。
 本線はベティのあえぎ、一人旅で
 別一でジャックの息とトム、
 別二でテレビと院内アナお願いします。

 24ページ、9分19秒。ベティ、あえぎ大きめで。
 9分28秒のキスはMEあり。
 28ページ、3行目のメアリ、パクってるよ。
 20行目のトムは口ないんで、
 ちょっとハヤデして後ろもこぼしてください。
 29ページ、木村くん、紙コップある? 深めにね。
 30ページのとこ、ジャック。
 原音ないけど、やられアドっといてください。

 じゃ、本番行きますけど、その前に、
 渡辺さん、今日お尻があって早出しなので、
 先に抜いちゃいます。
 じゃあお願いしまーす」

▼現代語訳▼
 台本の23ページからのところは
 同じところを3回に分けて収録します。
 芝居の流れの中ではベティ役のあえぎ声の演技だけを
 お一人でなさってください。
 ひとあたり最後までいってから、
 この部分だけを巻き戻して
 2度目にジャック役の息遣いの演技とトム役のセリフを、
 そして3回目は、背景のテレビから流れてくる音と
 病院内の呼び出しアナウンスという、
 スピーカーから出る音に加工する
 部分の音だけを別に録ります。

 24ページ9分19秒のベティのあえぎ声は、
 バックの音楽が大きいので、
 大きな声であえいでください。
 9分28秒のキスは、
 効果音のトラックにその音がありますので、
 唇と手で「チュッ」という音をさせる必要はありません。
 28ページ3行目のメアリ役の方、
 セリフが早く終わりすぎて、
 画面の外国人俳優の唇が
 まだ動いているのが見えてしまいます。
 少しゆっくり喋ってください。
 20行目のトム役の方は、
 画面に外国人俳優の顔が映っていませんので、
 外国語音声より少し早く喋りだして、
 終わりも音がなくなった後まで喋っていてかまいません。
 29ページ、木村くん、あなたの役は
 酸素マスクをつけていますが、
 声をこもらせるための紙コップは持っていますか。
 しっかり口の前に持って喋ってください。
 30ページのところ、ジャック役の方、
 外国語音声では何も言っていませんが、
 殴られている痛そうな声を
 アドリブで入れておいてください。

 ではこれから本番収録いたしますが、その前に、
 渡辺さんは今日はこの後別のスケジュールがあって、
 ここの現場からは早く帰らなければならないので、
 彼の演技だけを先に収録してしまいます。
 では本番よろしくお願いします」
(提供者:りんりん)

■んまあ! あえぎ声! キス! 扇情的!
 まあまあ、お母さん、専門用語編最後の
 投稿なんですから落ち着いてください。
 んまあ、最後! たくさんの投稿、
 ありがとうございました!
 あ、ありがとうございました!

そんなわけで、専門用語編を終わります!
そして月曜日から、新シリーズが始まります!
「オトナ語の謎。」最終章、こうご期待!


■■■ アシスタントよりご報告申し上げます。 ■■■

こんにちは、関西生まれの美人アシスタントです。
こちらはオフィスからの自由なメールを
募集、掲載していくコーナーです。



今日朝の電車内でオトナ語を聞いたのですが、
若造の私にはいまいち理解できませんでした。
会社員風の二人の男性の会話です。

「えきえきで一時間ですか?」
「いや、ドアドアで」
「あっそうなんですか」

難しいです。最近のオトナ語のコーナーも
大学生の私にとっては宇宙人語並のレベルで。
実際、こんなこと話しているオトナを
見かけたことがなかったので、
オトナ語の存在を疑っていたのですが今日、
ついにオトナ語を聞いちゃいました。
なんだか嬉しかったです。
(提供者:ちり)

ちりはん、喜んでるところ水をさすようやけど、
今回は残念やったな。はっきり言うといたろ。
「それはオトナ語やない」と。
きみは、「ドアTOドア」っちゅう言葉を
聞いたことないんかいな。
推測するに、その二人が言うてたのは、

えきえき‥‥家の最寄りの駅から会社の最寄りの駅まで
ドアドア‥‥家のドアから会社の入り口まで

ちゅー意味やろなあ。
これは、ドアTOドアを短縮した言葉、
つまり「短縮語」にすぎひんのや。
だいたい、会社員が朝の通勤電車で交わす会話は、
お天気とか、そういう他愛ない話や。
ほんまのオトナ語が生きるんは、会社に着いてからや。
大事なんは、めりはりや。

今はそうやって、オトナ語に出会わず、
その存在をうたごうてたらええ。
なぜなら、オトナ語は、きみが社会人になった暁には、
勝手に向こうから「こんにちは」してきよるからな。



あの、スミマセン。投稿ではないんですけれど
左官屋さんという名前の読みは
『さかんや』では無いのでしょうか?
雨もれの修理で何人か来られていたのですが
皆さん『しゃかんやで〜す』と言っている様に聞こえます。
スキッパでも無いのに‥‥。
(提供者:emi)

そういう「なんでか言われへん語」ってあるよな。
あたしのおかんも、「派出所」が絶対言われへん。
「はしゅしゅしょ」になりよんねん。
なかなかかわいいってことで、許しといたろうや。
ちなみにおかんもスキッパちゃうで。
オトナ語にほど遠い投稿やけど、
こういうのもいただいとくわな。
‥‥コホン、来週もよろしくお願いします!


オフィスからのふつうのおたより、
当コーナーへのふつうの感想なども
お待ちしております!
あてさきはpostman@1101.comです。
こちらのほうの表題は
ふつうに「オトナ語」でけっこうです。
みなさまからのメールが
新たなテーマをつくるのです!

2003-10-24-FRI

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