BUSINESS
オトナ語の謎。
オレ的にはアグリーできかねるんだよね。

■■■  第23回 オトナ語実践編:その3 ■■■

「とうとう、メールを出してしまいました」
実践編に入り、そういったメールがたくさん届いている。
担当者として、これほどうれしいことはない。

全国のオフィスでがんばる諸先輩方
お世話様です。お疲れさまです。

実践問題その第2回、津々浦々から山ほど届き、
ビジネスマンの底力を感じずにはおれない。
まずは前回の問題を振り返る。


  実践問題その2 

 あなたは、渡辺本部長に向かって
 金曜日夕方の会議が長引いています。
 どうやら結論は出ません。
 あなたには約束があります。
 同じような話がループしています。
 会議を終わりへ向けるひと言をお願いします。

 

半端に奇をてらったような回答が
ほとんど寄せられないところが
このコーナーを読む方たちのオトナを感じさせる。
みなさまからの回答を紹介する。

「すみません。さっきから同じことの
 繰り返しみたいに聞こえるんですね。
 たぶんここでは結論が出ないと思いますんで、
 いちど持ち帰って月曜朝イチにでも
 クリアーな頭で話しませんか?
 どうせ土日先方も休みだし、
 ここで決めてもすぐ進められる話じゃありませんよね」
 (提供者:tutu)

■もっとも多く寄せられた回答が
 「いったん持ち帰る」「各自の宿題にする」
 といったものだったが、この回答例では
 「土日先方も休み」という観点を持ち込み、
 結論を急がずとも問題ないという安堵を
 全員へ伝えることに成功している。見事である。
 また、「同じことの繰り返し」という
 言いづらい事実を「聞こえるんですね」という
 じつにオトナな言い回しで婉曲化。
 現場で鍛えられた筋肉を感じる。

「ここはひとつ、週明けまでの宿題ということで。
 部長もそろそろガソリン切れみたいですし。ね。」
 (提供者:うしろまえ)

■おおっと、こちらはユーモアで逃げた。
 一瞬、緊張した場がそれを共通の合図として
 笑みを浮かべる様が目に見えるようである。
 こういった場合のユーモアは
 本質的におもしろいかどうかは問題ではない。
 「にこやかになるきっかけ」として
 機能すればそれでいいのである。
 ネタにされた部長も苦笑い。
 もちろんこの場合の「ガソリン」は
 アルコールを指すと思っていいのだろう。

「それじゃまぁ、このまま話してても
 埒あかないようですし、頭を冷やすという意味で、
 この件について、各自の宿題にして揉んだ内容を
 月曜同じ時間で持ち寄りましょうかね。
 え? 月曜は会議室が取れない? 
 コンちゃん出張? あー仕方ないなぁ。
 コンちゃん、悪いけど意見出張先から
 FAXで送ってくんない?
 会議室は、ま、いいでしょ。
 人数少なくなるから商談コーナーで」
 (提供者:jijiぃ)

■こちらは大勢で協議する意義なしと踏んで
 集まり自体をダウンサイジング。
 名目上集まっている人たちをあえて遠ざけるのも
 賢明なオトナの判断といえるだろう。
 ちなみに「商談コーナー」とは
 パーティションで区切られた
 打ち合わせ用の小スペースを指す。

「とりあえず今日は、ブレストという位置づけなので、
 性急に結論を出すよりは、
 次回に持ち越したほうがよいのではないでしょうか?」
 (提供者:RIMOA)

■あ、そもそも今日じゃなくてもいいんじゃん、と、
 場に知らせつつも、意見を出し合うという
 意義は十分に達成したのだという満足感を提示。
 「こんだけ時間かけたのだからなんらかの成果を」
 と意地になることほど無駄になることはない。
 そのようにして無理矢理に出した結論は、
 おうおうにして現場へ下りたとき
 「上のやつらほんとにわかってねえなあ……」
 という不満を生むこととなる。

「んー、まあ、いずれにしても、
 今後への課題が残ったってことでしょうね、今日はね」
 (提供者:イトー)

■うわあ、それっぽい。これは現場からの投稿だ。
 ぼやきながらも長引いた会議の意義を示す。
 あたりのいい言葉の背後には、
 「それがわかっただけでも十分じゃないですか」
 という声があり、あえてそれを言わないことで
 新たな議論を呼ばずに会議を終わりへ導く。

「私のほうから先方へは1本入れて、
 月曜日の午後イチまで
 レスを延ばさせてもらいますから、
 1回ここで締めて、月朝に再度、
 ブレストする方向にしましょうよ。」
 (提供者:ツボイ)

■これは、会議がそもそもの命題として抱えている
 「今日中に結論を出す」という決まりごとを、
 先方にお願いすることによって
 延ばしてしまおうという戦法。
 ややチカラワザであるが、効果は大きい。
 しかもネコに鈴をつける役目を
 かってでている点もポイントが高い。

「単刀直入に申しますとね、
 まだ煮詰め方が充分じゃないんですよ。
 少しインターバルを置いて
 この問題にアプローチすると
 違ったビジョンが持てるんじゃないですかね。」
 (提供者:すずき8)

■あえて強気。あえて投げやり。
 これは発言する人の実力が、ある程度、
 場に認められていることを条件とするのだろう。
 そういう人が、対立する意見を静観していて、
 煮詰まったあとに生じた沈黙をとらえると完璧である。

「よし! 絶対あと30分で結論出しましょう!」
 (提供者:まきこ)

■前向き! 全員の目が会議室の壁にある時計へ向かう。
 この言葉の真の目的は、結論を出すことではない。
 こう言って結論が出るくらいなら、
 そもそもそこまでもめないのである。
 すなわち、この言葉の真なる効果は、
 「終わりの時間」を提示して、
 場の全員の共通認識にすることにあるのだ。
 下手して2時間続くよりも、
 30分後の確実な終わりを選ぶ。

「この案件に関しましては、イレギュラーということで
 ワタクシがお引き受けしますので
 今後、同様の案件が発生したときどうするか
 継続審議として、次回の会議にて
 見解を統一して頂けないでしょうか。」
 (提供者:さるるるる。)

■面倒は自分で引き受けておいて幕を下ろす。
 まるで荒れ狂う森の精霊に我が身を
 生け贄として差し出すがごとき献身ぶり。
 これはかなり説得力がある。
 しかも「イレギュラー」という言葉をはさんで
 「今回だけ特別に引き受けるんですよ
  いつもやると思わないでくださいね」という
 ニュアンスも巧みに忍び込ませる。

「いま思い出したんだけど、確か札幌支社で、
 似たような問題が以前起こったんじゃなかったっけ?
 札幌の辻幡部長なら対策をご存じかも。この土日に、
 電話かメールで尋ねてみるってのはどう?」
 (提供者:Dekedeke)

■もちろん辻幡部長がほんとうに
 対策を知っているかどうかは二の次である。
 その場にいない人に議論のカギを託すことにより、
 「ここで話しててもしゃあない」感をかもしだす。
 投稿者、かなりの手練れであろう。

「わかりました。
 まずはいったん、その方向で動いてみます。」
 (投稿者:あたま)

■これもオトナの選択である。
 「その方向」が見えていないから
 会議が長引いているのだ。
 それは全員がわかっているのだ。
 けれど、全員が納得する「方向」は
 このまま話していても決まらないということを
 出席者は口に出さずとも知っている。
 だからこそ、この意味を成さない提案に
 「どの方向で動くんだね!」とは突っ込まない。

「けっきょく、御殿場からの経過報告がない限り、
 いまここでドウノコウノできる問題じゃないんですよ。
 これでのんでもらうしかないんじゃないですか?
 わかってくれるでしょう赤坂も。
 中学生じゃないんだから。」
 (提供者:ひっきー)

■いやもう、ぶっちゃけ言いますけど、
 そういうことじゃないですか、ぶっちゃけ、
 といったぶっちゃけまとめコメント。
 こういったぶっちゃけトークが始まり出すと、
 場はみずからの重みに耐えかねて
 収縮していくのである。いわゆる、
 「会議の白色矮星化現象」とはこのことである。

「ほら、浜崎クンがそわそわし始めたことでもあるし」
 (提供者:YU-Zi)

■忍法、後輩イジリ。
 本人がそわそわしているかどうかは問題ではない。
 これで浜崎クンがわかってるやつだと、
 「してませんよぉ〜、やだなあ、
  高林さんこそ、これから夜の部でしょ?」
 となって、うだうだモードになる。
 そうなればもう白色矮星である。
 白色矮星がなんだかわからない人は
 職場の宇宙好きに訊いてみてほしい。

「ごめんなさい。私このあともう一本入ってて……。」
 (提供者:nat)

■ああ、これは説得力がある。
 金曜日のこの時間、こんなに煮詰まった会議のあとに、
 さらにもうひとつ打ち合わせがあるなんて。
 仕事ができると評判の女性社員がこう言おうもんなら
 「さ、とりあえずまとめましょう」となることうけあい。

「……雨、降ってきたみたいですよ。」
 (提供者:Tom)

■や、こういう手もありますねえ。
 煮詰まった場の意識をとりあえず会議室の外へ。
 おそらくこのセリフのあとは
 「今日に限って、傘持ってきてないんだよなあ」
 といった雑談へつながり、
 各自の頭のなかに家路を急ぐ自分の姿が浮かぶ。
 そうなれば場は終わりへと向かって当然である。

「……てな感じですかね。今日のところは。」
 (提供者:ぴろりん)

■わあ! これは何度も聞いたことがあるぞ!
 絶対聞いたことあるでしょ?
 自分でも言ったような気がするでしょ?

たくさんの投稿、ほんとうにありがとうございました。
いつもお世話になっております。
それでは次回の問題を発表しましょう。


  実践問題その3 

 あなたは、渡辺本部長に向かって
 なんらかのプレゼンをおこなっています。
 念入りに仕上げた企画だけあって、
 かなり先方の感触もいいようです。
 これはあと一押しだな、と思った瞬間、
 渡辺本部長はあなたに向かって言いました。
 「ところで、同じようなケースで、
  アメリカでは○○が起こって、
  先週大騒ぎになってたよな。
  あれは何が原因だったんだ?」
 それはまさにあなたの専門分野であるはずです。
 ところが、あなたはそれについて
 まったく知りません。
 さあ、渡辺本部長の信用を失わないように、
 うまくしゃべって切り抜けてください。

 

この実践問題の受付は終了いたしました。
 たくさんの投稿、ありがとうございました!


■■■ オトナの基本用語:その23 ■■■

九時五時
(提供者:ゆんぴょう)
■業務が午前9時に始まって午後5時に終わること。
 ひいては残業のない様。ときには、
 公務員やお役所そのものを指すこともある。
 「人生で一度くらい九時五時の会社で働いてみたいよ」

ブレイクスルー
(提供者:のんちゃん)
■現状を打破すること。
 マンネリ状態や膠着状態を突き破ること。
 「悪くないけど平凡だなあ。
  なんらかのブレイクスルーがないとな」

みょうにち
(提供者:HaNa)
■「明日」と書いて「みょうにち」。
 そういえば学生は使わない言葉である。
 大学生が「みょうにちは追試があるから」
 とは言わないし、
 女子高生が「みょうにち電話するねー」
 とも言わないわけであるが、
 オトナになるといともあっさり使うのである。
 「それでは、みょうにち朝イチに御社受付へ
  手前どものにんげんが参上いたしますので」

出ちゃってる
(提供者:いな)
■「外出しております」をフランクに表現。
 電話の応対などによく使われる言葉だ。
 「あー、笹島はちょっと出ちゃってますねえ」
 「午前中は出ちゃってたりするんで、
  できれば夕方のほうがありがたいです」
 「え、いまごろ修正ですか?!
  ちょっと待ってください……。
  ああ、たったいま出ちゃいましたね」

こういう時代
(提供者:メロンパンナちゃん)
■うまくいかないことは、なにもかも時代のせい。
 「まあ、しかたないですね、こういう時代ですから」
 しかしながら商魂たくましいあきんどは、
 こういう時代さえ味方につけてしまうとか。
 「ええ? 発注を倍にするのに
  単価が同じってことはないでしょうよ」
 「まあ、こういう時代ですからねえ」
 まわるまわるよ時代はまわる。

基本用語のほうも、これまでどおり募集します。
あてさきはpostman@1101.comです。
表題は「オトナ語基本」としてください。
「これはもう出てたっけ?」というものでも
気にせず自由に気軽にメールしてください!
ちなみにネタの説明文は
こちらで書き起こしておりますので、
適当に書いていただくだけでかまいません。


■■■ アシスタントよりご報告申し上げます。 ■■■

こんにちは、アシスタントです。
みなさまより多数寄せられた
パソコンに単語登録されているオトナ語を
ご紹介いたします。


●          ●
おせわに⇒お世話になっております。
     S株式会社企画3○○です。
よろしく⇒宜しくお願い申し上げます。
おいそが⇒お忙しいところ誠に恐縮ですが、
つゆの⇒梅雨の候、貴社におかれましては
    益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
(もうすぐ、盛夏⇒盛夏の候…に変わります。)
かぶ⇒株式会社
ゆう⇒有限会社
しゃだ⇒社団法人
ざいだ⇒財団法人
そうたい⇒本日、通院のため、:0に早退させて頂きます。
ちこく⇒本日、体調不良のため、:0出社させて頂きます。
(提供者:Noriko)


●          ●
わたしも、オトナ語変換やってます。

おせ   → お世話様です。
しりょう → 資料添付致しますので、
よろ   → 宜しくお願いします。

はじめは、
おせ → お世話様です。資料添付致しますので
     宜しくお願いします。

と登録してましたが、
改行を入れるために三つに分解しました。
「おせ しりょう よろ」
これだけで、事足りるメールがほとんどなので、
なかなか便利です。
(提供者:えみりー)


●          ●
会社の小職のPCには
下記のような単語を登録しております。

いつも」→「いつもお世話になっております。」
」→「宜しくお願い致します。」
おてか」→「お手数をお掛けして恐縮ですが」
たけ」→「タイトルの件、」
おく」→「教えて下さい。」

ポイントは、実際にありそうな
日本語の単語にならない組み合わせにすること。
たとえば
「ほぼ日刊イトイ新聞」の場合でしたら、
「ほぼ」とせずに「ほに」で登録。
変換時に不必要な候補が出てきて
いらいらせずに済みます。
(提供者:さ)


●          ●
入力:よろしく
変換:よろしくお願い致します。
入力:ありがとう
変換:ありがとうございました。ありがとうございます。
入力:こんにちは
変換:こんにちは。(所属先)の(名前)です。
入力:とりいそぎ
変換:取り急ぎ、用件のみで失礼致します。
入力:おてすう
変換:お手数をおかけてして大変恐縮ですが,
   よろしくお願い致します。
(提供者:ちろ)


●          ●
おせおせ
 平素より大変お世話になっております。
おくおく
 ご連絡が遅れておりますことを深くお詫びいたします。
ごめごめ
 まことに申し訳ございません。
かくに :
 お問合せの事項に関しまして、確認をいたしております。
ありあり
 ご連絡ありがとうございました。
いそいそ
 取り急ぎ要件のみにて失礼いたします。
よろよろ
 今後ともよろしくお願いいたします。

ポイントは「普段の変換で表示されないよう、
普通使わない言葉として、
さらに打ちやすい言葉として辞書登録を行う」
という点にございます。
ただ、「かくに」については
稀に宴会の打ち合わせメールなどで
「豚のお問合せの事項に関しまして、
確認をいたしております。のあるとこ。絶対マスト。」
とかいてしまうケースが発生いたしますため
注意が必要です。率直に申しまして、
この辞書登録語だけでメールを書くことも
しばしばございます。

取り急ぎ要件のみにて失礼いたします。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
(提供者:Junko)


●          ●
僕は、下記を登録し、とても重宝しています。

よろも>よろしくお願い申し上げます。
よろい>よろしくお願い致します。
よろし>よろしくお願いします。

また、

ありで3通り>ありがとうございました。
      >ありがとうございます。
      >ありがとう。

も登録してあります。
(提供者:HiroRB)


●          ●
変換で出てくる単語ではないですが、
私のメーラで新規メールウインドウを開くと、
自動的に署名が入りますが、
以下のように表示されます。
-------------------------------------
おつかれさまです。

よろしくお願い致します。
***********************
阿呆山馬鹿男
株式会社●●●●●
?????部■■■■■課
aho@baka.co.jp
tel:03-****-****
fax:03-****-****
***********************
営業の窓口をしている関係上、社内メールが多いので、
文頭の挨拶は「おつかれさまです。」です。
その下に本文を書いております。
たまにクライアントに直接メールを書く時に、
「いつも大変お世話になっております。」
に差替えるのですが、誤って社外の方に
「おつかれさまです。」のまま出してしまったこともあり、
諸刃の剣であります。
(提供者:フジヲ)


●          ●
わたしのパソコンでは
ごめん」と入力すると
「申し訳ございません。」と変換されます。
文章上ではすごく申し訳なさそうに誤っていても
入力の時の語感は大変フレンドリーになります。
(提供者:あき)


●          ●
私のATOKは「よろしく」と打つと
「よろしくお願いします」「よろしくお願いいたします」
「お忙しいところ大変恐縮ですが、
 なにとぞよろしくお願い申し上げます」と
3段階の強度でお願いできる仕様になっております。
(提供者:走出去。)


●          ●
以前勤めていた会社のパソコン
(事務員の女の子皆で使う共用のヤツ)では、
はげ」と入力すると「丸田部長」
じじい」と入力すると「橋本常務」と
自動的に変換されるようになっていて、
OL達は皆しれっとした顔で使ってました。
めったにパソコンなんか触らない上司の1人が
「○○は現在のところ……」という文章を
入力しようとして「○○丸田部長んざいのところ……」
となってしまったときは、ごまかすのが大変でしたが。
(提供者:MAKI)

本日はこのあたりで失礼させていただきます。
また何か興味深いメールがありましたら
特集させていただきます。それでは。


※次回更新予定日は7月23日水曜日です。
 月曜日は祝日のため、
 弊社はお休みをちょうだいいたします。


オフィスからのふつうのおたより、
当コーナーへのふつうの感想なども
お待ちしております!
あてさきはpostman@1101.comです。
こちらのほうの表題は
ふつうに「オトナ語」でけっこうです。
みなさまからのメールが
新たなテーマをつくるのです!

2003-07-18-FRI

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