インド滞在最終日です。
朝日が昇るガンジス川に行くため
まだ暗いうちに出発します。
昨日の喧噪から比べると、
当然、人間の数は少なめになっております。

「夜はすいてるね」

番長、朝です、朝。
夜明けにしてはずいぶん街は起きていますが、
昨日に比べれば、
悠然と車は走ります。

ジャスミートさんの案内で、
バラーナシでいちばん流行っている
老舗のチャイ屋さんに立ち寄ります。
このお店は、夜明け前に
閉店してしまうほどの人気だそうですよ。

「ああ、うめぇ。
 おいしいよ」



完全には起きていない頭に、
チャイのあまさがしみてきますね。
エンジンが、かかって‥‥

「ごめんチャイ。
 チャイナタウン。
 チャイくだチャイ。
 おチャイ計をお願いします。
 ああ、おいチャイ(おいしい)!」

(す、すごい連発技)
ええっと、最後のは、
ちょっとわかりづらかったかと。

「無理を承知で言ってみました」


さて、夜明け前のガンジス川に到着しました。
番長も自分を記念撮影です。

かわいい花売りさんがやってきましたので、
5ルピーで買います。
この、お花がのせられたお皿の
ろうそくに火を灯して川に流すのです。
日本の灯籠流しと同じような感じだそうです。




ジャスミートさんによると、
我々は何か、願いごとをするといいそうですよ。
願いごとと言えば、あれですね、
やっぱりオリコン1位ですか、番長。

「ま、誰にも言わないけ‥‥
 誰だ、言っちゃうのは! ダメだ言っちゃ!
 内緒、シー!!」



日が昇るころを見計らって
我々は、船に乗り、
夜明けのガンジス川に漕ぎ出します。
1日2百体を超える死者の灰と
灰にならなかった死者の眠る茶色い布袋が
ボートの横をたくさん流れていきます。



「死がとても近くにある。それが、
 ここにいるとあたりまえに思えるけど、
 死が隠れてないって、
 すばらしいことだと思う。
 
 人間も含んだ自然と、神がいて、
 みんなが一体となってます。
 インドはそれがそのまま
 街にもなっていったのが、かっこいいよね」

さぁ、番長、願いを込めて
灯火を川に放ちましょう。

「よし!」





ガンジス川に漕ぎ出したようすを
動画でぜひごらんください。


 
「ところでちょっとだけ、
 雰囲気が、“ゆく年くる年”みたいに思えない?」





そうですね、
年末、昨日の紅白みたいな喧騒のあとの静寂、
人びとの信仰、夜明け、BGMなし、と
たくさんの項目が共通しているからでしょうか。
あ、洗濯してる人もいますね。

「修業しているお坊さんもいるよ」



あれは何でしょう?

「シヴァ神?」

シヴァ神は、踊りの神さまともいわれるそうですので、
そうかもしれません。
えー、PAが悪いのか、音楽が
もんのすごい、がまんできないような
ハウリングですが、
ぜんぜん気にしないですね。

ああ、朝日がのぼってきました。
水面に、オレンジが映って
とてもきれいですよ‥‥番長、番長?
大好きなサンライズですよ、
なにしてんですか。

「朝日を撮ろうとしたら、
 カメラのメモリカードが
 いっぱいになっちゃってて、
 いま、消してんの。
 どれを消しゃいいのか!
 迷っちゃってさ」

日の出、終わっちゃいますよ?

「ああ、どれもこれも、写真、いい!
 焦る焦る、あ"ーー」

ま、いいですよ、カメラは。

「そうだな!
 こういう朝日や夕日のシーンって、
 のちのちになっても、そこだけは
 ずわぁーっと、憶えてたりすんだよなぁ」

旅のほとんどを忘れたときも、
地上のどこからでも見える、
太陽を見ていたときだけは。

「よ、オレンジ色の憎い奴。
 黒点は、見えないな」

黒点チェックですか‥‥。

さて、ボートを降りまして、
番長の大好きな
火葬場裏の、バラーナシの路地を通って、
ホテルへ、そして日本へ帰ります。

路地には、小さなお寺があちこちにあったり、
マイペースな牛が通ったり、
おばあさんがひとりで住む
ちいさなちいさな家があったり。
ここにあるどれもこれもが美術品のようで
すごく美しいのです。







祈りの歌声が、どこかから
ずっと聞こえています。
なにもかもがまじり合っているのに、
お互いの持ちあじをなくすことはありません。

「だーから! 
 インドの食べものは
 カレーなんだね」

さて、明日はインド編の最終回。
ラストの前のラストです。
(真の最終回は大晦日です)
おたのしみに!

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